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VRIコラム

日本がeスポーツ後進国な理由 それでもeスポーツが流行る理由

上床光信(Gzブレイン マーケティングセクションマネージャー)2019年04月23日 10時00分
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 ゲーム業界を長年見ていると、俯瞰で見ることによって分析できるようなことが多々あります。

 昨年大きく取り上げられた“eスポーツ”ですが、よく話題となるのが「日本がeスポーツ後進国になってしまった理由は何ですか?」というものです。

 様々な理由がある訳なのですが、一つには「日本市場では、コンシューマーゲームビジネスがキッチリと成立していた」ということが挙げられるのではないでしょうか。

 日本においてPCゲームの市場は、コンシューマー(おもにTVに繋げて遊ぶゲーム機)市場に比べる と大変小さなものでした。

 例えば10年前の2008年は、PCゲームが820億円であったのに 対して、コンシューマーゲームのソフト市場は約3500億円。ゲームメーカーが、ゲームタイトルの投入を考えた場合、コンシューマーをビジネスの中心に考えていたことはごく当然のことでした。

 一方、中国ではコンシューマーゲームビジネスの展開が難しい状況が続いていました。理由は、規制と著作権侵害の問題です。当初から出版と並び、ゲームは政府による規制の対象でした。

 さらに、認可をもらい展開できたとしてもディスクに収められたゲームはすぐにコピーされ市場に出回るような状況だったため、日本で確立されたコンシューマーゲームが中国で花開くことはありませんでした。

 PCはそれなりに普及していたので、やがて中国でゲームといえばPCゲームを指すこととなったのです。

 コピー対策の問題も、オンラインゲームの登場と普及によって一気に解決されることとなります。オンラインでつなぐことが前提であれば、ディスクのコピーは意味を成さなくなっていきます。

 コンテンツがディスクの中にあるのではなく、サーバーに繋ぐことによって展開される“コンテンツがサーバーにある”時代が到来し、中国では急速に普及していくこととなったのです。

 また、中国と同様に、韓国では“PCバン”と呼ばれるネットカフェとゲームセンターを融合したような施設を中心に“コンテンツがサーバーにある”タイプのゲームが普及していきました。

 一方、北米や欧州では、コンシューマービジネスも成立していたとは言え、PCゲームもそれなりに発展を遂げていました。

 そのような海外と比べて、なぜ日本ではPCゲームがこれほどまでに小さなマーケットしか獲得できなかったのでしょうか? 

 それは、日本の“おもてなし”に問題があるような気がしています。日本人は“おもてなし”文化に頭まで浸かりきってしまっているので、提供されるサービスが「行き届いて」いないと、国内でヒットを望めないという問題を抱えているとみています。

 例えば、コンシュマーゲーム機はテレビにつないでスイッチを入れれば専用コントローラですぐゲームができます。

 対して、PCゲームはディスプレイやPCのスペック吟味、デイスプレイやPCの購入セットアップ。OS管理、フォント管理、アプリケーションソフトのインストール、機器やソフトの組み合わせを勘案した個別の設定。

 問題があった場合の対処も複雑、という風に「行き届いて」おらず、日本人にはマーケットハードルが高過ぎたためと考えられます。

 ここまでの話をまとめてみましょう。

 インターネットに繋がっていることが前提であるPC。

 それ故に、PCゲームでは、“コンテンツがサーバーにある”タイプのゲームが普及していくことになります。

 ですが、日本で生まれてた「コンシューマーゲームビジネス」が、国内ではパーフェクトに機能していたがために、PCゲームは日本で花開く必要性が無かったのです。

 そのため、コンシューマーゲームにおいては、“コンテンツがディスクにある”タイプのパッケージモデルから、“コンテンツがサーバーにある” デジタルディストリビューションへの移行に時間がかかってしまっていました。

 さて、ここでPCゲーム勢に問題が起こってきます。

 “コンテンツがサーバーにある”タイプのゲームでは、流通経費や発売タイミングのリスク、在庫のリスクからは解放されましたが、代わりにサーバーの運用費が、コストとして認識されていきます。

 誰もプレイしないサーバーを運用し続けるようなことは、コストリスクとしてのし掛かってくるのです。

 つまり、ユーザーにプレイし続けてもらうという観点が重要となり、そのためのリテンションという概念に注目が集まってきました。常にプレイを促すためのリテンション策が語られるようになる中で、イベントが重要視されていくこととなります。

 イベントやキャンペーンというものは、リテンションの維持と意味で重要なため、やがてPCゲームメーカ―は力をいれていくようになります。

 その中でもeスポーツというのは、リテンションの最右翼として理にかなうものだったのです。

 そもそも“eスポーツ”というのは“対戦”ということがキーワードと認識されていますが、“対戦”自体を行うためには、必ずしもネットワークに繋がる必要はありません。

 しかし、サーバーを運用するオンラインゲームにおいて、“リテンションを維持”の確保こそがもっとも重要な要素である ため、“対戦イベント”や、“対戦を通じたコミュニティーの活性化”が、“eスポーツ”を後押しするエンジンとして機能していくこととなったのです。

 これがPCゲームでまず、“eスポーツ”が花開いた原因なのです。

 今や、コンシューマーゲームもオンラインに繋がる時代です。アプリゲームもPCゲームに追いついてきました。

 ゲーム業界にとって、“eスポーツ”は最適なリテンション維持のための方策であり、新しい時代のコンテンツ要素の条件となる可能性さえあります。

 ゲームコンテンツの脱パッケージの流れは今後も止められません。ゲームコンテンツがサーバーに格納される時代に突入すればするほど、リテンションの観点から、今後ますますeスポーツは重要性が上がっていくことでしょう。

 だからこそ、eスポーツは、必ず右肩上がりへ成長するのです。

 eスポーツの新時代のスターが誕生した時、eスポーツ関連の何かがグローバルスタンダードとして日本へやってくる時、その成長はさらに加速するかもしれません。

◇ライタープロフィール
上床 光信(うわとこ みつのぶ)
株式会社Gzブレイン マーケティングセクションマネージャー。「ファミ通ゲーム白書」の編集長として10年間務めた後、現在はエンターテイメントマーケティングのeb-i事業を推進中。ゲーム業界、エンタメ業界のマーケットアナリストとして業界の前線を走り続けている。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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