5月、サンフランシスコ市は米国で初めて、警察による顔認識技術の使用を禁止する都市となった。禁止を支持する層は、この動きが途切れないことを望んでいる。
顔認識技術は、顔を照合して人を追跡する、人工知能(AI)の一種だ。サンフランシスコ市の条例にならって、その技術を禁止する条例を求める活動が各地で広がっている。禁止を検討している地方自治体には、サンフランシスコ近隣のオークランドやバークリー、そしてマサチューセッツ州サマービルなどがある。サンフランシスコ市での可決を受けて、さらに多くの都市が後に続くかもしれない。
こうした試みは、地方自治体のレベルにとどまってはいない。カリフォルニア州では、警察官のボディカメラにおける顔認識技術の使用を禁止する動きが、州議会まで進んでいる。ワシントン州でも、州全体で顔認識技術を禁止する法案が提出された。さらに国レベルでも、企業が顔認識でユーザーを追跡することを規制する法案を、2人の上院議員が提出している。
「同じような法律の制定が、他の地域社会でも検討されることを切に願っている」と話すのは、米国自由人権協会(ACLU)北カリフォルニア支部の弁護士Matt Cagle氏だ。ACLUは、サンフランシスコ市の条例制定の草案作りに寄与し、規制に対する地域的な支持を組織化するうえでも大きな役割を果たした。Cagle氏によると、「どうすれば、この顔認識による監視の禁止を、まず警察のボディカメラに、あるいは学校で適用できるかということに関心を示している」州の議員から意見を求められたという。
顔認識技術を規制しようとするこの市民運動の背景には、警察、店舗、空港で、犯罪事件の解決や万引きの防止、搭乗や運行の迅速化につながるシステムが設置されているという傾向がある。中国では、この技術が一部の都市で浸透しつつあるほか、パンダの識別にも使われようとしている。テクノロジー大手企業、特にAmazonは、顔認識技術の販売と、店舗での利用に関心を示している。
強力な技術が急速に発達してきたことが、反発を生む引き金になった。議員や専門家、活動家からは、顔認識による監視に伴うプライバシーの問題、ひいては市民の人権に関する懸念が指摘されている。顔認識技術によって追跡されるようになれば、市民は萎縮して抗議運動にも参加しなくなる、と専門家は警告する。
「市民は、銃を持つ権利を支持する集会に参加するかもしれないし、銃による暴力に反対する集会に参加するかもしれない。そうしたあらゆる機会で、政府は気づかれることなく市民を監視し、顔の情報をデータベースに記録することができる。その使い方については何の規制もない」。下院監視・改革委員会の委員長を務める民主党のElijah Cummings下院議員は、先頃開かれた、顔認識技術に関する公聴会でこう語った。
顔認識技術をめぐって特に懸念されているのが、精度とバイアスの問題だ。顔認識技術は、女性と肌の色が暗い人の認識に問題があることを、研究者は明らかにしている。また、警察は顔認識技術を正しく使っていないという指摘もある。既存の顔写真と照合させるために不完全な写真を加工したり、容疑者を見つけ出すために、容疑者と似た有名人の写真を利用したりしていることも多いというのだ。
実際、監督または監視にはほとんど役立っていないと、この技術の反対派たちは指摘している。
顔認識技術の支持派は、警察の捜査に役立ち、犯罪を抑止すると主張する。欠点はあっても、役立つこともあるというのだ。
National Organization of Black Law Enforcement Executivesの前会長Cedric Alexander氏は、顔認識技術を禁止する立法を誤りだとする立場をとっているが、誤用を防ぐ適切な監視を行っている機関はほとんどないとも強調している。
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