起業と異なる“新事業立ち上げ”の難しさ--不動産情報サービス「IESHIL」ができるまで

 朝日インタラクティブは、ビジネスカンファレンス「CNET Japan Live 2019」を2月19~20日に開催。「新規事業の創り方」をテーマに、新しい切り口で挑む企業の新規事業担当者やスタートアップを招き、さまざまなノウハウを紹介した。

 そのなかで、「企業に属しながら新規事業でWebメディアを立ち上げるリアル」と題するテーマで登壇したリブセンスの芳賀一生氏は、不動産価格検索サービス「IESHIL」を立ち上げた経験をもとに、似て非なる「起業」と「社内での新規事業立ち上げ」の違いを語った。

キャプション
リブセンスの芳賀一生氏(不動産ユニット)

新規事業の立ち上げで重要なのは“なぜやるのか?”

 リブセンスは2006年、当時大学生だった村上太一氏によって設立された。「マッハバイト(旧ジョブセンス)」「転職会議」など、就職・人材情報関連のサービスを主力としており、2019年の現在も全社売上の8〜9割をこれらの事業が占めている。

 そのリブセンスが、2010年4月オープンの「DOOR賃貸」を皮切りに、不動産事業へと進出した。芳賀氏は2015年3月にリブセンスへ入社すると同時に、新しい不動産サービス開発を任され、同年8月にローンチしたのが「IESHIL(イエシル)」である。

 IESHILは、首都圏の住居用マンション約73万棟の査定額を部屋別(101号室、405号室といった単位)で参照できるのが最大の特徴だ。登録会員数は約15万人。

「IESHIL(イエシル)」の概要
「IESHIL(イエシル)」の概要

 IESHIL誕生のきっかけは、リブセンス創業者である村上氏が、不動産の売買を個人的な趣味として嗜んでいたことがきっかけという。不動産はその売買価格が不透明で、第三者からは見えづらい。芳賀氏は「入社にあたっての社長面接で、最初の10分くらいは職務経歴を紹介したが、あとの1時間はもう不動産についての課題の話ばかりだった」と振り返る。

 ただ、その時点で芳賀氏は決して不動産の専門家ではなかった。Amazonのウェブディレクター、フリーランスのアリフィエイトサイト運営・ウェブコンサルティングの経歴はあったものの、リブセンス入社後、不動産について徹底的に学習する日々だったという。書籍、白書の熟読はもちろん、時には役所や専門家に飛び込みで電話をかけてヒアリングもした。

 こうして“業界事情”を身に付けつつ、一般的なユーザーが感じている課題については「Yahoo!知恵袋」であったり、Googleの検索ワードとそのサジェストなどで調査。また、米国で著名な不動産情報サービス「Zillow」についても、サイトマップを作るなど大いに参考にした。

「Zillow」については徹底的に調べ上げた
「Zillow」については徹底的に調べ上げた

 そして、新規事業を立ち上げる上で“なぜやるのか?”という視点、つまりビジョンも重要になってくる。芳賀氏は、「新規事業は、未知の領域へ踏み込んでいく以上、怖さもある」としつつ、IESHILではビジョンを「少しでもユーザーの方々が不動産取引で安心いただけるサービスを作りたい」と定義。芳賀氏自身、開発の要所で繰り返し自問したという。

「ビジョン」は開発前・開発中・開発後すべての面で重要になっていく
「ビジョン」は開発前・開発中・開発後すべての面で重要になっていく

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