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「五感の一つを丸取りする」--Voicy緒方氏が“音声”に辿り着くまで - (page 3)

藤井涼 (編集部)2019年03月26日 11時30分
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 僕が一番得意なことって、物事の事実が何の要素でできているかを考えて因数分解していくことなんですね。例えば、ある人が「辛いものが好き」と言った時に、その辛いには「刺激」とか「味」とか色々な要素があると思うんですが、その人はひょっとしたら「刺激」という要素が好きで、他の刺激も好きなんじゃないかと考えるんです。そこで「ジェットコースター」も好きといったら、今度は「危険」を感じるから好きなのか、「スピード」が好きなのかを考えていく…。

 そうやって、物事に対する色々な事実を因数分解しながら共通の因子を見つけて、そこに何かを持ってくるということをよくしています。すると、価値があるはずなのに、まだ使われていないものが結構出てくるんですよ。そういうものを掘り出して、色々な形の中に入れていくとすごく面白いんですよね。

 その中で、情報社会を考えた時に、情報にはめちゃくちゃ価値があるはずなのに、まだ価値を感じられていないものを考えたら、情報伝達手段としての「音声」だったんですよね。人々はミーティングでも喋っていて、プレゼンテーションでも喋っていて、何なら声フェチとかもいて、実社会ではほとんど評価されているのに、ビジネス的には評価されていない、換金できてないところなんだなと薄々前から思っていて。

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 じゃあ、声の価値ってなんだろうって考えると、その人の温かみを感じられたり、「おはよう」って言ったら「今日元気ないね」みたいな情報にヘルスメーターを付けられることなんです。それって凄いことじゃないですか。どんな機械をつけて音を出しても届かない情報を、声は一発でのっけてくる。

 ただ、それは相手と長く一緒にいることで気づくものだったりするので、声によって健康状態が分かるということを因数分解すると、ヘルスメーター情報と音声情報がくっついているものを、発信者の状況によって理解しているってことですよね。でも、それは発信者の平常状態を知っていないと分からないので、そこに“継続的な関係性”が含まれていれば、情報伝達の中で新しいものを生むかもしれないって思ったんです。

 例えば、ラジオを何回も聞いていたら、その人の声が好きになっていきますよね。そうすると、サウンドロゴなんかも絶対に嫌いにならない。耳からの情報というのは、長期的な戦略で考えればものすごくブランディングになる可能性があると感じました。ただ、全く知らないおばちゃんの健康状態が悪い「おはよう」にはあまり興味を持てないですよね。でも、北川景子があくびをしながら「おはよう」といったら多分嬉しいんですよ。それぐらい声には好き嫌いがすごく出るんだなと思って、これはかなり人間味があるぞと。

 これまで、ITで人間味を出すというのは、ほとんどの人がやったことがないですよね。僕は今後の世の中は、人々がどんどん寂しくなっていくと思っています。人とのつながりが減っていって、仕事も9時〜17時で帰るようになって、居場所がなくなって寂しくなるという流れがくるんじゃないかと思っていて、そこと人間味というのはすごく相性がいいなと思ったんですよね。

 だからITで居場所と人間味を表現するサービスが、きっと今後伸びてくるだろうというところは何となく仮説を立てていました。ライブ配信やオンラインサロンもきっとそうで、そこが居場所になって温かみを感じられるんだと思います。であれば、音声が一番主戦場として勝負ができるなと思ったので、「IT×温かみ×居場所」というのは、多分僕らがちゃんとやり切れば、第一線で取れるんじゃないかなっていうのがあって。

 ...ここまで僕が一方的に話し続けてるけど、大丈夫?

——はい、ぜひそのまま思いを語ってください(笑)。

 それとIoTが広がった世界って、どうなるんだろうということをずっと考えていた時に、すべてのものから情報が出てくるようになるから、人間は生活をしているだけでよくて、わざわざ自分から情報を取りにいかなくてもよくなると思ったんですよね。

 もともと人間は情報を得ることによって自分の人生を豊かにしてきたんですよ。石板に一生懸命文字を掘るようになって、立て看板が生まれて、新聞やテレビが出てきたんですが、だんだん情報を得るために長い時間を使うようになっていって、いまではほとんど情報のために人生を使っているみたいな状況になってしまっている。だから、IoTでもう一度、自分の人生のために情報を使えるようになるかもしれないと思ったんです。

 人間が人間らしく存在するために生活を重視して、情報は色々なIoTデバイスから出てくる未来があるとしたら、その時には至るところがモニターになるのか、それとも自分の目の前にホログラムモニターがずっと出ているのかとか考えたけれど、これって現状の延長線上で未来を想像するからズレるんだということに途中で気づいたんですよね。

 何でわざわざボタンを押さないといかんねんと。そこは「寒い」って言ったら勝手に暖かくなってくれた方がいいに決まっているので、IoT×情報の世界の主戦場は音声かなと思ったんです。ただし、人間が口(音声)から指令を出しても、情報の受信は目になるのか耳になるのかはまだ分からないなと。映像を目で見たい時もあるし、天気予報だけなら耳だけでいいなと思うと、僕は多分ハイブリットだと思っていて、色々な産業と音声をくっつけてハイブリットにすることが、1つのミッションなんだろうと思ったんですね。

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 つまり、IoTに音声コンテンツを出しつつ、色々な産業と音声がミックスしていくインフラを作ってしまおうと思ったんですよ。そうすれば人間の生活に紐付いてストレスのないように情報がついていくようになり、かつ人々が生活するだけで、どんどんデータが取れるようになる。AIが生まれる前は、データを集める人と、それを解析する人と、ソリューションを生む人が別々にいたけれど、AIの時代はデータが生まれるところを握っている人たちが勝つので、“データの泉”を取ったほうがいいなと。それなら、もうこの際だから社会のインフラをもう1つ作ってしまおうと思ったんです。そして、そこから出てくるメディアはマスメディアの1つになるような世界まで作ってしまおうと考え、今はそれを具現化しつつ、色々な気づきを得ているという感じですね。

ボイスメディアの急成長は「想定外」

——音声への熱い想いを聞かせていただきました。では、音声インフラを作る上で、ボイスメディア「Voicy」はどのような位置付けになるのでしょう。

 僕は社員にも言っているんですけど、いまは産業をゼロから作っているところだと思っています。スポーツに例えると、仮に野球しかない世界があったとして、そこでサッカーという競技をゼロから作っているイメージなんです。世の中からは、「足でわざわざ蹴るの?手で持てばちゃんと持てるし投げられるじゃん」と言われるわけですよ。それに対して「いやいや、足の方が脚力があってよりエキサイティングになる」と言っても全然伝わらないわけですよね。でも、このサッカーというスポーツが面白くなるはずで、ゆくゆくはJリーグもワールドカップもできると信じているんです。

 ただ、ゴールを1個にするのか、それとも2個にするのかすら分からないわけですよ。3人対3人がいいのか、5人対5人がいいのか、もしかしたら11人対11人かみたいなことを、ずっとしのごのやっている状態で、これがマネタイズまでいくのかってところは、本人たちも不安なんですよね。ただ、めちゃくちゃ面白いスポーツが作れた時にはマネタイズができるかもしれないというのは、他の産業の人たちも薄々分かっているんですよ。その中で一番大事なのは、ボールを蹴ることが面白いと気づける人を作って、さらにうまく蹴ることができる人がかっこいいという“ヒーロー”を作ることであって、いきなりスタジアムを作ったり、イベントを開催したりすることではないと思っているんです。小さな火種を作って、それが炎になって周りに燃えていくものなので、それをゼロから作るんだなという意識はすごくあります。

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