サンフランシスコで開催されたGame Developers Conference(GDC)で、Facebookは「Oculus Rift S」を発表した。PC接続型の仮想現実(VR)ヘッドセット「Oculus Rift」の新型であり、独立トラッキングを採用、ディスプレイの解像度が上がってデザインも新しくなったモデルだ。だが、同社は全く新しい「Oculus Quest」も発表している。こちらはスタンドアロン型のモバイルVRシステムで、いずれも今春発売というだけでなく、399ドル(約4万4000円)という価格まで全く同じだ。
これは、異例の事態だ。筆者は両方とも数時間プレイしてみて、Oculusが徐々にモバイル版とPC版のVRを1つに収束させようとしていると確信した。だが、同社は2種類のヘッドセットで同時にそれを実現しようとしているのだ。
どちらも試してみた筆者が、説明してみようと思う。
Oculus Rift Sはおなじみのデザインで、見た感じは「PlayStation VR」に似てきている。やや重くなった本体をヘッドバンドで装着し、下部にあるボタンでヘッドセットを前後にスライドさせて顔との距離を調整できるため、眼鏡をかけていても収まるようになっている。
Oculus Rift Sの設計と製造にはレノボが協力している。Oculusの共同創設者Nate Mitchell氏によると、Oculus Questも同時にリリースする関係で社内リソースが不足する、それに対処するための方策だったという。装着した感じは、2018年にレノボが作ったVRヘッドセット「Mirage Solo」にも確かに似ているようだ。ヘッドセットの周囲には、同社の新しい「Insight」トラッキングシステムを採用した5つのカメラを搭載し、ルームセンサが不要でMicrosoftの独立型VRヘッドセットのように動作する。オーディオも内蔵されており、この点はOculus Questおよび「Oculus Go」と共通している。ヘッドホンを着けることもできるが、一体型のオーディオは便利で快適だ。
Oculus Questも、ヘッドセットの周囲にルームトラッキングカメラを搭載するが、こちらは4つだ。Oculus Rift Sの方が1つ多いのは、Riftシリーズの従来のライブラリと互換性を持たせるために、ルームトラッキングを少し広げるためだという。
Oculus Rift SとOculus Questを取っ替え引っ替えしてみたが、どちらも室内を自由に移動でき、コントローラもそれに対応していて、違いより類似点の方が多いように思えた。
Oculus Rift Sには、ヘッドセットを装着した状態で室内の境界線を指定する、複合現実的な新機能「Passthrough+」も搭載される。カメラを通して現実の世界が白黒で表示され、3Dグリッドのような境界線を自分の周囲の空間に描くことができる(Oculus Questにも、全く同じではないが、室内の境界線を簡単に設定できる機能があることは分かっている)。
Oculus Rift Sで使用する「Oculus Touch」コントローラは、Oculus Questでも共通して使用でき、振動機能、アナログコントロールスティック、ボタンと2つのトリガーが装備されている。ボタンに指をかけているかどうかが認識され、何かをつかむような動作が可能になっている。
要は、両方のヘッドセットを持っている場合、コントローラセットは共用できるということだ。そうなると、Oculus QuestのゲームもずっとPCに近いものになる。ここが肝心なところで、Oculusは両方のプラットフォーム間でプレイできるゲームをさらに開発する計画を新たに立てており、どちらでも似たように機能するアプリが登場するということだ。
共通するゲームの話に進もう。Oculusの発表によると、RiftシリーズとQuestのゲームはどちらもクロスバイおよびクロスプレイに対応するという。つまり、ハードウェアを切り替えても、ゲームライブラリには互換性があり、より多くのプレーヤーがマルチプレーヤーの世界を体験できることになる。
これは厳格に強制されているわけではないので、開発側はゲームやアプリをクロスバイにしない選択もできる。一方、印象的なパフォーマンスながらパワーがやや低いOculus Questで、PC上のRiftシリーズ向けに設計されたゲームに対応できるのか、という問題も出てくる。
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