こうした意識の背景には、湾岸地域の国々を含む各国が、従来の言論の自由を制限してきた歴史がある。英国王立国際問題研究所のJoyce Hakmeh氏が2018年に発表した論文によると、これらの国々は「近頃、オンラインでの言論に関しても同じことをやろうとしている」という。
「湾岸協力理事会(GCC)諸国は自国のサイバー犯罪法を通して、ソーシャルメディアをより強固に掌握し、ほかのアラブ諸国の政情不安がオンラインプラットフォーム経由で自国に流入する可能性を封じようとしている」(Hakmeh氏)
ほかの国々もそれに追随している。パレスチナ自治政府は、新しいサイバー犯罪法が制定される1カ月前の2017年6月、複数のニュースウェブサイトをブロックした。
一方、エジプトでは、5000人以上のフォロワーを持つソーシャルメディアアカウントが「メディア」として分類され、規制当局の監視対象となる法律が2018年に制定された。Arab Newsは、「この新法の下で、大勢のフォロワーを持つソーシャルメディアユーザーは、偽ニュースを拡散した、または犯罪を扇動したとして起訴される可能性がある」と説明している。
「この法律では、最初にSupreme Council for the Administration of the Media(メディア管理最高評議会)から許可を得ずにウェブサイトを開設することも禁止している。この評議会は、政府機関であり、国家の厳格な法律に違反するウェブサイトを合法的に一時停止またはブロックする権限、また編集者らに多額の罰金を科す権限を有する」(同紙)
国境なき記者団(情報の自由と報道の自由の擁護を目的とする国際的非政府組織)は、2018年の世界報道自由度ランキングで「またしても」同地域の国々を低く評価している。
「ジャーナリストにとって特に敵対的なこの環境において、インターネットは、情報を提供する相対的自由がまだ存在する唯一の空間だ。だが、同地域の政府はこのことに気づいており、各国が次から次へとオンラインジャーナリストや市民ジャーナリストの口を封じるサイバー犯罪法を採用している」(国境なき記者団)
オンラインの規制や法律に違反する可能性があるのは、ジャーナリストやメディア企業だけではない。個人も自分のインターネット上の利用記録が監視や規制の対象となる場合がある。
エジプト当局は2018年9月、人権活動家のAmal Fathy氏が「偽ニュースを拡散した」として、2年の執行猶予付き判決を下し、1万エジプトポンド(約6万5000円)の罰金を科した。
BBCによると、Fathy氏は「Facebookに投稿した12分間の動画で、銀行を訪れたときに性的嫌がらせを受けたことを訴え」、エジプト政府が女性を守るために十分な対策を講じていないと批判したため、2018年5月に逮捕されたという。
2017年には、アブダビの当局が、ソーシャルメディアチャネルを通じてUAEを中傷したとして告発されたUAE人を拘留した。2018年には、購入したばかりの自動車がその日に故障したことを受けて、怒りに満ちたWhatsAppメッセージを自動車ディーラーに送信した英国人男性が逮捕され、後に国外に追放されている。
このような制限がある中で、普通のネット市民たちは法律に違反しないために、どのような対策を講じればよいのだろうか。
鍵となる問題のひとつは、オンラインで言えることと言えないことに対する人々の考え方も、国によって大きく異なるということだ。
英国王立国際問題研究所のJoyce Hakmeh氏が説明しているように、「バーレーンを除くすべてのGCC諸国が自国のサイバー犯罪法の一環として、幅広いコンテンツを犯罪とみなす条項を導入しており、曖昧な文言の条項を使って、混乱やその条項を乱用する可能性を生み出している」ことも考慮する必要がある。
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