共同飲食用のランチを調理するシェフが常駐し、明るく開放的なワークスペースを備え、さらには冷たいスパークリングウォーターが豊富に用意されたDuolingoのピッツバーグ本社は、ペンシルバニア州南西部ではなく、シリコンバレーにあるオフィスのように思える。だが、人工知能(AI)を利用した語学学習プラットフォームを提供するDuolingoにとって、このGoogleのオフィスのような雰囲気は、テクノロジと業界の変革に対する同社の前進的な展望を反映したものだ。Duolingoは、カーネギーメロン大学の著名なコンピュータサイエンティストでCAPTCHAの開発者でもあるLuis von Ahn氏によって設立された。
急成長するピッツバーグのテクノロジ界の有望企業の1社として、Duolingoは2011年に創業してから、世界で最も大規模な語学学習プラットフォームに成長し、最も多くダウンロードされる教育アプリの1つになった。成功の要因の1つは、同社の中核的なアプリの使いやすさにある。このアプリでは、語学学習を、細かく分かれたインタラクティブなレッスンに分割しているほか、機械学習とAIも取り入れている。機械学習とAIは、同社の製品開発やユーザー維持の取り組みから、採用に関する優先事項および収益戦略まで、ありとあらゆることを主導している。
「高品質な教育を必要とする全ての人に対して、それを提供するという当社の能力に、AIが大きな役割を果たしている。われわれは、教育を、世界中の誰もが無料で簡単にアクセスできるものにするという使命の下、この会社を設立した。その当時、無料で語学を学習する優れた方法はなかった」(von Ahn氏)
DuolingoのAIへの取り組みは2012年、Burr Settles氏を採用したことで、本格化した。Settles氏は現在、同社のリサーチディレクターを務めている。機械学習と計算言語学の経験を生かして、どのようなデータモデルが語学学習で最も効果を発揮するのかを割り出した。最終的に、間隔反復モデルを使用する同社の取り組みを先導することになった。間隔反復モデルは語学教育において、詰め込み型学習よりも、短時間の学習を、間隔をあけて長期にわたって続けた方が効果的だと仮定する。
言語の学習をどの程度頻繁にすべきかというその「間隔」は、Duolingoの立ち上げと、そのゲーム風カリキュラムの中核をなす大事な要素だった、とSettles氏は振り返る。これとは別の初期のAIプロジェクトでは、コースのレベル設定に関する問題に取り組んだ。新たな語学学習者に学習を続けるだけのやりがいを感じさせるために、どのレベルに割り当てるかを判断するという問題だ。
「Duolingoのコースを初めて受講するときは、レベル分け試験を受ける必要がある。そこで、最初は中級~上級の学習者を大勢失ってしまった。彼らには問題が簡単すぎたからだ。AIを利用して、われわれは非常に正確なコンピュータ適応型レベル分け試験を開発した」(Settles氏)
Duolingoのコンピュータ適応型レベル分け試験は、受験者の回答に応じて問題の難易度を自動的に調整する反応型試験である。正解するとより難しい問題が出題され、不正解だとより易しい問題が出題される。このスタイルの試験の最も大きな利点の1つは、少数の質問を基に受験者の能力を素早く評価できることだ。
「(このレベル分け試験の)開発中に、自分たちは語学力評価市場にも参入できるというアイデアが出てきた。従来、こうした評価は非常に面倒であり、開発途上国の人々にとって大学進学の障壁になっている。われわれは、コンピュータ適応型のオンライン語学技能試験を開発することに決めた」(Settles氏)
Settles氏が言及しているのは、「Test of English as a Foreign Language」(TOEFL)試験のことである。TOEFLは、英語圏の大学への入学を希望するノンネイティブの英語話者の英語力を測定する標準試験だ。TOEFLのプロセス(所定の試験センターで試験を受けてから、試験結果が希望の大学に届くまで)は6~8週間を要する。
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