ソフトバンクが考える新規事業開発、3つのポイント - (page 3)

内製にこだわり、パートナーもフラットな視点で決める

 2001年にはADSLによるブロードバンド事業のYahoo!BBを、2004年には固定電話サービスのおとくラインを開始し、さらにVodafone Japanを買収したことによる2006年の携帯電話事業開始など、単純に新規事業として取り組むだけでなく、「新しいテクノロジを新しいビジネスモデルでスケールさせる」ことで成長を続けてきたソフトバンク。この過去の経験も踏まえて、デジタルトランスフォーメーション本部では3つのポイントを前提として新規事業を開発している、と河西氏は話す。

 1つ目は「内製にこだわった体制作り」。同部署の120名のスタッフのうち65%は営業職、エンジニアの人間が占めているが、これは「イノベーションは現場にある」というポリシーを元にしているためだという。多様な業界に属する協力会社の人たちと接する営業スタッフこそが、市場ニーズをいち早くつかみ、素早い事業検討を可能にする原動力となる。そして、エンジニアの力で協力会社とともにスムーズに新しい事業を開発していけるのも強みだ。とはいえ、スタッフのほとんどが新規事業については「素人」。そのため、20種類以上ある同社の研修プログラムをフルに活用しながら日々スキルを高めているという。

 2つ目は「0→1はやらない!自力より共創」。ここまでソフトバンクの新たな事業を見るとわかるように、どれも例外なく他社との協力、共創で成り立っている。「新しいものを作り出すのは1社だけでは難しい」というのが河西氏の持論だ。実際、同部署ではこれまで450ほどのアイデアが生まれたものの、実際に進んでいるプロジェクトはそのわずか2%に止まる。アイデアは生まれても、事業化まで進めるのは想像以上にハードルが高いのが実情だという。

 したがって、自力で新事業の検討から始めるような「“0→1”は絶対にやらない」を徹底する。あくまでもソフトバンクのコアは通信事業であると自覚したうえで、オープンイノベーションの形をとり、ビジョン・ファンドのビジネスモデルも参考にしながら、パートナー企業と共創することで「今ある0.1や1を、100や1万にする」という方針で進めていると話す。

デジタルトランスフォーメーション本部が立ち上がった直後は、このような「0→1」のアイデアもプロジェクト化したが、多くが失敗に終わったという
デジタルトランスフォーメーション本部が立ち上がった直後は、このような「0→1」のアイデアもプロジェクト化したが、多くが失敗に終わったという

 最後の3つ目は「フラットに見つけるパートナー」。スタッフのおよそ半数が営業職ということもあり、取引先との深い付き合いも少なくない。こうした関係性のある相手だけと物事を進めると、「営業側の意向に沿った、属人的なものに引っ張られて(システムの)供給が進んでしまい、全くうまくいかない」ことになるという。そのため、協業や出資に関わるパートナー選びは、企業規模は関係なしに、フラットな視点で見つけるようにしているとのこと。

 以上3つを基本コンセプトに、同事業部では現在、パートナー120社以上と40以上の共創プロジェクトを進めている。河西氏は、「われわれだけでやったことはすぐに他社にまねされて世の中に出てくるだろう。それよりも各業界の“尖った”企業様と共創の形を取って、両者のアセットを出し合いながら、日本の社会課題の解決に向けて新しい事業をつくっていきたい」と結んだ。

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