2019年度に海外売上比率8割を目指すシャープが、海外での事業拡大に向けた取り組みを加速している。
懸念材料の1つとなっていた米国テレビ市場向けの事業展開では、ハイセンスに売却していたシャープおよびAQUOSのブランド使用権に関して、新たな協力関係を構築することに合意。2019年後半以降、米国でのテレビ事業を再開し、テレビの販売にも弾みをつけることになる。さらに、海外事業成長の原動力となる中国、ASEANでの事業展開においても積極的な手を打っている。
シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏は、これまでにも、「ASEANでナンバーワンブランドを目指す」、「中国における成長を実現するために、『技術のシャープ』を確固たるものにすること目指す」など、ASEAN、中国を重視する姿勢を見せてきた。とくに、中国市場は、期半ばの2018年度業績の下方修正の原因となり、シャープが目指す「量から質へ」の転換における最前線市場とも位置づけられる。そのため、2018年秋には、戴会長兼社長が、中国代表を兼務して、中国事業の再構築に乗り出しているところだ。
それを裏付けるように5月9日、シャープの戴会長兼社長は、中国・広州で開催された「2019世界スーパーハイビジョン(8K/4K)映像産業大会」の基調講演に登壇し、シャープの8K+5Gのソリューションが、家庭と社会、教育、エンターテインメント、労働、セキュリティ、ヘルスケア、eコマース/eマネー、循環経済と交通セキュリティ(IoV)の8つの生活シーンに展開されると説明。シャープが、8K映像研究におけるパイオニアであることを強調。8Kディスプレイや8Kカムコーダーなどの関連商品やソリューションとともに、5G技術を連携させた最新の実証実験の取り組みなどについて紹介した。
同イベントは、世界各国の企業および関連団体、官公庁などの交流支援を目的に開催されたものであり、中華人民共和国工業情報化部や、広州市政府が後援。中国や米国、日本、韓国などを中心に、政府役員や政府関係者、放送業者、機器メーカー、研究者、コンテンツ製作者などが来場。この日は、日本においては、鴻海傘下になって初めて目標未達となった2018年度通期決算発表が行われた。戴会長兼社長は、中国での積極的な訴求を優先し、中国における「技術のシャープ」の確立に向けて、戴会長兼社長が自ら発信する場とした。
また、5月10日には、中国の現地法人である夏普科技(深セン)有限公司(Sharp Universal Technology (Shenzhen)Co., Ltd. =SUT)が、中国広東省広州市で、中国市場向けの白物家電新製品に関する記者発表会を開催。同時に、8K技術やソリューションなども発表してみせた。
記者発表会で説明したシャープ 常務 研究開発事業本部長の種谷元隆氏は、「低解像度のデータを、8Kの高解像度にアップコンバートする超高解像度技術の応用市場は、2020年代には5兆ドルの市場規模にまで成長する」としながら、「今後、8K/4K技術を、インダストリー4.0、教育、IoV(クルマのインターネット)、セキュリティ、設計、医療、電子公告などのさまざまな分野に提案していく」とした。
また、8Kに関連した法人向けカスタムソリューションを提案する「SHARP 8K LAB」を、2019年第3四半期までに、中国の深センに設立する予定であることを明らかにし、「現地通信会社などとともに、8Kコンテンツの制作などを手掛けていく」とした。
SHARP 8K LAB は、シャープが取り組む8K+5G Ecosystemに重点を置いた活動を行うことになるという。
また、ASEANにおいては、マレーシアの現地法人であるSharp Electronics Malaysia(SEM)が、5月12~16日に、ペナン島で開催されたマレーシア教育省主催の「FESTIVAL GURU MALAYSIA 2019」に出展。「スマートソリューション」をテーマに、スマート教育ソリューション、スマートオフィスソリューション、スマートショップソリューションの切り口から、電子黒板やノートPC、POSシステムを組み合わせたソリューション、空気清浄機などを活用した教育機関向けおよびオフィス向け製品を紹介した。
イベント最終日には、マレーシア首相のマハティール・ビン・モハマド氏が同社ブースを訪問したという。さらに、SEMでは、スマート教育システムに知見を持つEDUSPEC HOLDINGS BERHAD(EDUSPECと、マレーシアにおける21世紀型教室の開発に関する覚書(MOU)を締結した。
シャープは、親会社である鴻海精密工業と連携して、中国や台湾、ベトナムにおいて、10万以上の教室に、IoTおよびビッグデータ解析を組み合わせた新世代教育用プラットフォームを活用したスマート教育ソリューションを導入してきた経緯がある。今回の提携では、このソリューションを応用。スマート教育ソリューションを、マレーシアの幼稚園や大学などの教育機関に提供するための第一歩になるという。
SEM 社長のRobert Wu氏は、「電子黒板などを活用したシャープのスマートソリューションと、EDUSPECが持つ統合型教育ソリューションを組み合わせることで、次世代教育に向けたシナジーが生まれる。今後、教育省と最先端ソリューションを導入するプロジェクトを進め、100以上のスマート教室の実現を目指す」とした。
また、EDUSPEC CEOのLim Een Hong氏は、「今回のパートナーシップは、科学、技術、数学などの教育水準の向上に有益であり、両社のソリューションによって、学校授業をさらに面白いものにできる」とした。中国およびASEANにおいても、新たなビジネス創出に向けた布石に余念がない。
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