ソフトバンクが考える新規事業開発、3つのポイント - (page 2)

各業界大手と展開し始めたユニークな共創プロジェクト

 以上の建設や保守の例で見られるように、物流、サービス、小売、製造、医療など、どの事業カテゴリーにおいても「人不足が共通した課題」になっていると同氏。これをテクノロジで解決することが同事業部の目指すところであり、新規事業として他にもさまざまな取り組みをスタートさせている。

 再び例として挙げたのは、地方自治体とも連携しながら村田製作所と共同で行っている道路メンテナンス作業の効率化に向けた検証。道路補修の必要性の判断は、現在のところほとんど人の目に頼っている状況だ。ソフトバンクはその代わりに、車両に搭載した振動センサーやカメラによって路面データを収集し、AIなどで画像解析する仕組みを用いて効率的なメンテナンスを実現しようとしている。準天頂衛星システムみちびきによる高精度な位置情報データも活用することで、データ収集できているのが特徴だという。

村田製作所と共同で行っている道路メンテナンス作業の効率化
村田製作所と共同で行っている道路メンテナンス作業の効率化

 また、住友生命とは、同社が2018年秋から提供を始めた「Vitality」という保険において、ソフトバンクのプラットフォームと連携させる形で協力している。Vitalityは、身に付けたウェアラブル機器でユーザーの運動の状況や健康状態を常にチェックし、そのデータに応じて保険料が変動するユニークな「健康増進型」保険。ユーザーの運動状況に応じて無料ドリンクの提供やスポーツ用品の割引といったリワードを得られるようにしているのもポイントだ。

住友生命と共同で取り組んでいる健康増進型保険「Vitality」
住友生命と共同で取り組んでいる健康増進型保険「Vitality」

 さらに住宅設備大手のLIXILとも共同事業を検討している。福岡にあるヤフオクドームで2月1日から実証実験としてスタートしたもので、ドーム内にあるトイレの利用回数や利用時間、便座・温水の温度、空室状況などをセンサーで取得することができる。今後は取得したデータを施設全体の人流・設備・店舗データなどと連携して、個々のトイレの状況を監視する。トイレに異常が発生した際に、迅速にメンテナンスできるよう清掃担当者が常にチェックしているという。商業施設において、トイレのトラブルは利用客に対するイメージ悪化につながり、客離れを招きかねないことから、こうしたシステムのニーズは高いと判断したようだ。

LIXILのトイレをセンサーで監視して、清掃やメンテナンスを迅速に行う
LIXILのトイレをセンサーで監視して、清掃やメンテナンスを迅速に行う

 スマートフォンをホテル客室に設置するレンタルサービスを提供しているhi Japanとの提携、出資も行った。日本を含む世界中のホテルに展開しているサービスで、宿泊者であれば客室に備え付けのスマートフォンを自由に使うことができる。多言語対応のコンテンツで現地の旅行情報が得られるだけでなく、国際電話やテザリングも無料で利用でき、スマートロックなどのルームコントロールも可能。これによってホテルのフロント業務の軽減にもつなげられる。

 ホテルのチェックイン時にはクレジットカード情報を登録することが多いため、客室にあるこのスマートフォンにひもづけることも不可能ではない。将来的には移動交通費や外のレストランでの食事代金などもすべて“部屋付け”にすることも考えられる。PayPayなどのスマホ決済も組み合わせれば旅行中に現金を扱う必要もなく、タクシーの配車サービスでさらに移動を便利にしたり、周辺店舗への送客を促進したりすることも可能だ。こうした将来性も見越したうえで、ソフトバンクは単なる出資にとどまらず、hi Japanとの協業・共創という道を選んだという。

hi Japanが提供するホテル客室に設置するhandyスマートフォン
hi Japanが提供するホテル客室に設置するhandyスマートフォン
将来的にはホテル外での料金支払も“部屋付け”にできるようになるかもしれない
将来的にはホテル外での料金支払も“部屋付け”にできるようになるかもしれない

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