オムロンの子会社で社会システム事業を担う、オムロン ソーシアルソリューションズ(OSS)と京都府舞鶴市は4月12日、2030年を見据えた地方の社会的課題解決のための包括連携協定を締結した。
今回の包括連携協定は、地方都市が外部環境に依存せず、自ら稼ぎ、安定した地域経済を実現することで、持続可能な社会「自律社会」を目指すもの。舞鶴版「Society5.0」と名付け、OSSと舞鶴市が共同で取り組む。
舞鶴市は、「大阪、梅田、神戸、三宮、京都市内のいずれにも1時間半以内でいける利便性の高いところ」(舞鶴市 市長の多々見良三氏)と説明する。
“便利な田舎暮らし”を推進してきたが、日本の地方都市では、少子高齢化や、地域経済の停滞、地域コミュニティの弱体化などにより、地方自治体の財政が悪化し、暮らしやすい街づくりが課題となっており、舞鶴市も例外ではない。舞鶴市は推計人口が8万990人(2018年11月時点)で、今後も減少を見込む。「特に医療や教育のレベルを保つには20万人の人口がいないと適切なレベルが保てない」(多々見氏)と危機感を抱いてきた。
一方のOSSは、世界中の人々が安心・安全・快適に生活できる社会の創造をビジョンとし、スマート社会の実現を目指している。特に深刻化する労働力不足の解決に向け、「ソーシャルオートメーション事業」に力を入れている。
OSS 代表取締役社長の細井俊夫氏は、オムロンは1960年代の交通渋滞の解決のために、車の量に合わせて変える電子式自動感応信号機や改札の混雑緩和に向けた対策として自動改札による無人駅システムを開発するなど、世界初の社会公共システムで社会に貢献してきたと説明。「現場解決に向け、ワンストップで提供するソリューション力。コンサルティングをし、収めて保守運用をしながら次のシステムにつなげるバリューチェーンを持っているのが強み」(細井氏)と語った。
多々見氏は、「舞鶴市の課題を最先端の技術で解決できないかと考えていたところ、オムロンから話をもらった」と明かす。「いまのままでは住民サービスが十分にできないことは認識している。大きな街だと導入が難しかったりフットワークが悪かったりすることもありえるが、舞鶴市はトップを中心として進めていける。人口の減は収入の減。そうしたことが起こらないように、あらゆる手段を使って(人口減を)緩くしたい」とし、真剣に課題に向き合っている姿勢を示した。
両者は2018年10月から話し合いを続けており、市長と細井氏を両オーナーとしてプロジェクトチームをつくり、舞鶴市が11名、OSSが12名を選出して本格的に取り組む。
投資額については「市の規模からして、小さい街に見合った投資で街の課題を解決する。いくらとは言えないが、身の丈に合った投資をしていく」(多々見氏)と説明した。
この連携を通して、OSSはこれまで社会システム事業で培った技術・ノウハウを活かした解決策を提供し、舞鶴市を具体的事例として事業性の検証を進め、2030年の舞鶴市未来ビジョンの実現に向けて取り組む。具体的には、以下の5点を予定している。
省エネ・創エネ・蓄エネなどを組み合わせたOSSのトータルなエネルギーソリューションを活用し、舞鶴市の再生可能エネルギー100%のまちづくりを実現し、地域の稼ぐ力を強化。
OSSが展開する決済事業を活かして、舞鶴市全域でキャッシュレス化を推進し、これまで取りこぼしていたインバウンドの取り込みによる地域経済の活性化や、公共サービスの利便性向上に取り組み、地域の稼ぐ力と拓く力を強化。
地域社会での、困っている人と、助ける人をつなぐマッチングシステムの開発を通して、地方都市での“お互い様”の共生社会の実現に取り組み、地域を支える力と拓く力を強化。
OSSのインフラモニタリング技術を活かし、公共施設や河川などをモニタリングすることで、災害時や劣化による異常を早期に発見し、安心安全なまちづくりに取り組み、地域を支える力を強化。
舞鶴市内の若者のITスキルを育成し、域内の若者が起業したり、自らの力で既存の産業を活性化できる環境づくりを整えるとともに、将来的には域外からのIT人材を呼び込めるまちを目指す。
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