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新たなケーブルTV事業者を目指すアップル、後だしジャンケンは今回も通用するか?

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 なんとなく肩透かしに終わった印象の強いAppleのサービス関連発表イベント(米国時間3月25日)について、とくに動画分野の話に限定して、知っておきたいと思える点を記す。具体的には(当面の主戦場となりそうな)「米国市場の現状」、いちばんの強敵となる可能性が高い「Netflixとの距離」、同分野での「アップルのサービスの中身と狙い」の3つで、これに日本国内で生活するテレビ好きな日本人ネットユーザーとしての個人的な懸念と期待について少し触れる。

まさに「乱戦状態」の米ネット動画配信市場

 米国で長い間「テレビ=動画コンテンツの門番役」を果たしていたケーブル事業者ーーComcastや旧Time Warner Cable(TWC)といった接続プロバイダー(以下、「CATV」)のサービスを解約する契約者の動きがニュースとして話題になっていたのは確か7〜8年くらい前だったと思う(正確なところは思い出せないが、いずれにしてもいまとなっては随分昔のことに思える)。業界内では事業者同士の合理化あるいは淘汰が進み、たとえばTWCのように下位の事業者に身売りして「規模の経済」を確保しようとしたところもあれば、Cablevision(ニューヨーク近辺の事業者)を「うまく売り抜けた」James Dorlan氏(Madison Square Garden=MSGオーナー)のような例もあり、さらに4G携帯通信の普及定着と反比例するような形ですっかり影が薄くなったVerizonのFiosといった事業もある。

 そして、これらの旧来のCATVに依存していては見通しは明るくない」とみたさまざまなコンテンツ提供者(Disneyの大黒柱であるESPNやHBOのような有料テレビ局、CBSのような伝統的なテレビ局、それに大リーグ=MLBやNBAのようなプロスポーツなど)が生き残りの道をネットに求めたのがいわゆる「アンバンドル(Unbundle)」と呼ばれる動きで、各社がそれぞれネット配信を何らかの形ではじめ、とくに折から普及の進んだスマホのアプリが主戦場になった。いっぽうCATV側でも「スキニーバンドル(Skinny Bundle)」と呼ばれる従来よりも安価でコンテンツの選択肢も限定したサービスメニューを提供する動きが出てきた。さらにAmazonのPrime VideoやNetflixのような完全にネットありきのバンドルサービスも登場・定着した。

 この10年くらいの大まかな流れをざっと記すと上記のような感じになるが、その結果現時点では下記Recode記事中の図表のような混戦(混乱?)状態になっている。

 ”Media landscape”と題されたこのチャートを見ると、主要なプレーヤー(事業者)の時価総額(=「体力」「影響力」の大きさ)と事業者同士の相関関係がよくわかる。「Distribution(接続サービス)」「Content(コンテンツの制作・提供)」「Streaming video(動画配信プラットフォーム)」と一応色分けされてはいるが、ユーザーの目からはそんな違いはまったく意味のないある種の「異種格闘技」ともいえるし、あるいは比喩的な「料金所」を作って「うまく通行料を取れるのはどこか」という見方もなりたちそうだ。

 ちなみに、時価総額の大きな上位5社を挙げると、Verizon(2420億ドル)、AT&T/Time Warner(2310億ドル)、Disney/21st Century Fox(2020億ドル)、 Comcast(1810億ドル)、Netflix(1600億ドル)。いずれも単体ではGAFAほど大きくないももの、さりとて簡単に圧倒できる相手ではないのは間違いない。

Appleの狙いは「(ノン)ケーブル・テレビ」

 今回のイベントでアップルは、「Apple TVチャンネル」というサードパーティーのコンテンツ配信とそして「Apple TV+」という自前コンテンツのふたつをいっしょにするような形で発表していた。このふたつが「Apple TV」というひとつのアプリ=インターフェイスから(それぞれの違いをユーザーが意識せずに)観られるようになる、というのがApple側のイメージするサービスの売り(特徴)かと思われる(ちなみに、同時に発表された「Apple News+」も実態は「ニューススタンド(あるい雑誌を売るキオスク)」のようなもので、このあたりのネーミングはあまり上手ではないと思うのは私だけだろうか)。そして前者はすでにアプリベースで多かれ少なかれやってきていることであり、また後者についてはSteven SpielbergやJ.J. Abrams、Oprah Winfreyといった有名どころを引っ張り出してきたわりには具体的に何をやるのかをほとんど明かさず、さらに具体的な料金もわからずということで、そうしたすべてが合間って「肩透かし」(少なくともメディア関係者にとっては)となってしまった、という印象が強い。

 そんなAppleのApple TV+サービスについて、RecodeのPeter Kafka氏(WSJ在籍時から長年ネット+メディアの分野をカバーしてきているベテラン記者。今回の件ではThe VergeやDarling Fireballのポッドキャストにもゲスト出演して喋っていた)が、「とりあえずのサービスの中身はテレビ・ガイド」と評しているのが面白い。

 HBOやShowtime、Starzといった名のある有料テレビチャネル(テレビや映画の制作会社)のセールスをAppleが後押しして手数料を取る(=ピンハネする)というのは従来通りのビジネスモデルで、ユーザーはそれぞれ購読料(=サブスクリプションの代金)を払わなくてはならないから、本当の意味での見放題にはならない。そしていうまでもなくこの形は、AmazonやRoku、あるいはSonyなどたくさんの事業者がすでに存在する分野で、AppleにはiOS/Mac端末のインストールベース(全世界で14億台)という接点、それを抑えているという比較的弱いアドバンテージしかない。

 それでも、音楽ストリーミング分野での先例、つまりSpotifyが先に市場が存在することを証明した同分野に後発として参入するという「後出しじゃんけん」がそこそこうまくいって、ナンバー2にはなったApple Musicの例もあるので、少なくともiPhoneのシェアが異様に高い(5割弱)米国や日本などでは有料のApple TV+もそこそこうまくいってしまうかもしれない。

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