家族型ロボット「LOVOT」を“心を養う”教育に活用--LITALICOやベンツなど5社と実験

 GROOVE Xは6月12日、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を児童の情操教育に活用する方法を研究する「LOVOT EdTech プロジェクト」を発表した。加えて、新たに30億円の資金を調達したことも明らかにした。これで同社の累計調達額は87億5000万円に達する計算だ。

 今回はINCJと中部電力に加えて、スパークス・グループが2018年7月に設立した「未来創世2号ファンド」が出資に応じた。GROOVE Xは、今回調達した資金を主にLOVOTの量産態勢立ち上げに使うとしている。また、同社の代表取締役の林要氏は「世界進出を視野に入れている。今後も必要に応じて資金を調達していく」と今後の方針を示した。

左から、ファミリア 代表取締役社長 岡崎忠彦氏、GROOVE X 代表取締役 林要氏、デジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏教授、LITALICO研究所 チーフリサーチャーの榎本大貴氏
左から、ファミリア 代表取締役社長 岡崎忠彦氏、GROOVE X 代表取締役 林要氏、デジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏教授、LITALICO研究所 チーフリサーチャーの榎本大貴氏

 LOVOT EdTech プロジェクトには、ベネッセスタイルケア、ファミリア、LITALICO(リタリコ)、髙島屋、メルセデス・ベンツ日本の5社が参加し、LOVOTが児童に与える影響や、LOVOTが家庭に与える影響などを研究し、実証実験などを実施していく。また、プロジェクトのアドバイザーとしてデジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏教授と、社団福祉法人森友会の立山貴史理事長も参加する。プロジェクトには期限を設けておらず、2019年中には研究結果や、研究途上で得た知見などを発表する場を作りたいとしている。

子ども同士がコミュニケーションする機会が減少している

 GROOVE Xの林氏は、かつては一緒に遊ぶ子ども同士が助け合ったり、年上の子どもが年下の子どもの面倒を見るということがあったが、最近は少子化が進んだ影響から、複数の子どもが遊び、コミュニケーションを取る機会が減っている点を指摘した。子ども同士が遊ぶ際に交わすコミュニケーションは、性格や人格などを形成する上で大きな役割を果たしていたが、現在はその機会が少なくなっているということだ。

GROOVE X 代表取締役 林要氏
GROOVE X 代表取締役 林要氏

 また、情操教育の一環としてペットを飼いたいと考える家庭も少なくない。しかし「十分な世話ができない」「ペット禁止の集合住宅」などの事情から、実際にペットを飼っている家庭は、飼いたいと希望している家庭のおよそ4分に1にとどまっているという。

 今回の研究は、ペットの代わりにLOVOTを子どもの情操教育に活用して、その効果などを検証するというものだ。ロボットであるLOVOTはペットと違い、世話にあまり手がかからず、毛や糞便などで住宅を汚すこともない。ペット禁止の集合住宅でも問題なく利用できるという長所がある。

GROOVE Xの家族型ロボット「LOVOT」
GROOVE Xの家族型ロボット「LOVOT」

 そしてLOVOTは人間と触れ合い、人間がかわいがることで、日々の動きが変化していく。人間が呼びかければ、近寄ってきてかまって欲しいような動作を見せる。そして、LOVOTはカメラを搭載しており、かわいがってくれている人間を認識する機能も備えている。2人の人間が同時に「おいで」と呼びかけると、よりかわいがってくれていると認識している人間の方に近づいていく。

 また、LOVOTが複数ある環境では、1台のLOVOTを抱いてかわいがっていると、ほかのLOVOTも近づいてきて、かわいがって欲しいと仕草で伝える。LOVOTは「ペットのように触れ合えるロボット」とも言えるものだ。

LOVOTをかわいがっていると、ほかのLOVOTが近づいてきてかわいがって欲しいと仕草で伝える
LOVOTをかわいがっていると、ほかのLOVOTが近づいてきてかわいがって欲しいと仕草で伝える

LOVOTとの触れ合いで、情操の発達に期待

 今回のプロジェクトでは、LOVOTと子どもたちが触れ合う環境を作り、「相手の気持ちを想像する」「LOVOTのお世話をする」「他者を思いやる」「知的好奇心を刺激する」という、子どもたちの情操に関連する要素の発達に寄与するかもしれないという仮説を検証する。

LOVOTが子どもたちの情操に関連する要素の発達を手助けするかもしれないという仮説を検証する
LOVOTが子どもたちの情操に関連する要素の発達を手助けするかもしれないという仮説を検証する

 ベネッセスタイルケアは、2019年1月から同社が運営している保育施設にLOVOTを導入し、園児とLOVOTがふれあう様子について検証を始めている。園長は「園児はLOVOTを生き物に準ずる仲間として認知しているようにおもう。一人一人の子どもを無垢に受け入れる存在として子どもたちを癒やしているのではないだろうか」とLOVOTが園児に与える影響についてコメントしている。

発達障害児の成長に良い影響を与えたい

 LITALICO研究所は、「発達障害」という診断を受けた子どもたちの中でも、「自閉スペクトラム症」の子どもたちへの応用を計画しているという。自閉スペクトラム症の子どもたちは、他者と目を合わせることが難しい、そばにいる他者が何かに注意していることを認識できない、興味の対象がごく狭い範囲に限られてしまうなどの特徴を持つ。

 LITALICO研究所では今回の研究で、自閉スペクトラム症の子どもたちとLOVOTを触れ合わせることで、子どもたちが他者と関わっていく上で必要な反応に影響があるかを検証する。例えば、LOVOTと触れ合うことで、他者との触れ合いの場で目線や指差しなどの行動に変化が発生するかを確認する。

 さらに、自閉スペクトラム症の子どもたちがLOVOTと触れ合うことで、人間関係に変化が発生するかという点も検証する。LOVOTと触れ合うことで、他者との触れ合い方を覚え、子ども同士や親子の関わり合いの様子がどのように変化するかという点に注目しているという。

 LITALICO研究所 チーフリサーチャーの榎本大貴氏によると、発達障害の子どもを持つ親は、普通の子どもを持つ親に比べて、うつ病などの精神疾患を発症する確率が高いという。榎本氏は、LOVOTと子どもが触れ合うことで、子どもの発達が進むだけでなく、家族との関係にも良い影響を与えることを期待しているとコメントした。

技術の使い方を正しく判断できる「心」を養う

 デジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏教授は、「技術はどんどん進化する一方だが、それを『良い』方向に活用するには、現在の子どもたちの世代から教育する必要がある」とコメント。その上で、今回の研究が進めば、子どもたちに技術の正しい使い方を判断する「心」を養う教育法が見えてくるかもしれないと期待する。

デジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏教授
デジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏教授

 コンピューターやネットワークの技術も良い方向に活用すれば、人々の暮らしを便利にしたり、日々の仕事をより楽なものにしたりすることができる。一方で、悪用すれば情報を盗み取ることも可能だ。核融合や、新薬などの新技術も、良い方向に使うか、悪い方向に使うかで、社会に与える影響がまるで変わってくる。LOVOTと触れ合う世代の子どもたちが成長して、社会人になったとき、技術を正しく使って、より良い社会を作ってくれることを期待したい。

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