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「五感の一つを丸取りする」--Voicy緒方氏が“音声”に辿り着くまで - (page 4)

藤井涼 (編集部)2019年03月26日 11時30分
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 今まではラジオのように、発信者が多くの労力をかけて、受信者は楽に聞くというものを作ってきたから、発信者は発信のプロしか喋ることができませんでした。ただ、飲み会に行ったりすると、発信のプロよりもコンサルタントとか営業のトップの人の話の方が面白かったりしますよね。それなら、この人たちに話してもらったほうが面白いし、日本国民の面白い人がみんな喋ってくれればいいなと。そして、発信のハードルをめちゃくちゃ下げて声で喋ればいいだけにすれば、今まで存在しなかったコンテンツが一気に生まれるはずだと思いました。それらのコンテンツに対して、面白いと思う人を濃縮して作って、いつでも薪さえくべれば燃え上がるような火種をこちらで作りながら、全体を構成していかないといけないと思っています。

 ボイスメディアのVoicy自体は、「自分の生活の中に“声”がこんな形であったらいいよね」と気づいてもらう啓蒙の場だったり、「自分は文字で書くよりも声で発信したほうが人に届いて嬉しい」という人をとにかく作っていく実験場に近いですね。そこで培養してめちゃくちゃ濃度の高いものを作ったら、あとは一気に広がると思っていて、いまはその培養液を作っている感じです。ただ、偶然伸びちゃったんですけどね(2018年はVoicyの利用者数が30倍以上に成長した)。

 自分としては、インフラを作った後に文化ができると思っていたので、まさかボイスメディアの方から先に伸びるとは思っていなくて、本来であれば今もインフラだけを一生懸命作っていたはずなんですけどね(笑)。例えば、歩く歩道で音声案内が簡単に出るとか、百貨店の館内放送をパーソナライズして出すみたいな、そういうことをやっていきながら世の中が「声って便利だね」という状況になったら、そこにVoicyのコンテンツを一気に届けるというイメージだったんですが、コンテンツの方がボンと伸びてしまうのは、ちょっと予想外でした。

声は「人間味のロス」が少ない

——サービスが急成長した要因はどこにあったと思いますか。

ボイスメディア「Voicy」
ボイスメディア「Voicy」

 (Voicyの)リリース当初はニュースアプリという名前をつけていたんです。人は喋る時に何かネタがないと上手く喋れないだろうと考えて、色々な活字メディアと組んでさまざまなニュースが読めるようにして、その記事のアンバサダーみたいな感じにできるのではと思っていたんですけど、これがまぁ面白くならないんですよ。記事を綺麗に読んだり、柔らかく読むととにかく面白くなくて。一方で、その裏話を喋る人とか、フリートークを話す人の方が面白いことが増えていったんです。そこで、音声は喋り方が汚くても、声質が悪くても良くて、その人の人間味が出た瞬間が一番面白いってことに気づいたんです。

 サービスを始めてから1年が経った時に、このまま情報をずっと流し続けていても、便利かもしれないけれどこれ以上は伸びないと思い、喋る人の人間味をもっと出すにはどうしたらいいかと考えた時に、気軽に発信できるものを探したらブログでした。ブログならトピックスや長さも自分で考えて発信できるし、すでにブログ自体の市場ができているので、“声のブログ”にしようと思って、それまで「音声ニュースメディア」と言っていたのを「声のブログ」に変えたんですね。そしたら、ブロガーさん達がめっちゃ入ってきたんですよ。イケハヤさんとかはあちゅうさんとか。彼らはブログで人の魅せ方を分かっているので、「声でやった方が発信が楽」「共感性があって炎上しない」といってザーッと来てくれて、コンテンツが一気に面白くなりました。

——なるほど。Voicyに対して「ラジオと違うのか」と言う人もいそうですが、「声のブログ」と言われると全く別物に感じますね。

 そうですね。例えば、告白する時に文章で書いても相手の心には届かないですよね。昔のラジオも同じだと思っていて、「好きです」と書いたものをパーソナリティーに喋ってって言ってるわけですよ。それだとやっぱり届かなくて、好きという気持ちは文字になる手前にその価値があって、目をみて言うことに価値があるので、文字化した瞬間にすごく劣化すると思うんです。僕はこれを“デジタルロス”って呼んでいます。その人の人間味がネットに乗った時にどれだけ失われているかを表した言葉ですね。

 いまはゴーストライターもいるので、文字にしたらその人が本当に書いたかどうかは分からない、動画だって脚本家がいるかもしれないというところで、音声でかつその人が自分で考えて喋ると、ほぼ人間味のロスが少ない状態で届くということに気づきました。この「デジタルロスの少なさ×個人の魅力」というかけ算が、おそらくVoicyの肝なんじゃないかと思っています。なので、Voicyの魅力はCGMのように誰でも発信できるのではなく、本当に魅力的な人が人間味をロスすることなく発信できるところなのかなと思いますね。

Voicyの配信者の一例
Voicyの配信者の一例

——今後のVoicyの方向性について教えてください。

 これをテレビやラジオみたいなマスメディアにしたいと思っているんです。マスメディアの要素って、どんな人にも届いて、愛されて、影響力があって、かつ企業が乗ってくることだと思っています。なので、ユーザーから課金するものではないと思っていて、テレビ以外のスポンサー事業っていうのを、ちゃんとITで表現したいと思っています。それに、今はスポンサーが偉そうになっていることが多いので、スポンサーが一切口を出せない形でスポンサーになってもらう…それは別の意味で言うと、その発信者と受信者のコミュニティをサポートするという形なんじゃないかと自分的には解釈をしていて、基本的にはスポンサーモデルでやっています。

 いまは、アリナミンさんやPR TIMESさん、IT特化の転職サイトのGreenさんなどにスポンサーになっていただいていて、すごく価値も感じていただいています。その結果、月に80万円とか稼いでいる配信者さんもいます。そういうVoicyだけで生活できる人が今後も増えてくると1つの産業として成り立つ可能性があるなと思っています。

——先に声のブログのVoicyが成長していますが、当初の目的である音声インフラの構築についても思いを聞かせてください。

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