Appleはどうやっても、「iPhone」依存の態勢から抜け出せそうにないように思える。
米国時間3月25日に開かれた大々的なイベントで、Appleは同社の新サービスがいかに「iOS」デバイスでうまく機能するかを繰り返し力説した。有料のサブスクリプションサービス「Apple News+」では、デジタル雑誌にiPhoneや「iPad」ならではの機能が生かされ、表紙のアニメーション効果や、コンテンツの自動ダウンロードが可能になる。「いつでも、どこでも、スマートフォンからすぐに毎号全編を読むことができる」。Appleのアプリケーション設計担当ディレクターを務めるWyatt Mitchell氏は、発表イベントでそう語っている。
ゲームのサブスクリプションサービスである「Apple Arcade」では、Apple製デバイスのユーザーが、独占配信される100以上の新しいゲームを無制限にプレイできる。「App Store」のシニアプロダクトマネージャーであるAnn Thai氏によれば、「他のどんなモバイルプラットフォームにも、どんなサブスクリプションサービスにもないゲームをお届けする」予定だという。
年会費などが無料の新しいクレジットカード、「Apple Card」を使うには、iPhoneが必要になる。「Apple Pay」担当バイスプレジデントのJennifer Bailey氏は次のように述べている。「他のクレジットカードではできないことが、何でもできる。第一に、何日も待たなくてもカードを使えるようになる。iPhoneで申し込むだけでいい」
新しくなった「Apple TV」アプリは、「Mac」、iPad、そしてもちろんiPhoneに提供される。各種のストリーミングサービスをアプリ1つで使えるようになり、次に見るべきお勧めのプログラムも紹介してくれるが、残念ながらNetflixは含まれていない。「見るもの全てが、iPhoneでは見違えたように映る」と、Appleのサービス担当バイスプレジデントを務めるPeter Stern氏は話す。同アプリは、サムスンやLG、ソニー、VIZIOなどのスマートテレビと、RokuやAmazonのテレビストリーミングボックスにも採用される予定だ。「新しいApple TVアプリを見たからには、あらゆる画面でこれを使いたくなるはずだ」(Stern氏)。
イベント当日でも最大のニュースだったビデオストリーミングサービス「Apple TV+」が、立ち上げ時にどこで利用できるのかは明らかにされていないが、おそらくはApple TVアプリと同じで、iOSおよび「macOS」、そしてスマートテレビの機能として使えるようになるだろう。イベント会場には、人気司会者のOprah Winfreyさんも姿を現し、Apple TV+のプログラムに協賛する理由を語った。iPhoneが大いに関係しているらしい。「十億人のポケットに入っているんですよ!」。聴衆の前でWinfreyさんはそう語った。
全体的に今回の発表イベントでは、大々的な宣伝が行われ、詳細は不明、というところだった。Apple News+を除くと、発表されたサービスはどれもまだ利用できない。ゲームとテレビサービスに関しては、次から次へとパートナー各社を宣伝していたが、価格設定やサブスクリプションサービスの開始時期については、ほとんど明らかにしていない。それでも、きわめて明白な点が1つだけある。Appleはサービスの大手企業になると宣言しているものの、内実は依然として「iPhoneの会社」のままということだ。
Appleの売り上げは、約3分の2をiPhoneが占めている。この収入源こそ、同社が米国で初めての1兆ドル企業となった原動力だった。しかし、ユーザーが端末を買い換える周期が延びてきたことで、そうしたiPhone依存の態勢が問題化している。時価総額が1兆ドルに届くことはなくなり、2019年初めには、iPhoneの販売不振で四半期の業績予想を下方修正するという異例の事態まで迎えることになった。
Appleにとって、今回の新しいサービスは、モバイルデバイス上でテレビを見たり、ニュースを読んだり、ゲームをプレイしたりするのが好きなユーザーに訴えかける好機となる。と言っても、iPhone、iPad、Macを所有しているユーザーはすでにAppleの支持層だ。真の拡張を目指すのならば、ターゲットとして狙えるのは、それ以外、つまり「Android」および「Windows」デバイスのユーザーということになる。
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