スマートフォン戦争はしばらく前に終結し、「Android」と「iOS」が勝ち残った。他のライバルはとうの昔に白旗をあげ、今、Microsoftがゆっくりと「Windows Phone」に最後の幕を下ろそうとしている。
そこに後悔の念がないわけではない。事実、Microsoftの共同創設者であるBill Gates氏は先頃、Androidのようなモバイルプラットフォームを生み出せなかったことを、最大級の過ちだったと認めている。
「過去最大の過ちは、私が関与した何らかの経営ミスによって、Microsoftが現在のAndroid、つまり、Appleを除くスマートフォンの標準プラットフォームになれなかったことだ。それはMicrosoftが勝ち得て当然の地位だった」。米国のベンチャーキャピタル企業が先日開催したイベントで、Gates氏はこう語っている。
そうなると、関連して2つの疑問が出てくる。まずは、膨大な資金と優秀な人材を抱えるMicrosoftが、Androidのようなものを生み出せなかったのはなぜかという疑問だ。そして、仮にそれが実現していたとしたら、現在のテクノロジー業界はどうなっているだろうか、という問いである。
Microsoftがスマートフォン市場への参入を望まなかったわけではない。AndroidとiOSが登場するずっと以前から、別の形の携帯型デバイスに取り組んでいた(当時は「PDA」と呼んでいた)。
だが、「iPhone」とiOSが、続いてAndroidが現れると、Microsoftは初手からつまずき、挽回しようと何年も苦闘したあげく、Nokiaのスマートフォン事業を買収して巻き返しを図るもむなしい結果に終わり、ついには断念することになった。
そしてもちろん、MicrosoftがAndroidのようなプラットフォームを、それどころかiOSのようなOSさえ作り出さなかった、というより作れなかった理由はたくさんある。
筆者から見ると、問題のかなりの部分はMicrosoftの姿勢にある。あまりにも長い間、スマートフォンを標準的なデスクトップの小型版くらいにしか考えなかったのだ(かつては「Pocket PC」というブランドまであった)。
MicrosoftがほとんどPC専業だったことを考えれば、無理もないだろう。だが、タッチ操作をベースにした全く新しいユーザーインターフェースと、アプリケーションの新しい使い方(あの小さな「アプリ」群のことだ)という発想が、Microsoftにとっては常に難題であり続けた。それでも、iPhoneのアプリは最初に登場した時点で500しかなかったのに対して、Microsoftの「Windows Mobile」には既に1万8000ものアプリがあったのだ。真のブレークスルーは、iOSやAndroidに組み込まれ、ダウンロードを大幅に簡単にしたアプリストアの存在だった。
もうひとつ、MicrosoftがAndroidを作り出せなかった大きい理由は、Androidがオープンソースの製品だった(今でも、ある程度はそうである)ことにある。Microsoftがオープンソースをまだまだ警戒している時代にあって、Android端末メーカー各社はオープンという性質をうまく取り込んで手を加え、各社独自の使い方を展開できたのだ。
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