損害保険ジャパン日本興亜 執行役員ビジネスデザイン戦略部長の中村愼一氏は「Anycaはシェアはあるが、まだ黎明期」と説明する。
DeNAとSOMPOホールディングスが組むメリットの一つは、両社が持つビッグデータの活用だ。Anycaの運用実績をもとに、人気の車種やエリアなどを割り出せる。人気のエリアの1位は千代田区だ。人気の車種1位は、BMW/3シリーズだという。人気第2位の「新宿区」で人気第3位の「トヨタ/アルファード」オーナーの受取金額は平均月3万9000円という。
一方のSOMPOホールディングスは、自動車保険で1300万件の加入者がおり、さらに所有する車種や使用頻度、エリア、使用年数などさまざまなデータを持っている。
たとえば、新宿区在住でアルファードを保有する自動車保険の加入者に「月4回貸すと、平均で3万9000円受け取れると提案できる。さらにお客様が高齢でなかなか乗る機会がない人にリコメンドしたり、自分でAnycaの登録ができない人には保険代理店が代行登録したりできる。保険を辞めた人も把握しているので、手放した人にはその周りの地域でAnycaで乗れますよ、とリコメンドしてドライバーを増やすことができる」(中村氏)と展開を語る。
また、オーナーや利用者にはシェアに対する不安があるケースが多いが、リアルな保険の販売網を活用できるのも強みの一つだ。
シェア料金の20%は一日自動車保険料だという。また、ドライバーの50%は保有車両があることから、クルマのオーナーには他車運転特約を適用するなど、合理的な保険設計ができるという。さらには、シェアしている時間はクルマに乗らないことを考慮することで、シェアすると保険料を割り引くしくみも考えられるとした。
ディー・エヌ・エー 代表取締役会長の南場智子氏はAnycaについて、「時代を象徴する要素がある。なにをもって自己表現をするか。昭和の時代は所属や持ち物で自己表現をする時代だった。平成にインターネットが普及して、SNSによって持ち物ではなく、なにをしているのか、だれとつながってどんな時間を過ごしているかで自分を表現していく時代に様変わりした。クルマの所有から利用へという変化も、大きな潮流がある。大きな変化なので、DeNA単独では限界がある。力強いパートナーと共同で推進する」と語った。
また、「クルマのライフスタイルを変える上で最大のボトルネックになるのは不安。不安を取り除くことが大きな世の中を変えていく上で重要になる。不安を解消することに長く実績と信頼のあるSOMPOホールディングスと組むことにした」と説明した。
今回の事業提携の発端は、2017年12月に奈良県で行われたイベントのパネルディスカッションに南場氏とSOMPOホールディングス 国内損害保険事業オーナー取締役兼損害保険ジャパン日本興亜 代表取締役社長 社長執行役員の西澤敬二氏が登壇したことだったという。
「経営者としての考え方に共感したと同時に、これほどまでに盤石な経営基盤がありながら夜も不安で眠れないことあると聞き、自分はまだまだ甘い、もっとこの人から勉強しなければと思った。オフィスに遊びにいき、経営の話を聞き、いろいろな悩みを相談したりするうちに、事業に関するビジョンを共有していると確認できたので、共同で事業を推進することにした。従って私自身も思い入れの強い事業」と語った。
一方の西澤氏も、「デジタルのテクノロジの進化はおそらく世界の産業構造を変えていき、潮流を変化させていくと考えている。その変化こそがさらにわれわれのグループを成長させていくチャンスになる。2017年から2社で交流を重ね、お互いに事業のビジョンや想いを共有させてきた。強みを生かした事業が可能と確信に至った。DeNAにはいろいろな強みがある。なにより素晴らしいと思っているのは、挑戦する企業文化。DeNAとともに協業することはグループにとってもさらなるチャレンジになる」と語った。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス