Facebookの内憂外患--ザッカーバーグCEO、ついに「裸の王様」に? - (page 2)

Sandberg氏がはじめて槍玉に

 Sandberg氏というとこれまでは対外的に悪いイメージがほぼなかった人物だと思う。Facebook内部での役割は「若くて未熟な最高経営責任者(CEO)を監督・サポート」する『大人の監督役』(="adult supervision"の提供者、かつてのGoogleでのErich Schmidt氏と同じ立場)というのは、CNET読者のみなさんはすでにご存じのことだろう。また、対外的には「ハーバード大卒業の才媛」「Lawrence Summers氏(元財務長官)の秘蔵っ子」「初期のGoogleで検索ビジネスを作り上げた中心幹部のひとり」「働く女性の自立(?)を訴えたLean-Inムーブメントの提唱者(=キャンペーンの主導者)」、そして「夫を亡くした後も頑張り続けるシングルマザー」といったポジティブなものが専ら。そして2年前の米大統領選以降は、Zuckerberg氏に批判が集中するなか、簡単にいうと「なりを潜めている」。Zuckerberg氏の名代として連邦議会の公聴会に出席した時くらいしか表に出てくることはなかったと思う。

 今回のNYT報道で、そんなSandberg氏の経営者としての能力あるいは信頼性に大きな疑問符がついた。一連の政治がらみの軋轢がZuckerberg氏の手に余る問題であることがはっきりしつつある現在、これはFacebookにとってかなりの痛手ーー後になって効いてくるボディーブローと思える。つまり、Zuckerberg氏はもともとあまりあてにならず、またSandberg氏も信用できないとなれば、だれかほかの人間がFacebookを監督しなくては……という方向へ世論が流れて不思議はないということだ。

 なお、NYT報道を追う形でWSJが出したFacebookに関する記事のなかでは、Sandberg氏が管轄する分野での取り組みの遅さにしびれを切らしたZuckerberg氏が2018年春にSandberg氏を叱責し、2人の仲がギクシャクしていたという話も出ていた。Zuckerberg氏は感謝祭前に行ったCNNとのインタビューでSandberg氏を擁護する発言をしたことが伝えられているが、決して一枚岩とは言えない状態である可能性も思い浮かぶ。

株価下落、幹部流出、従業員の士気低下

 Facebookの「内患」については、すでにこれまで各所で報じられているとおりで、2018年夏に業績がしばらく好転しないとの見通しをZuckerberg氏らが発表し、株価が急落。そしてその後も株価の下落はとまらず、現在の株価はピーク時の約3分の2程度まで下がってしまっている。またFacebookが買収したInstagramやWhatsAppの創業者たち、それにFacebookでセキュリティ責任者だったAlex Stamos氏といった幹部が相次いでFacebookを離れたことも既報の通り。さらにFacebook従業員の士気が目に見えて下がっている(Cambridge Analytica騒動の直後にはそれほどでもなかった)との報道もあったが、世間からは悪く言われ続け、会社の上層部はゴタゴタし、ストックオプションも塩漬状態となれば、従業員がやる気をなくす、会社に見切りをつけるのもやむを得ないことに思える。

Warner議員「Facebookの分割は『最終手段』」

 なお、前述したWarner議員は、2018年夏にシリコンバレー大手の規制に関して20種類くらいの選択肢を挙げたホワイトペーパーをまとめたことがニュースになっていた人物だが、10月半ばにThe Vergeが掲載していたインタビューのなかで同氏はFacebookの分割について「最終手段」と答えていた。Facebookのような多国籍企業になると話がややこしいーー米国内だけでどうこうしようとしてもらちがあかない、という早まった説明を同氏はしているが、同時にFacebook分割がありえないとは言っていない。これは、Zuckerberg氏が米政府によるなんらかの規制について早めに妥協点を見つけなければ、最終手段に訴える可能性もある、ということだろう。

 Zuckerberg氏には、Facebook株の6割を超える議決権という例の強力な盾があるが、それを使って抵抗を続けようとすればするほど、分割という最悪の事態に行き着く可能性が高まる、と言えなくもない。

 なお、Facebookの分割という可能性=規制の方法については、「ネットワーク中立性」の問題で名前を売ったTim Wu氏などが以前から口にしているもの。独占的大企業の分割というのは、実際にそこまで話が進んだStandard OilやAT&Tの例もあれば、そこまでいかなかった(妥協して分割を回避した)Microsoftのような例もある。現時点ではFacebookに関する話がどこまで進むかは不明だが、市場(この場合は欧米の市場)にFacebookを牽制できるような競合他社がいないことから、「同社を分割して……(新たに競合状況を作り出す)」という声が上がるのは自然なことだろう。

 米政界では、年が明けると、さっそく次の大統領選(2020年11月)に話題の焦点が移る。次の選挙で2016年の二の舞は避けたいというのは関係者全員にとって自明のことで、そのためにはFacebookをできるだけ安心できる存在にしておかないといけない。またその点についてはFacebook側でもよく承知しているようで、現在進めているフェイクニュース対策などの取り組みについて2019年中には完了し、なんらかの成果を示したいとしている。2019年は連邦議会とFacebookのどちらにとっても時間との戦いになりそうな雲行きである。

【参照情報】

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