だが、その層が今はまだ取り残されている。イベントで発表したどのサービスについても、AppleはAndroidまたはWindowsデバイスへの対応予定にひと言も触れなかった。Apple TV+のコンテンツを、デスクトップのウェブブラウザで視聴できるかどうかすら明かしていない。同社の広報担当者は、イベントで発表された以上に公開できる情報はないとした。
この点について、TECHnalysis ResearchのアナリストであるBob O'Donnell氏は次のように指摘している。「ユーザーは、そのとき手元にあるデバイスでコンテンツを視聴することに慣れきっている。それがAppleのデバイスとは限らない。Appleのサービスは、Appleのデバイスに限られている限り、真の成功には至らないだろう」
Appleが、もはや完全なクローズドプラットフォームではなくなっているという兆しもある。「iTunes」サービスにしても、Windows PCで動作するバージョンを作るようになって久しい。その方向性が賢明だったことは、当初から明らかだった。Mac版「iTunes Music Store」サービスの提供開始から約6カ月後、2003年の後半にWindows PC版が公開されるや、iTunesのダウンロード数ははね上がっているからだ。
だが、それ以降Appleのサービスは主にAppleのエコシステム内にとどまっており、例外は音楽ストリーミングサービスの「Apple Music」だけである。Apple MusicはAndroid版アプリもあり、ベータ版を提供した後に一般公開に踏み切った。2018年12月には、「Amazon Echo」対応のApple Musicがリリースされ、Amazonの音声アシスタント「Alexa」に、Apple Musicの楽曲を再生させられるようにもなった。
だが、AppleのAndroid版アプリは、iOS版と比べると順調に動作しないことがある。新機能にしても、iOSに搭載されてから数カ月、ときには数年もたってから実装されることも少なくない。
2019年1月の家電見本市CESで、Appleは大手テレビメーカーと提携して、競合するデバイスにも同社のサービスを提供するという手をさらに打ち出してきた。サムスンのスマートテレビでは、この春からiTunesの映画とテレビ番組がサポートされる。また、AppleのWi-Fi対応音声ストリーミング技術である「AirPlay 2」もサポートされ、ユーザーは動画、音楽、その他のコンテンツをAppleデバイスからサムスンのテレビに直接ストリーミングできるようになる。
iTunesのテレビ番組や動画をテレビ本体で再生できるのは、まだサムスン製のテレビだけだが、LG、VIZIO、ソニーのテレビでもiPhone、iPad、Macからコンテンツをストリーミングできるようになる予定だ。
3月25日のイベントで、Appleはこの方向性をさらに先に進めた。新しいApple TVアプリは、この春からサムスンのスマートテレビに登場し、LG、ソニー、VIZIOのテレビにも順次対応していく。Rokuと「Amazon Fire TV」のサポートも予定されている。
だが、サービスがオープンなのはここまでで、少なくとも当初は、どのサービスもAndroidやWindowsでは使えない見込みだ。
AndroidおよびWindowsデバイスを除外するとなると、Appleはスマートフォン、タブレット、およびPC市場のかなりの部分を取りこぼしてしまうことになる。IDCの調査結果によれば、全スマートフォンのうち約85%はAndroidであり、その状況は近い将来も変わりそうにない。また、Net Applicationsによると、全世界のタブレットのうち半数以上はAndroidであり、デスクトップおよびノートPCの85%以上がWindowsだという調査もある。
最終的には、競合他社のデバイスにもサービスを対応させることになるだろう。Appleが単なるiPhoneメーカーからの脱却を真剣に考えるのであれば、そうするしかない。
だが、どれほどサービスを充実させようと、AppleのiPhone依存態勢が、今すぐに終わるわけではない。
コンサルティング企業Chatham Road PartnersのアナリストのColin Gillis氏はこう分析する。「iPhoneの市場が縮小すれば、動画ストリーミングでも(Appleの)シェアは維持できないだろう。AppleはiPhoneの会社のままだ」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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