パナソニックは、兵庫県神戸市のパナソニック コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部神戸工場を、報道関係者に公開した。
神戸工場は、基板実装から組み立てまでの一貫生産を行うPCの生産拠点で「レッツノート」および「タフブック」の一部生産を行っている。同時に、スマート工場として進化を遂げており、同社が掲げる「現場プロセスイノベーション」を実践する工場にも位置づけられている。
パナソニック コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部神戸工場工場長の清水実氏は、「神戸工場は、1990年6月にワープロ工場としてスタート。1991年8月からPCの生産を開始している。開発、営業、サービス部門がある大阪・守口とは車で約1時間の距離にあり、開発/営業部門とも緊密な連携を取った生産体制を維持している」と説明。「PCの約9割は、中国などで生産されているが、パナソニックは、ジャパンクオリティでの生産を行っているのが特徴である。自社での一貫生産、お客様ダイレクトを実現している」とした。
また、神戸工場では「柔軟・迅速」、「高品質」、「カスタマイズ・サービス」、「体験型ショールーム」という4つの特徴を持つとする。
「柔軟・迅速」では、日々の注文をもとにして、毎日、生産計画を見直すとともに、ワンフロアオペレーションにより、基板実装から完成までの一気通貫でのモノづくりを行っていることを強調。「実装工程は自動化による24時間稼働体制とし、組立工程では、匠の技を持った人材による多品種変量に対応した生産体制を実現している。昨今では、ロボットの導入による省人化を図っている」とする。
特に、実装工程における双腕ロボットや多間接ロボットの導入によって、作業を行うオペレーターの人数は半減。それでいながら、10%の生産性向上を実現しているという。
「高品質」では、レッツノートやタフブックが、過酷なモバイル環境において、ツールとして利用されることが多いため、各種耐久試験により、耐久性、信頼性を保証しているとし、10m電波暗室のほか、防水試験機、落下試験機、熱衝撃試験機などの信頼性評価設備、X線CT撮影装置やSEM/EDS・断面研磨装置などの分析装置を工場内に配置していることを示した。
「カスタマイズ・サービス」では、ハードウェアおよびソフトウェアを組み合わせた一品一様でのカタスイズを可能にしているほか、顧客一人ひとりの環境を設定して出荷する個別設定を実現。さらに、特定法人やウェブ販売に対応したコールセンターを工場内に設置したり、工場におけるダイレクト修理を実現していることにも言及。「顧客の声をもとに得られた品質情報は、フィードバックし、量産工程では次の1台から対応、開発および設計では次の新製品には必ずフィードバックをする」とした。
「体験型ショールーム」としては、神戸工場を尖った技術や先進的な活用事例を紹介する場としているほか、家族とともにモノづくりを体験できる「レッツノート工房」や、大学生がモノづくりを体験できる「PCカレッジ」などを通じて、モノづくりに触れることで、レッツノートなどのファンを増やす場としても活用していることを示した。同社によると、2018年度には、2148人が神戸工場に来場。さらに、ソリューションセンター化を目指す姿勢を明らかにし、「神戸工場を、スマートファクトリーによるショーケース化するとともに、ゼテスとの連携、現場プロセスイノベーションを体感できる工場へ進化させる」と述べた。
今回の神戸工場の公開においては、スマートファクトリー化への取り組みについて紹介したことが、新たなトピックスとなった。
パナソニックの清水工場長は、「神戸工場では、納期短縮、一品一様のモノづくり、人の経験に頼らない高品質モノづくり、トーサビリティおよび予兆管理の進化といった点に取り組んでいる」とし、一品一様のモノづくりでは、実装工程において、これまでの単機能のロボットではなく、自律型の汎用ロボットを活用することで、切り替えや複数工程に適し、多品種変量生産にも対応できるようになったほか、組立工程では、人とロボットが協働作業を行える環境も構築したという。
人の経験に頼らないモノづくりでは、実装工程ではオペレータの経験などに依存していた切り替え作業や調整作業を、自動切り替えによる省人化、カメラおよびセンサーを活用したフィードバックおよびフィードフォワードによる自動調整を実現。
組立工程では、作業者をカメラでモニタリングして、作業ミスを防止する仕組、装置である「ポカヨケ」を行うことができるようになった。「実装工程では、機械同士が連携するM2M(Machine to Machine)によって、微調整を行うことができる。
パナソニックは、実装機ではナンバーワンのシェアを持っている。生産技術本部とともにロボットの研究を行うといったことも進めている。また、組立工程では、たまにしか生産しない「久しぶり生産」の機種などにおいて、作業をカメラで監視して、間違いのない作業が行えるようにしている。スマート実装やセンシング技術によって、人依存からの脱却を目指す」とした。
神戸工場では、ゼテスの入出庫効率化ソリューションも導入している。実装工程で使用される電子部品は、リール形状で納品されており、それぞれのリールに4~9つのバーコードが添付されている。神戸工場では、トレース精度をあげるために、すべてのハーコードの読みとっていた。だが、ひとつのリールの読みとりにかかる時間は約18秒であり、ひとつひとつのバーコードをバーコードリーダーによって、手作業で読みとっていた。しかも、バーコードの種類や数は、サプライヤーや部品によって異なっていた。
これをゼテスの「Zetes Medea」の採用により、カメラでバーコードを一括で読みとり、一括で検品。作業を効率化するとともに、エラー発生率を軽減させ、人的リソースの最適化につなげることができたという。
さらに、同社では、配送の見える化にも着手。Zetes Chronosにより、完成したPCを店舗に配送している状況を把握できるようにし、コールセンターを開設して、配送に関わるサービス品質を高める考えだ。
ゼテスのビジネス面での成果については、「買収から2年を経過し、いよいよ国内では、部品物流会社2社において導入実績が生まれるなど、パソナニックとのシナジーが出始めた。海外でもパナソニックの商材を活用した実績が今年度中に生まれるこにとなる」(パナソニック モバイルソリューションズ事業部SCM事業推進部課長の計盛大氏)とした。
一方、パナソニック コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部 事業開発部部長の鈴木宏記氏は、「モバイルワーカーの業務革新に貢献することが、モバイルソリューションズ事業部の事業ミッションである。コアプロダクツにソフトウェアやサービスといったソリューションを組み合わせることで、パナソニックが、お客様にとってかけがえのないパートナーとなることを目指す」とし、働き方支援サービス「しごとコンパス」や、子会社化したゼテスによる「配送見える化ソリューション」などを提供。「今後も、現場の業務を改善する事業を強化していきたい」とした。
パナソニックの子会社であるパナソニックシステムソリューションズでは、PCオフィスワークトータルサービス「スリムワークサポート」を、10月から出荷することを発表しており、スリムワークサポートで提供する「あんどコネクト」では、バッテリーのパフォーマンスを維持するサービスとなる「パッテリーライフサイクルNAVI」、電源オフでも遠隔データ消去ができる「TRUST DELETE Biz パナソニック版」で構成。「安心のサポートを工場発で実現することができる」(パナソニック清水所長)と述べた。
一方で、パナソニック コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部 東アジア営業統括の向坂紀彦氏は、「パナソニックのモバイルPC事業は、レッツノートを中心とした国内と、タフブックを中心とした海外とが半々ずつであり、いずれも成長を遂げている。また、東京オリンピックの公式PCとして、オリンピックを支えるレッツノートというメッセージを通じて、販売拡大に努めたい」などとした。
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