ある高校生がこんな言葉をつぶやくのを聞いた。「友だちのアカウントが何だかおかしかったから、『誰かとアカウント共有してるのかな』と思った」。この発言に驚く大人は多いだろうが、若者の間では特に問題とされない。
若者の間では、様々なアカウント共有が一般化しつつあるためだ。若者たちの間におけるアカウント共有の実態と危険性についてご紹介したい。
「Netflixのアカウント共有しない?」。Twitterではそのような投稿は少なくない。大学生の間で、友だちを集めてアカウントを共有する学生が増えているのだ。
2017年のロイター/イソプス調査によると、定額動画配信サービス利用中の18〜24歳の21%が、同居家族以外のユーザーのログイン情報でNetflixやHuluなどにログインしたことがあるという。もちろん別居している家族のアカウント情報でログインしたユーザーもいるだろうが、中には友人などとアカウント共有しているユーザーも多いと考えられるのだ。
動画配信サービスの多くは、複数の端末からログインして利用できるようになっている。ただし規約によって、たとえばHuluは「お客様のHuluサービスアカウントは1つの時点において1つのみの同時ストリーミングに限定されることにご同意いただくものとします」と明記されており、多くのサービスは個人・家族利用に限定されていることが多い。
一方でNetflixの場合、プレミアムプランなら1800円で4台まで同時視聴可能となる。通常、1つのアカウントを共有すると、自分の視聴履歴などが見られてしまう上、使いづらくなる。ところがNetflixでは、アカウントとは別にプロフィールを作成し、視聴履歴やマイリストなどが管理できる上、友人とのシェアも規制されていない。
うまく友人を集めることができれば、1人につき月額450円と格安で動画配信サービスを楽しめてしまうというわけだ。「みんなお金ないし、動画は見たい。だからシェアしまくってますよ」と大学生たちは言う。彼らにとって安くなることは正義だ。シェアリングエコノミーが流行しているが、サービスもシェアする時代になってきているというわけだ。
気軽な気持ちでゲームのレベル上げ代行を依頼する大学生もいるようだ。多くの場合、自分のログイン情報を伝えて代わりに強くしてもらうことになる。ところがログイン情報を教えてしまうので、レベルが上がる代わりにアカウントを乗っ取られてしまうケースも少なくない。
逆に、すでにレベルの高いアカウントがフリマアプリなどで売られていることもある。Twitterでも、「#荒野行動アカウント販売」「#荒野行動データ販売」などのハッシュタグでアカウントが売られている。「引退する引退垢なので格安です」などと書いてあり、衣装・スキンなども整っている状態だ。
ところが、そのようなアカウントを買ったある男子高校生は、「安くアカウントを買ったつもりだったのに詐欺だった。共有垢だった」と落ち込む体験を教えてくれた。そのアカウントでプレイ中、他の人がログインしてきて強制終了となってしまったそうだ。つまり、相手は複数のユーザーに同じアカウントのログイン情報を販売していたというわけだ。
高校生や大学生などでは、友だち同士で荒野行動などのアカウントを共有し、協力してプレイすることもあるという。「友だち同士なら気にしないですよね?」という。
大人から見ると、ログイン情報を他人に教えてしまうことも、Twitterやフリマアプリなどでデータを購入することも奇異に思える。アカウントの共有やデジタルデータ販売が当たり前となっている、今の若者たちならではの被害と言えるのかもしれない。
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