マイクロソフトが力を注ぐ「デジタル教育」--子どもが“社会”で才能を発揮できる教育を

 日本マイクロソフトは6月13日、文教市場に関する進捗とグローバルのデジタル教育に関するプレスラウンドテーブルを開催した。

 Microsoft VP for Worldwide Educationのアンソニー・サルシト氏は、第4次産業革命を迎えた現状について、「デジタル環境といわれているが、産業界は雇用者に求める基準が変化している。創造性やリーダーシップといった人間らしいスキルが重視されてきた。(企業間の)エコシステムも今後数十年続いていくだろう。そのような教育を施さなければならない」と、デジタル教育に対する姿勢を明確にした。

Microsoft VP for Worldwide Education, Anthony Salcito(アンソニー・サルシト)氏
Microsoft VP for Worldwide Educationのアンソニー・サルシト氏

 ITからもっとも遠い業種にもデジタル化の波は訪れている。DX(デジタルトランスフォーメーション)というキーワードが登場して数年経つが、大企業におけるDXは一巡し、現在は中堅中小企業のDX化に各IT企業も注視し、次々と施策を講じているのが現状だ。そうした流れがある中で、MicrosoftはDX実現企業を構成する従業員に、いずれなるであろう学生に対するアプローチを長年続けている。

 筆者が日本マイクロソフトを取材する上でSTEM教育(数学・テクノロジー・エンジニアリング・理科)のキーワードが登場したのは、2015年11月開催のEducation Dayまでさかのぼるが、米国国立アカデミーが懸念を表明したのが2006年、米国政府が予算化したのが2012年なので、筆者が知る以前から取り組んできたのだろう。Microsoftは「子どもたちが自信を持って才能を社会課題の解決に役立てる」(サルシト氏)ため、デジタル教育に注力していると説明する。

 他方で世界各国の学生がデジタル教育を学ぶ姿勢について、「教育内容や評価方法、学習の意義、卒業後のスキル活用が明確になっていない場合がある。自分の学ぶ内容と未来がマッチしなければならない」(サルシト氏)と指摘し、一例としてフィンランドの取り組みを紹介した。同国は過去に「フィンランド・メソッド」のキーワードで一役有名になったが、Microsoftは「他国と異なり、子どもたちの幸福に焦点を当てている。我々も対人関係能力を調査したが、分かったのは子どもたちの幸福度が良い結果に結びつき、コラボレーションが必要な経済社会の構築に寄与している。つまり、学習面で社会性や感情の育成が重要。その上で企業の成功につながる」(サルシト氏)と調査結果をつまびらかにした。

 他方で教育に欠かせない教師側についても、「デジタルテクノロジーで教師の役割が削減されるという誤解がある。教育者の役割は重要で、雇用喪失といったグローバルの変化に見合う教育が必要だ。教育者の役割が変わりつつあることを認識してほしい」(サルシト氏)と指摘する。さらに「各省庁や地方自治体のリーダーに科された責務も重要だ。彼らがマインドセットを起こさなければ、学生のマインドセット変革に至らない」(同氏)と合わせて指し示した。

 もちろん、Microsoftが示した世界は想見できるものの、理想的であるという意見を持つ方も少なくないだろう。だが、その違和感を一掃するコメントを紹介したい。サルシト氏は世界各国のデジタル教育推進に向けて活動を続けているが、「健全な教育システムがある国は、教師は尊敬される職業。(フィンランドのように)変革に成功している」という。

 振り返ると、日本の教育現場サルシト氏の指摘にそぐわない。"詰め込み教育"の反動として生まれた"ゆとり教育"、それでも受験が中心に存在する現状はご承知のとおり。本件について、とある記者からの「子どもたちの幸せと受験教育はギャップが生じている」との指摘に、日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏は、「受験システムは教師が素晴らしい授業をしていることに焦点を当てにくくしている。学生の能力を引き出す教育が重要」と回答した。

日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長 中井陽子氏
日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長 中井陽子氏

 Microsoftは、幼稚園の年長から高等学校を卒業するまでの13年間の教育期間を対象にした「K12 Education Transformation Framework」、大学生を対象にした「Microsoft Higher Education Transformation Framework」を用意し、「紙ベースを含めて包括的な、教室内での学びや運用、リソース、データを効率良く提供する枠組み」(サルシト氏)を提供してきた。

 そのほかにも、プログラミングの概念を遊びながら学ぶ「Hour of Code」をはじめとする多くのソリューションを用意する。その理由として同社は「学生が無限の可能性を持っていると感じることに意義がある。我々は成功を収める学生を支援しなければならない」(サルシト氏)と持論を述べた。

Microsoftが提供する教育向けソリューションの一部
Microsoftが提供する教育向けソリューションの一部

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