人工知能(AI)に対する熱狂が高まっているので、ほかでもないGoogleクラウド部門のAI責任者に冷や水を浴びせてもらおう。
GoogleのCloud AIグループを統括するAndrew Moore氏は、「現在のAIはとても頭が悪い。AIは人間の脳が処理できない特定のことをやるのは非常に得意だが、類推や創造的思考、極めて独創的な思考などを含む汎用推論をAIにやらせることはできない」と述べた。
もちろんこの発言を聞いて、AIを使うのはばかげているとGoogleは考えているのだと解釈してはいけない。それは事実と異なる。米国時間11月14日に終日開催されたGoogle CloudのイベントでMoore氏がそのような発言をしたのは、AI、特にGoogleの提供する画像認識のようなサービスを顧客に受け入れてもらうためだ。Moore氏は今日のAI技術の限界についてコメントしたにすぎない。現在のAIは人間の脳からヒントを得たニューラルネットワークと呼ばれる技術を利用しており、現実世界のデータのパターンを認識できるように訓練することが可能だ。
それは言語の翻訳や不正なクレジットカード決済の検知、人間のように聞こえるコンピュータ音声の生成など、容易にはプログラムできないタスクに取り組む際に役立つことが多い。
Moore氏のコメントは、AIがスカイネット(映画「ターミネーター」シリーズに登場する架空のAI)に変身して人間をネズミのように狩るようになる可能性だけでなく、AIの限界についても認識すべき時が来たということを、おそらく示しているのだろう。
Sinovation Venturesの最高経営責任者(CEO)で「AI Superpowers」の著者であるKai-Fu Lee氏も、Moore氏に同意する著名な幹部の1人だ。
Lee氏は12日、「Techonomy 2018」カンファレンスで「機械学習における最大のブレークスルーが起こったのは9年前のことであり、それ以来、飛躍的な進歩は起きていない」と語った。
そうではなく、われわれは今でも、当時と同じ技術の活用方法を増やそうとしているのだとLee氏は言う。「われわれは今、電力が発明された段階にいる。電力2.0は実現するのだろうか」
次の段階として可能性があるのは、「教師なし」学習だ。今日のAIマシンは、前もって入念にラベル付けされた膨大な量のデータを使って訓練される。こうすることで、AIはパターンを適切に認識できる。教師なし学習では、生データ(例えば、「Googleマップ」のストリートビューの撮影車が捉えた膨大な数の写真)を用いて学習を行う。
もう1つの長期的な可能性として、汎用AI(GAI)がある。
Googleのクラウド部門のCEO、Diane Greene氏は「GAIに最初に到達した人がおそらく世界で有利な立場に立つだろうと人々は感じているが、それが本当に実現するのかどうかは疑わしい。実現する時期も不明だ」と、同社のイベントで語った。
それでも、今日のAI技術に関して、Moore氏は楽観的な見方をすることに満足している。
「既存のツールセットを使うだけでも、世界の人々の安全性を高め、生産性を向上させるために、われわれにできることは山ほどある」(同氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」