AppleはiPhoneに偏重したビジネスからいかに脱却するかが2019年のテーマだろう。しかし既にその芽はたくさん用意されている。
決算書のカテゴリで言えば、四半期の売上高が100億ドルを上回ってくるであろうサービス部門。Apple Payは加盟店が増え、対応する銀行が増加し、世界一のモバイル決済数から手数料収入が得られる仕組みを構築した。またApp Storeは依然として競合となるモバイルアプリストアGoogle Playよりも倍近くの決済額を維持しており、業界をリードしている。
有力な番組やプロデューサー、映画スタジオ、アニメキャラクターなどと契約を結んでおり、2019年にも開始されるとささやかれる映像エンターテインメントサービスは、あるいは米国のケーブルテレビ市場を大きく侵食することになるかもしれない。
またウェアラブル部門は現在最も成長が著しい分野だ。AirPodsは2年たっても作っただけ売れ続ける状況だし、毎年アップデートしているApple Watchは5年目にして初めてデザインを刷新し、ついには心電図計測機能まで内蔵した。先述のエンターテインメントサービスは、Apple TVのビジネスを加速させるための有力な材料となるだろう。
ビジネス分野の視点から見てみると、Appleが現在iPhoneを核としたユーザーベースを背景に取り組めるサービスとして、エンターテインメント、金融、健康・医療といった分野がある。この中で、Appleだからこそ扱えると目されるのが医療分野だ。その背景にはプライバシーに対する厳格な態度がある。
既にAppleは、HealthKitを各医療機関のシステムとデータ連携させる仕組みを用意している。またApple Heart Stadyでは、スタンフォード大学と組んで、Apple Watch装着者の心拍パターンのデータを膨大に集め、最新のApple Watchには頻脈・徐脈といった府営脈のパターンの検出に役立てている。また心電図の臨床データとしての活用も指摘された。
そうした取り組みは一見地味に見えるが、医療の世界では重要なプロセスに含まれている。そして、その成果がデバイスやプラットホームへの理解や信頼性の獲得につながっている。
例えばジョンソン・エンド・ジョンソンは、Apple Watchを活用した心房細動の診断化以前の研究に乗り出した。重大な疾患につながる心臓の動きを早く診断する手段を開発することで、ユーザーに正しい医療の選択や正しい生活習慣の獲得を目指せるようにするという。
またAppleは、Apple Watch購入の補助金を提供するよう、米国政府が直轄する高齢者向け医療保険制度「Medicare」に申し入れたことが明らかになった。2018年モデルのApple Watch Series 4は399ドルからだが、転倒検出と緊急通報が連動した機能や、心電図計測機能が搭載されており、高齢者にとってメリットの大きなデバイスと言える。
医療や健康と紐付いたデバイスとしてApple Watchの地位を確立することは、ユーザーをiPhoneのプラットホームに強く結びつけられるようになる。通信キャリアによる販売施策とは異なるユーザーとの関係作りが可能になる点で、Appleが健康分野を強化したい考えが透ける。
高齢者の「Apple Watch」購入に補助金を--アップルがメディケア提供元と交渉か(1/17)Appleと通信チップ大手Qualcommとの間には、iPhoneに搭載する通信チップのロイヤリティを巡って係争状態にある。AppleはQualcommが課すロイヤリティが高すぎると考えており、また世界中で公正取引に反すると判断されているチップと知的財産のライセンスの抱き合わせによる提供に対しても反論してきた。
2018年モデルのiPhoneからはQualcommのチップを搭載するiPhoneが姿を消し、全てIntel製のチップが搭載された。そのことからも、AppleとQualcommの関係性が冷え込んでいることが外部から見ても明らかだった。
AppleのCOO、Jeff Williams氏は、AppleがQualcommを提訴した裁判の証言に1月14日に立ち、裁判を提訴して以降、QualcommがAppleに対するチップ供給を拒否し、設計のサポートも受けられなくなったことで、困難が生じていたことを明らかにした。
スマートフォンは間もなく10Gbps以上の通信速度を実現する5Gの時代に突入し、新たな通信チップの設計が不可欠なタイミングとなる。Qualcommも5G技術では重要な役割を持っており、このまま関係が悪い状態が続くと、iPhoneの5G対応で他社から大きな遅れを取る危険性につながる。
Reutersは、Appleが5Gを見据え、通信チップについて韓国Samsungや台湾MediaTekのチップを2019年のiPhoneに採用することを検討しているとの証言が、同裁判であったことを伝えた。また、Qualcommの本社がある米国カリフォルニア州サンディエゴでの採用活動を強化するなど、Appleが独自にモデムチップを開発する動きもみられる。
Qualcommとの関係のもつれはライセンス料とチップ供給の抱き合わせに起因しているが、この関係を変えようとしているのはAppleであり、自社製品にアドバンテージを与えられる独自のチップ開発を目指していることは想像に容易い。
クアルコム、最新「iPhone」へのチップ供給を拒否--アップルが主張(1/15)CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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