INCJは11月1日、大企業に埋もれているビジネスアイデアの早期事業化に取り組んでいるBeeEdgeに、3億8300万円を出資すると発表した。
INCJは9月に産業革新機構から分割する形で発足した官民ファンド。そしてBeeEdgeは、3月にシリコンバレーを拠点とするベンチャーキャピタルであるScrum Venturesとパナソニックが共同出資で設立した合弁会社だ。パナソニックのアプライアンス社で埋もれているビジネスアイデアを引き取り、早期事業化につなげる活動を続けている。
INCJによると、大企業では有望な新しいビジネスアイデアがありながら、事業規模が小さい、社内に引き受ける部署がないなどさまざまな理由で事業化に持ち込めず、せっかくのアイデアを埋もれさせたままにしていることがよくあるという。その理由について、BeeEdge代表取締役社長の春田真氏は、「組織が肥大化し、意思決定が遅くなってしまっている。さらに、守るべきものが多くなり、何を考えるにも保守的になりがち」という大企業の多くが抱えている問題を挙げた。
春田氏が指摘した問題はパナソニックも認識しており、パナソニックのアプライアンス社も、量産規模が小さいなどの理由で事業化に至らなかった有望なビジネスアイデアを埋もれさせているという。
パナソニックはさらに、ビジネスの形態を「モノからコトへ」変革したいという思いを抱いていた。そこに「家電」+「サービス」という形態の事業に大きな期待を寄せているScrum Venturesが現れた。両社は、サービスを重視するという点で考えが一致した。そしてScrum Venturesは日本人の起業家が少ないことを歯がゆく思っており、北米で得た知見を日本に広めたいと望んでいたという。こうして、BeeEdgeの設立に至る。
BeeEdgeは、パナソニックという大企業が育てた人材が作ったビジネスアイデアの中でも、さまざまな事情で事業化できなかったものを個別に引き受けて事業会社を作る。そして、その会社の社長は原則としてパナソニックの社員に任せる。BeeEdgeは事業会社を成長させるために出資や助言などの形で支援する。事業会社が十分に成長したら、BeeEdgeはその会社の株式を売却して利益を得る(エグジット)。
ここで重要になるのが、設立する事業会社が小規模であるという点。大企業の量産規模と意思決定のスピードでは実現できなかった有望なビジネスアイデアを、小規模なチームが短期間で事業化して利益を得ようというわけだ。
そしてもうひとつ、事業会社の社長は原則としてパナソニックの社員が就任するというところも大きなポイントだ。社長となる人材は、パナソニックを最長で5年間休職して事業会社の経営に当たる。大企業が育てた人材を起業に導くことで、起業家を少しでも増やそうという狙いが見える。「日本人の起業家が少ない」と歯がゆく思っていたScrum Venturesの思いが表れていると言えるだろう。
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