GAFAに強敵出現--「シリコンバレー大手の分割」が2020年米大統領選の争点に - (page 2)

「庶民の味方」「アウトサイダー」「苦労人」……Warren氏の人となり

 Warren氏については2016年の大統領候補選でも出馬の可能性が取り沙汰されており(本人の意向というより、それを望む人たちが周りにいた)、すでに比較的多くの情報が日本語でも出ているようだ(「議員になる前、ハーバード・ロースクールの先生時代に、Barack Obama元大統領から“ウォールストリートのお目付役”に任命されかかった」など)。私がまっさきに思い出すのは、何年か前にどこかで読んだ「苦労して育った人」ーー1950年代の、既婚女性が専業主婦でいることがまだ普通とされていた時代に、父親が家を出ていってしまったせいで、外に働きに出た母親の背中を見ながら育ったこと、あるいは自らも若くして結婚・出産し、赤ん坊を背負いながら卒業論文を書いた、といったエピソードで、いずれにせよ選挙に勝つ上で重要な「人としての良いナラティブ(narrative)」がある。また「庶民の味方」「Beltway(=ワシントン政界)のアウトサイダー」「闘士」といったイメージも浮かんでくる。さらに、民主党が今度こそ倒さなくてはならないDonald Trump大統領とは「真逆の人間」という点も付け加えておきたい。

 消去法的にいうと、Warren氏にはまず「政界のインサイダー」という負のイメージがない。またHilary Clinton氏のようなウォールストリートとの癒着という負の要素もない。同様に、Chuck Schumer民主党上院院内総務のようにGAFA(特にFacebook)とも近くなければ、Nancy Pelosi下院議長(サンフランシスコが地盤)のようにシリコンバレー大手の立場に気を使う必要もない。

 そういう人間だからこそ「GAFAの分割」という思い切った公約を掲げることができたともいえそうだが、同時に大統領候補の本命がまだ定まっていない(「どんぐりの背比べ」状態にみえる)民主党側で、Warren氏が候補者として頭一つ抜け出すにはそんなインパクトの強い施策をぶち上げる必要があったとも考えられる。

 今後少しずつ選挙の準備が進むなかで各候補者とも試行錯誤し、途中で出馬を断念する者もいれば、2020年初めから本格化する予備選の結果淘汰される者も出てくるだろう。Warren氏がこの先大統領候補としてどこまで進めるかはまだわからないが、個人がいなくなっても公約が残る、つまり有権者からの反応がよければ、他の候補者が受け継ぐという可能性は十分考えられる。そうなれば2020年大統領選の争点として「GAFAにどう対応するべきか」というのが生き残ることになる。

 候補者Warrren氏については、とりあえず政治的に近い立場(潜在的支持者層が重複)とされるBernie Sandors氏などとどう差別化するか(あるいは手を組むことになるのか)、そして2018年秋の中間選挙でより鮮明になった左傾の流れの代弁者(民主的社会主義者)としてメディアでの存在感がとみに高まっているAlexandria Ocasio-Cortez氏(ニューヨーク州選出の新人下院議員で、イニシャルの「AOC」としても知られる)あたりが、師匠筋にあたるSandors氏とWarren氏のどちらを支持するのか、などが気になるところ。

 なお、Warren氏は最近だと2%の富裕税(Wealth Tax)というのを1月に打ち出して話題になっていた。この富裕税について説明したVox(Ezra Klein氏の始めたニュースサイト)の動画をYouTubeで見つけた。Warren氏の政治的姿勢がよくわかる材料として紹介しておく。

("A better way to tax the rich")

 先ごろAOCが打ち出して大きな論争の的となった「グリーン・ニューディール政策」とその原資としての「高額所得者への70%課税」というのは、まだ実態のよくわからない提言でしかない。それに対してWarren氏の富裕税(資産に対して課税するというもの)のほうは具体的な議案にするつもりで口にしたもの。こちらに対してはさっそく超大金持ちのMichael Bloomberg氏(2019年度版のForbes大富豪ランキングで9位)あたりが反発していたようだが、いずれにせよ、Warren氏はこれからJeff Bezos氏(同1位)やMark Zuckerberg氏(同8位)、Larry Page氏(同10位)/Sergey Brin氏(同14位)あたりと「公私」両面で闘うことになる、という見方も成り立つ。

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