「食を通じて世界中の人々をHappyに」を合言葉にするRetty。同社が運営する実名口コミグルメサービス「Retty(レッティ)」は、2018年11月に月間利用者数4000万人を突破した。群雄割拠するグルメサービス市場において、2019年以降はどこが差別化のポイントとなるのか。同社CEOの武田和也氏に聞いた。
——Rettyの利用者数が4000万人を超えました。成長の要因は何だと考えますか。
2011年6月からRettyを提供していますので、約7年半が経ちます。最初の数年は口コミを集めていましたが、100万件数に達した時点で、今度は閲覧者を増やす施策に注力し始めました。さらに数年間を経て飲食店への課金といったビジネス側の成長と、サービス品質の向上の両方に取り組んできました。
2017年ごろはGoogleのアップデートの影響を受けたりと、多様な理由で伸び悩んだ時期がありました。グルメサイトは顕著にSEO効果が現れます。ただ、SEO対策だけでは各社の成長も鈍化し始めているため、我々はRettyを使って飲食店を訪れる利用者の増加施策や、大手企業との提携を通じて利用者増を目指してきました。
特に力を注いだのが、飲食店への送客でした。Rettyから飲食店へ訪れた数を重視するため、オンライン予約を強化しています。2016年から開始したサービスですが、2018年はカレンダー表示から予約在庫状況の確認を容易にしました。その結果、オンライン予約の導入店舗数は前年同月比で4倍、月間予約者数は同10倍まで成長しています。
オンライン予約は利用者側だけに施策を広げても伸びません。もちろん利便性の向上も重要ですが、大事なのは飲食店側。Rettyに予約在庫を正しく提供し、利用者が予約を終えたら予約在庫を減らすといったオペレーションが負担になるため、両者をセットで提供することでオンライン予約が成功します。
もちろんヤフーとの戦略的パートナーシップ構築も大きいのですが、サービスの充実からアプリ利用者のUXの向上と利用者数の増加戦略を重視した結果が、4000万人という数字につながったと考えています。(利用者数の成長ペースに対して)おおむね想定どおりのペースでしょうか。我々はまだまだ成長できると考えており、5000万人、6000万人は当然ですが、現在の2倍(8000万人)程度まで拡大できると思います。
——Rettyはいまどのようなユーザー層に利用されているのでしょうか。
スマホユーザーが圧倒的ですね。7〜8割がスマホ経由(ウェブとアプリの合算)でRettyをご利用いただいています。年齢層もデモグラフィック(人口統計学的属性)観点で見ると20代後半から30代が多く、男女比も55%が女性ですね。今までのグルメサービスで「飲食店を見つけられない」という課題をお持ちの方にご利用いただいているのではないでしょうか。他方でフードテックは多くの問題を抱えてきましたが、Rettyのように実名のユーザーを信頼し、そこから情報を得ることで飲食店に訪れる方が多く集まっています。
投稿者と閲覧者のバランスについては、他社のサービスと同様に閲覧者が圧倒的に多く、投稿される方はそこまで多くはありません。ただ、特定のグルメ情報に詳しい投稿ユーザーを我々は「Retty TOP USER」と称していますが、着実に増加しています。
Rettyでは投稿に対して「いいね」「行きたい」といったフィードバック機能を用意しています。周りのユーザーからグルメと思われるだけではなく、どれだけ多くの人に役立ったか。自身が得意とする領域で感謝と同時に認められることが大事だと考えています。前述のとおり投稿者は実名のため、ソーシャルに対して能動的な方が少なくありません。Retty内でも食のコミュニティーが出来上がり、頻繁に飲み会が開催されています。この「つながり」が他のサービスとの大きな違いですね。
——Rettyの現状のビジネスモデルについて教えてください。
収益源は3つあります。1つめは飲食店から月額数万円をいただいて、年単位で更新する「飲食店向け課金」。2つめはタイアップ広告やアドネットワークによる「広告収益」。最後は外部のパートナーに対してコンテンツを提供して収益を得る「アライアンス」です。具体的な数字は明かせませんが、2018年の収益は大きく躍進しました。日本全国に何十万とある飲食店に直接営業するのは難しいため、代理店にお願いしていますが、その代理店数を増やしています。これまでは東京が中心でしたが、大阪や福岡にも拡大しました。
もちろん飲食店向け課金は解約もありますが、月間獲得件数が積み上がり、急カーブを描くように成長しています。まだ数千店舗ですが、他のグルメサービスは数万店舗を抱えているため、今は拡大フェーズですね。
飲食店さんは各グルメサービスを併用していますので、それらを代替せずにRettyを追加して使っていただくケースが少なくありません。飲食店さんが各サービスを併用する理由ですが、満席にならない店舗は、各サービスを導入することで来客数や売り上げの増加につながります。ただ、オンライン予約などのオペレーションを飲食店側に強いる仕組みではビジネスは拡大しません。その部分をフォローしつつ、弊社などの広告出稿で顧客が増加して、その結果が可視化されるようになれば(ビジネスの)拡大につながると思います。
2019年は飲食関連の新規事業を計画しています。Rettyの強みを生かしたものですが、事業内容は大きく異なり、4月ごろの発表を予定しています。Rettyの成長余力は充分にありますが、新規事業の立ち上げは時間を要するため、現段階から準備しなければなりません。安定している今だからこそ、次なるモノを仕込むことが全社的な観点から見て重要だと判断しました。一言で言えば、「世の中の事業に対するトレンド感と企業のフェーズという2軸」で決断しています。
——飲食領域は店舗の入れ替わりが激しく、また店舗によってITリテラシーにも差がある特殊な業界と言えます。ここにテクノロジーがどう生かせると考えますか。
飲食店は年に10%が入れ替わる、スタートアップ以上に厳しい業界と言われてきました。初期投資も大きく、出店も継続もハードルが高いため、我々も新規事業の部分で支援したいと考えています。継続性を維持するにはリピーターの存在も欠かせません。各グルメサービスも新規ユーザー獲得を重視していますが、リピーター獲得には飲食店側の努力や一定水準が必要不可欠です。たとえば、最近の若い飲食店経営者は、FacebookやInstagramなどSNSを通じた情報の拡散を活用しています。この課題に対して我々も、飲食店向けサービスを進化させなければなりません。
また、グルメサービス市場自体が、今は体力勝負になっています。我々もスタートアップですが、当時は新規参入することが容易でした。現在はそうではありません。特に今はオンライン予約が基盤となるため、この1〜2年は利用者と飲食店へのリーチを必要とする難しい市場になったと感じました。
——2018年は、Instagramでレストラン予約が可能になったり、チャットで飲食店が予約できる「ビスポ!」などの新サービスも登場しました。こうしたグルメ予約市場の動きをどう見ていますか。
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