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「五感の一つを丸取りする」--Voicy緒方氏が“音声”に辿り着くまで - (page 2)

藤井涼 (編集部)2019年03月26日 11時30分
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 とりあえず引き受けてやってみるということと、重要なポイントだけ押さえればいいということを理解したからかなと。例えば、カレーを作ろうとしてご飯とルーとお皿だけだったら多分60点にはならなくて、カレーのルーを使った何か別の料理で美味しいと言わせたら60点だと思うんですよ。そこのすり替えができていたのかなと思います。結局、ご飯が手に入らなくてもルーだけで何とか美味しいと言ってもらうというか、目的と趣旨と最低限の満足を、Todoリストにないところにねじ込むってことですよね。

 オーケストラでも、収益を満たして商品を揃えてお客さんを楽しませるんじゃなくて、何か足りなかったとしても、そのパートの人はそもそも出なくてもいいから、形として成り立たせて面白いって言わせたらOKだろうみたいな、最終的な満足度を取るところの押さえに行き方はすごく学んだのかなと思います。

——米国ではそのあとどうされたんですか。

 旅をしながらニューヨークに降り立ったときに、タイムズスクエアの目の前にあるErnst & Young(EY)で会計監査の仕事を見つけて働きました。会社に飛び込みで行って「日本人はいるか」と聞いて、そこにいた日本人とランチしながら、「人が足りてないなら入れてくれ」って言って。まぁ、給料は安かったですよね。30歳になってルームシェアするとは思っていなかったし(笑)。

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 僕がニューヨークに行った時には、TOEICの点数が415点しかなくて、「全然できない」というレッテルが貼られているわけですよ、ネイティブの彼らからすると。そこで、何かやれることがないかと考えて、今度はニューヨークの日本人勉強会というものを作りました。飲み仲間に日銀の人がいたんですが、みんな2年間駐在したら日本に帰るんですよ。そこで得た知見とか面白いことが色々あるのに。なので、もっと共有しろよと話したら、「場所さえあればやるよ」と言われたので自分で立ち上げました。1人ずつプレゼンをしてもらって最後に懇親会をするという会を作って、僕がMCに入ってプレゼンのレビューもするということを毎月していました。

 当初は20人くらいで始めたんですが、人数がどんどん増えてきて、いつの間にか2000人の組織になりました。ニューヨークにある日本人会としては結構大きい組織になって、毎月みんなそれが楽しみで働いているみたいな状態になったんですね。そこで、コミュニティや人を動かす力は面白いなと思うようになり、1人1人の魅力を多くの人に届けたり、楽しいと言われる世界を作れたらいいなと思うきっかけになりました。

年300社のスタートアップを支援

——その頃から、Voicyの構想に繋がりそうな経験をされていたんですね。ちなみにニューヨークにはいつまでいたのでしょう。

 ニューヨークには2年半ほどいて、その後日本に帰りました。やはり、監査に戻ってみたものの、クリエイティブじゃなかったことは変わりなくて面白くなかったのと、絶対に日本語だったら俺の方が仕事できるからなと思うような奴らにめちゃくちゃ馬鹿にされたんですよね。やっぱり仕事を楽しみたくて、よりパフォーマンスを生みたいんだったら、自分の得意な言語でやるべきで、絶対に超えられない壁はあるなと思いました。

 もう1つは、その後で働くトーマツベンチャーサポートからオファーがあったことです。Facebookで「面白い会計士を集めてます」という投稿をしていた人がいて、面白そうだなと思って日本に一時帰国した時に会ってみたら、「アクティブに色々なものを立ち上げられる会計士を求めているから入ってくれ」と言われて、興味を持ったので「会社を辞めてくる」と伝えて、ニューヨークに戻って2週間後に辞めました。

——2週間とはこれまたスピード退社ですね(笑)。その後、務めるトーマツベンチャーサポートでは、これまでの会計士とは違う形で、企業を支援する立場になったんですね。

 そうですね、そこが2つ目の人生のターニングポイントかもしれないです。実際に入ってみたら、スタートアップマーケットがめちゃくちゃ面白かったんです。ゼロから何かを立ち上げることに対して、皆ものすごく熱量があって。でも、(スタートアップの人たちは)すごく不完全で、ビジネスモデルも全然知らないし、社会の将来のリスクとかも知らないわけですよ。

 会計士をやっていた時って、その会社のゴーイングコンサーンのリスクとか、不正が起こるリスクとか、競合リスクとか全部見るんですよ。なので、スタートアップの話を聞いていると、「いや、それをやったらこんなことが起きるでしょ」とか「歴史から学んだらそれは1度あの会社が失敗してますよ」みたいなことがたくさんあって、それを伝えるだけで、自分が何でも知っている“未来の預言者”みたいな扱いを受けたりしましたね(笑)。

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 自分もゼロイチを何個もやってきてたから、彼らの気持ちも分かるのですごくバリューが出るし、喜んでもらえたんです。それに日本のベンチャーキャピタルには自分で事業をやったことがない人が多いので、もしかして場数を踏めばこの業界で一番になれるのではと思って、1日最低5社ずつ、年間300社ほど回りながらずっと打席に立ち続けました。

「五感の1つを丸取りする」サービスを作る

——公認会計士、ゼロイチでの事業立ち上げ、スタートアップ支援、これらすべてを経験している人はそういませんよね。トーマツベンチャーサポートでは何年スタートアップ支援を続けたのでしょう。

 2年ですね。自分でスタートアップをやろうと思ったんです。スタートアップって、「サービス」というプロダクトと「組織」というプロダクトの2つを作らないといけないんですね。でも、多くのスタートアップは組織についてすごく甘いし、サービスについても途中から売り上げだけを強引に伸ばすようになっていって、もっと夢を見れるよねと思っていたんです。

 だから、自分でめちゃくちゃ良い会社を1つ作って、日本のスタートアップでも世界で戦えるプラットフォームを作ったり、誰もやっていないところに踏み込んでもいいんだよということを伝えたくて。よく「マーケットのどこが空いてる」とか「どのパイを奪う」とか言いますけど、人のパイを奪っている時点で地球上のGDPを上げていないんですよ。だから、地球のパイ自体をポンと増やすような事業を作ってもいいし、Apple Storeを作るぐらいの規模のものが生まれてもいいんじゃないかと思いました。

 そう考えた時に、人間の三大欲求のどれか1つを全部取るとか、五感を1つ丸取りするみたいなことができてもいいよなと思って、そういうものを生み出せるのは自分なのかなとはずっと思っていました。次の時代の中心地を作るために色々な産業とも連携しながらゼロから価値を生んでいって、かつそれをやれるような人を育てないとそもそも作れないよなと思い、自分でやることにしたという感じです。

——ここでようやくVoicyの話につながっていくわけですが、なぜ緒方さんはそこで「音声」に注目したんでしょうか。

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