Appleのリテール責任者であるAngela Ahrendts氏が4月に退任するという発表があり、この話題が2月5日の夜中から6日朝にかけて比較的多くの媒体でニュースになっていた。当媒体でも下記の記事が掲載されていた。
読者のみなさんのなかには、この突然の辞任に違和感を覚えた方も少なくないのではないだろうか。
Appleの調子がいい時ならとくに気にならなかったかもしれないが、ご存知の通り、同社の業績は約18年ぶりの前年割れ。
また、とくに中国市場での成長減速もしくは売上低迷が鮮明、というのも各所で報じられていた通り。
そうした状況で、前職での「中国市場での実績」を買われてスカウトされ、鳴り物入りでAppleに加わったはずの大物幹部がわずか5年で退社、というのはやはり只事でないことに感じられる。またAhrendts氏本人の先の身の振り方も不明で、外部の多くの人間がすんなり納得するような後任も決まっていないとなれば、なおさら奇異な感じがする。
そんな疑問から調べてみてわかったことを今回は記す。「おそらくこれが退任の主要因だろう」と思わせる説得力のある材料は生憎と見つかっていないが、Apple(社内)の現状を知り、この先を考える上での材料としては面白いと思う。
まずAppleの経営陣(最高~責任者、いわゆるCクラス)は滅多にやめない。具体的には下記の通りで、Tim Cook氏が正式に最高経営責任者(CEO)になってからの約8年余り(2011年秋~現在)で5人しかない。
事実上辞めさせられた人
自己都合の「勇退」
Mansfield氏の場合は「(もともとソリの合わなかった)Forstallなんかと一緒にやってられるか!」と見切りをつけた、というのが後になってわかったり、Forstall氏を追い出したCook氏がそのMansfield氏を呼び戻したり、といった経緯もあったが、そのあたりは今回は関係ないので割愛する。
いずれにしても、AppleのCクラス幹部は総じて在任期間が長い。そしてそれらの幹部と比べると、Ahrendts氏の5年という在籍期間は明らかに短い(「外様」の、しかも華やかなファッションの世界に慣れた女性にとっては、シリコンバレーのボーイズクラブは決して居心地のいいところではなかったのかもしれないが……)。またAhrendts氏がまだ58歳で(実績のある経営者としては)引退という年齢でもなく、事実Appleの発表のなかにも「新たな職業人としての可能性を追求するため」といったことが書かれてある。そういうAhrendts氏の退任が上記のどちらに当てはまるのかはまだわからない。
つぎに、Ahrendts氏の手腕を示すリテール部門の業績も悪そうにはみえない。BloombergのApple番記者Mark Gurman氏の記事には、「Ahrendts氏のもとでApple Store(実店舗)の単位面積当たりの平均売上は2013年の4640ドル/平方フィートから(現在では)同5600ドル以上に増加」とする市場調査会社eMarketerのデータが引用されている(ただし、売上高が前年を大きく下回った2018年10-12月期のことはわからない)。
なお、Bloomberg Technologyの動画のなかでGurman記者は、後任に指名されたDeirdre O’Brien氏という女性幹部はもともとオペレーション畑が長く、Cook氏の信認も厚い人、などと話している。だとすると、Cook氏〜Jeff Williams氏(最高執行責任者:COO)というラインの生え抜きということだろう。
ただ、従業員十数万人規模の巨大企業で人事責任者と小売部門の責任者の二足の草鞋というのはいかにも負担が重いと仮定すると、これはCook氏(もしくはWilliams氏)が部分的にO’Brien氏の負担をカバーするということか。あるいは、もう一歩踏み込んで推測すると、Cook氏が直轄に近い形でリテールをみるという可能性も思い浮かぶが、これは現時点で根拠のない憶測にすぎない。
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