多くの欧米諸国のユーザーが普通のこととみなしているオンライン上の自由は、当たり前のことと思いがちだ。だが、中東および北アフリカ(MENA)などのほかの地域では、オンライン上での活動が大きな問題になることもある。
中東諸国の政府は、インターネットとモバイルネットワークをブロックすることに抵抗感がないことが多い。そのような行動は、2011年のアラブの春の際にエジプトで顕著に見られたし、トルコでも定期的に発生している。イランやイエメンなどの国では、通信ネットワークは潜在的な戦場とみなされてきた。
ネットワークの大規模なインフラをブロックすることと並んで、YouTubeやそのほかのソーシャルネットワークといった特定のサービスもブロックの対象になることがある。こうしたサービスがブロックの対象になるのは、抗議活動や政変が発生したときだけではない。2016年夏、アルジェリアでは、学生が試験で不正行為をするのを防ぐため、複数のソーシャルネットワークとメッセージングサービスが一時的に閉鎖された。
さらに範囲を広げると、多くの中東諸国ではこれまでVoIPサービスやメッセンジャーアプリの運営展開に問題が生じており、そのサービスの多くは一時的または恒久的に禁止されている。
さらに、この地域の住民は、オンライン上も含めて自分の言動に気をつける必要があると感じることが多い。2015年、Facebookで不満を述べたことが原因で、米国人男性がアラブ首長国連邦(UAE)の刑務所に収監された。その2年後には、別の男性が「WhatsApp」で妻を侮辱したとして、UAEから追放された。
ドバイに拠点を置くウェブサイト「StepFeed」の編集長を務めるLeyal Khalife氏は、「アラブ首長国連邦におけるサイバー犯罪の法律は非常に厳格だ」と述べている。MENA地域のほかの国々にも、同様の見解が当てはまる。
サイバー犯罪などのこうした問題の多くに対する中東の考え方は、世界のほかの地域とは根本的に異なる場合がある、ということを覚えておくべきだ。
多くの中東諸国では、ポルノなどの「ハラーム(イスラム法において禁止されている行為)」に抵触するコンテンツ、ギャンブルやアルコールを宣伝するサイトへのアクセスがインターネットサービスプロバイダーによってブロックされている。2012年の調査では、この地域のインターネットユーザーは、ほかの地域のユーザーよりも、政府がこの種のオンラインコンテンツをブロックすることを支持する傾向が強いという結果が見られた。
ノースウェスタン大学カタール校による先頃の調査でも、中東では「国民の約半数が、政治的コンテンツや文化的にデリケートなコンテンツ、およびコスト(インターネットを手頃な料金で利用できる環境を維持すること)に関して、インターネット規制の厳格化を支持している」ことが明らかになった。
2019年2月に発表された同大学の最新の調査によると、「各国のアラブ国民の大多数(チュニジアを除いて約4分の3以上のアラブ国民)はアラブ地域のエンターテインメントメディアに関して、暴力的なコンテンツと恋愛要素のあるコンテンツの両方の規制を強化すべきだと考えており、少数派とはいえ相当数のチュニジア人(10人中4人)もそれと同じ考えだ」という。
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