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「五感の一つを丸取りする」--Voicy緒方氏が“音声”に辿り着くまで - (page 5)

藤井涼 (編集部)2019年03月26日 11時30分
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 テレビ網やラジオ網のように、新しいIoT音声放送網を作っているところです。利用者がVoicyのボタンを押せば、どこかのIoT機器の中から音が出るようなイメージです。例えば、代々木体育館の前にライブ待ちで3万人くらいが並んでいて、みんな暇をしているとします。そこの近くにあるスピーカーにVoicyを入れたら、暇が潰れるような音声放送が出ますよと。そして、その中の5分間を切り取って、企業に売ってCMが流れれば、一番訴求力が高い状態で逃げずに聞いてもらえますよね。さらに、代々木体育館にその売り上げが入れば、彼ら自身で音声放送局を作れるんです。すると、よく人が集まる施設や会場の人たちは、音声放送網で稼げるっていう新しい収益手段を得られるわけです。

 そうやって既存のプレーヤーがどんどん音声に入ってきたら、また新しいことができると思います。例えばライオンキングのミュージカルのポスターが街に張ってあって、QRコードやビーコンで前を通ったらライオンキングの音楽や音声が流れる。それを聞いた人が、その音声をいつ、どこで、どの端末で、何分まで聞いたかというデータが全部たまるわけです。そして、よりよい訴求方法が生まれて、さらにクリックしてもらえるといったO2Oみたいなこともできるようになる。そういう音声絡みでできることをどんどんトライできる母艦を作ってるみたいな感じですね。

一番面白いのは「誰も気づいていない時」

——緒方さんは以前、「創業時には誰にも音声の可能性について理解されなかった」とお話していましたが、2018年にはサービスが急成長し、2019年以降はさまざまな提携や資金調達が相次いでいます。現状をどう受け止めていますか。

 人間って面白いなぁと思います。新しいものとか既存のものの形を変えることに皆すごくアレルギーがあって、「理解ができないもの=存在しないもの」って考えるんですよね。ただ、僕もiPhoneが出た時にはすごくないって思ったんですよ。それが後になってすごく恥ずかしかったんですよね。何ですごくないって思ったかというと、発売当時はとにかく使いにくかったんですよね。でも、それまでのPCでめちゃくちゃ使いやすいところまでUXを極めたところから、新しいインターフェイスがゼロから出てきて使いやすいはずがないんですよ。なのに、当時の僕はそれが分からなかった。

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 その時に、何で自分がそういう新しいものに気づけなかったんだろうと分析していたので、Voicyを出した時の周りの反応っていうのは、想像に足るものだったんですね。そのおかげで、僕たちは理解されないことを理由に開発を止めることはなかったので良かったのですが、そこで辞めていった人たちもたくさんいるんだろうなと思って、そういう意味では社会の新しいものへの理解がもう少しあれば、もっとイノベーションは進んでいたんじゃないかと思いますよね。

——現状のスマートスピーカーでできることの多くはスマートフォンの置き換えになってしまっているので、なかなか音声の価値を感じにくい人も多く、やはり音声ならではのコンテンツが求められそうです。

 それはありますね。そして使い勝手も悪いと思います。いま「ボイシー」ってスマートスピーカーに話しかけると「おいしい」って聞き取られちゃうんですよ。それってすごく良くないことで、将来はネーミングを考える際に、声で呼んだ時に一番認識しやすい名前にすることも気をつけるようになると思うんですよね。そしたら、曲名やアーティスト名もできるだけ音声認識しやすい名前になると思うので、色々なコンテンツにも影響が出てくると思っています。

——音声分野の最前線にいる緒方さんから見て、「音声」の時代がくるのはいつだと思いますか。

 僕の三十数年間の人生の時間軸でしか測れないけれど、“くる”時間の早さって年々早くなっていってるじゃないですか。SNSで言えば、mixiがきて、Facebookがきて、インスタがきて、TikTokがきて、というサイクルがどんどん短くなっていると思っています。じゃあ、音声がくるかっていうと、ボイスメディアのVoicyの方が2019年から2020年あたりにめちゃくちゃ大きくなることはソフトとしてはあり得るんじゃないかなと思っています。

 ただ、インターフェースとして音声がくるのかというと、もう長い間、インターフェースチェンジが起きていないのですぐには難しいかもしれません。目でずっとやってきている人たちに耳というのは。それこそ、戦時中の耳じゃないと情報が得られなかったところから、テレビが登場した時に移行にどれくらいの時間がかかったんだろうというのは気になりますね。とはいえ、目で見た方が良いものもある中で、音声ならではのマストハブなものがどれだけ生まれるか次第でもあるのかなと思います。

 僕は一番面白い時って、誰も気づいていない時だと思うんですよ。例えばクルマよりも馬車の方がいいと言っていた人が多かった時代に、「この人はいつまで馬って言っているんだろう」と、クルマを作っている立場から思うような感じですよね。いまは完全に電気を消すのも、アラームをかけるのも、声の方が圧倒的に楽なわけですよね。そうなると新しいペイン(痛み)が出てくるわけです。それは、必ず自分が分かる場所に置いていた、リモコンの場所が分からなくなることです。そして、家のタッチパネルで電気を消すこともなくなっていくので、むしろ部屋のど真ん中の目立つ場所にパネルを置くのはデザインとしてダサイだろう考えるようになって、もしかしたらデザインも消費の形自体もどんどん変わっていくかもしれない。

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 その先駆けだと思うと、めちゃくちゃ面白いなと思っていて、むしろ僕はまだその起爆剤を入れているところです。例えるなら、クルマというものを作ってみてはいるものの、これをやることでクルマが走る道路を作る人が儲かるようになるとか、ドライブスルーというサービスができるなんて想像もしていないみたいな状態です。なので、僕自体も自分自身が生み出しているイノベーションの波及効果がまだすべて把握できていないんですよ。いまはそっちを考えることに必死で、(音声が普及する未来が)分からない人は分からなくてもいいのかなと思っています。

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