人手不足とフードロス問題の解決へ--テイクアウトサービス「LINEポケオ」担当者に聞く - (page 2)

勝負はテイクアウトのカルチャーを根付かせられるか

――実際に事業をスタートしてからはどうでしょうか。

柿沼氏 : いざ実行してみると、各飲食業者で業態が異なるため、どうオーダーデータを飛ばすか、どういうふうに調理にスムーズにつなげるかなど、足を使って一社一社を回り、作った案に対してフィードバックをもらいながら、ツールの精度を高めるというやり方をしてきました。頭も体も使いながらというのが大変でしたね。

藤井氏 : 写真にもこだわりました。特に個店ではスマホでパッと撮ったような写真が多いです。ですが、やはり食品なので、どれだけ“魅せるか”というのがあって、モックアップとしてテスト画面をつくったところ、結局入っている写真がいいかどうかで勝負が決まるよね、と。最初はチェーン店なので、納得いただければ全部のメニューの写真を撮れる。思い切って『僕らに撮らせてください』という形をとりました。これは僕らもやったことがないことだったんですね。

柿沼氏 : 実際に調理場で作ってもらったものをきれいに配置し、たとえばテーブルの木目が入るのがイヤなのでもう少し寄ってとか、写真一つでも1cm、2cmといった軽微なズレにもこだわりを持ってカメラマンとフードコーディネーターらと撮りました。同じこだわりはサービスの中でもあって、指で操作する感じもそうですし、ボタンの一つだったり、たとえば受取時間が近くなるとゲージが進んでいくのですが、そうした見せ方といった小さいポイントにもこだわってきたので、その積み重ねでいいサービスになっているんじゃないかなと思います。

アプリのユーザーインターフェースにもこだわったという
アプリのユーザーインターフェースにもこだわったという

――すでにモバイルオーダーができるテイクアウトサービスはいくつかあります。LINEポケオの優位性は何と考えますか。

藤井氏 : クライアントと話をすると、アプリをダウンロードしてもらうのが厳しいという課題に収束するんです。さらにIDの作成がハードルになるのでダブルパンチです。ものすごく高い壁が2つあるのは、すべてのアプリのサービスに言えることですが、LINEポケオはもうLINEの中に入っているので、すぐに始められるのが最強の強みですね。

 僕らはアプリのダウンロードとIDという2つの壁を越えられていて、かつ2018年からユーザーの許諾を得て位置情報を取得できています。お客様にマーケティングにできる基盤があるというのも強みです。

 テイクアウトのプラットフォームでパッと浮かぶものってないじゃないですか。僕らの勝負はテイクアウトというカルチャーを日本に根付かせることだと思っています。そこができないと、このサービスが立ちゆかなくなるはずなので、どこかと競合している感覚はなくて、フロンティアというかカルチャーをいかにつくっていけるかというのが大きな勝負だと思っています。

――今後の店舗展開はどういったところを考えていますか。

藤井氏 : ファーストターゲットのクライアントは大手のチェーンなので、自社サイトですでにテイクアウトのサービスを持っていました。ゼロベースではなくて、裏側のしくみを持っていたり、店舗にポップを置いてテイクアウトをやっていたりする企業で、少しは数字が見えている。LINEの送客、マーケティングを使ってさらにブーストしたいというようなところですね。今後は中型チェーン、個店のご夫婦でやっているおそばやさんや中華屋など1店舗しかないようなところも最終的にはターゲットにしていきたいと思っています。

柿沼氏 : 利用できる店舗のバリエーションを増やしていく必要があるなと感じています。LINEポケオではユーザー自身が取りに行くことになるので、生活の動線上にあるところや、駅の近隣にある店舗で、皆がよく知っているチェーンだけでなく、地元の隠れた名店だったり有名な地場企業などに対して積極的にアプローチをしていく必要があると思っています。個店企業はだいたい3年以内に半分ぐらいが廃業してしまうというデータがあります。彼らが一番困るのは集客だと思うので、われわれのサービスに掲載いただけることで、新しいユーザーと料理のマッチングを図るということをしていきたいですね。

「新しいユーザーと料理のマッチングを図りたい」と柿沼氏
「新しいユーザーと料理のマッチングを図りたい」と柿沼氏

――そうした小さい店舗に対してはシステムをどう支援していくのでしょうか。

柿沼氏 : 今回はわれわれで、ユーザーから受注をとれるようにするためのサービスをつくっています。具体的にいうとタブレット端末を各店舗に配布することで受注を受け付けられるようにしていきます。そこにLINEのオーダーが飛んで、確認して調理して、商品をお渡ししたタイミングで消し込みをするといった流れです。個店に対するツールの提供は、夏頃をめどに考えています。

――当初は事前決済ではなく店舗支払いのみ(6月からLINE Payでの事前決済に対応)とのことですが、オーダーしたものの取りに来ないというケースもあり得そうです。

柿沼氏 : クライアント保護の観点から、あまりに常習化する場合にリストに載せて使えないようにするといった対策はとっています。

――スタートしたばかりではありますが、今後の展開は?

藤井氏 : 初回の機能としてはないのですが、割引になっている商品を近くの方にタイムライン上でアピールできる機能も考えています。天候がくずれたとか、大型の予約がキャンセルになって食材があまったというようなタイミングでそういったことができれば。

 人手不足の問題とフードロスをなくすといったところにアプローチできるサービスはあまりないと思うんです。LINEの即時性があるからこそできる。位置情報×即時性がないとできないことなので、できたら今後アピールできるポイントになるのかなと思っています。あとは消費増税で、デリバリとテイクアウトは対象外で8%据え置きになることです。人手の問題とフードロス、消費増税、この3つの課題を解決するソリューションですというと、「すごくいいですね」と非常に共感してもらえる。

柿沼氏 : いま飲食業の人に話しを伺うと、深刻なまでに従業員の確保が難しいという問題があります。特にデリバリの事業では、シェアリングデリバリーという言葉もあるように、外部のリソースを使うパターンも増えてきています。店外の売上げを増やしたいがハードルがあるのでなかなか増やせないという課題がある。そこに一つテイクアウトというソリューションがあるのかなと思います。

藤井氏 : 長期的な視点でいくと、今日はデリバリで届けてもらおうとか、今日は取りにいこうかといったときに、別アプリで探すというよりは、やっぱり比較できたほうがいいと思うんですね。別のサービスか、同じ一つのサービスになるのかというのはこれから議論しないとならないのですが、少なくともデリバリのほうはこっちで検索し、テイクアウトのほうはこっちで検索するという世界観よりは、統合検索できるほうがいい。

 これをオフラインとオンラインの融合と言っていて、融合のタイミングはもうちょっと先だと思いますが、位置情報とパーソナライズをして統合検索をさせるというのが僕らの最終ゴールですね。

藤井氏 : 会社で“WOW”というコンセプトを持っていまして、2月にCWO(Chief WOW Officer/最高WOW責任者)という役職の人間ができました。単にビジネスで売上げを上げていけばいいということではなくて、今までにない価値を創造する。1回使ってみて“WOW(驚き)”があって、人に教えたくなるようなサービスをつくるというのが、全サービス共通の価値観としてLINE社で抱えているコンセプトです。

柿沼氏 : このサービスのWOWとしては、リコメンドとロイヤリティ化の2つがあると思っていています。まずリコメンドに対しては、会社帰りによく帰る時間帯がなんとなく推計できるので、そういうタイミングで「今日はテイクアウトしてみませんか?あなたの好きな中華がやっていますよ」といったリコメンドを送る。日常の食に、できたての温かい料理をそんなに並ぶ必要なく便利に食べていただくという選択肢を作ってあげたいというのがひとつです。

 ロイヤリティ化は、たとえばお気に入りをした店舗、過去に購買した店舗で、セール商品をやるという話があったとき、「今度こういうメニューが期間限定でセールをやっていますよ」と情報をプッシュで送れたら、食べてみたいなとか、オトクになるんだら買おうかなと思ったりして、その店のファンになれる。自分の好きなものにより出会いやすくなるサービスになりたいと思っています。

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