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スマートシティで地域貢献を目指す--パナソニックの街作り

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 朝日インタラクティブは10月4日、都内で最新テクノロジを活用した不動産ビジネスや、都市開発ビジネスの変貌をつまびらかにする「CNET Japan Conference 不動産テックカンファレンス2018~加速する業界変革~」を開催した。同イベントは今年で3回目を数える。本稿では、パナソニック ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 SST推進課 課長 兼 Fujisawaサスティナブル・スマートタウン協議会 事務局長 荒川剛氏の講演内容を紹介する。

パナソニック ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 SST推進課 課長 兼 Fujisawaサスティナブル・スマートタウン協議会 事務局長 荒川剛氏
パナソニック ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 SST推進課 課長 兼 Fujisawaサスティナブル・スマートタウン協議会 事務局長 荒川剛氏

「くらし起点」「地域貢献」の街作りを推進

 近年はロボットやIoT、AI(人工知能)やビッグデータが社会の在り方に影響をおよぼし、その範囲は都市にも広まりつつある。一説には2050年までの都市人口推移を踏まえて、世界人口の7割が都市住民となり、新たな都市環境が求められるという。これらの背景から国土交通省は、8月に「スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】」を発表した。

 従来の個別分野特化型から、「交通」「エネルギー」「医療・建設」など複数分野に取り組む分野横断型の取り組みへ移行をうながし、UNDP(国連開発計画)も以前からSDGs(持続可能な開発目標: 通称グローバルゴールズ)を掲げている。さらに日本政府は次世代構想として、イノベーションを創出し、個々の需要に合わせる形で社会的課題を解決する「Society 5.0」を策定するなど、社会的潮流は変革へと進みつつあるのは火を見るより明らかだ。

 パナソニックはこれらの潮流を踏まえて「これからのスマートシティは『空間の多機能化』や『持続可能な街管理』、エネルギー、セキュリティ、モビリティ、ウェルネス、コミュニティと『5つのスマートなコミュニティの醸成』、『産官学と住人の協業による新規事業創出』が求められる」(パナソニック ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 SST推進課 課長 兼 Fujisawaサスティナブル・スマートタウン協議会 事務局長 荒川剛氏)と語る。

 その上でパナソニックは、街作りのポイントとして「くらし起点のまちづくり」「地域貢献のまちづくり」の2つを掲げた。前者は従来の社会基盤を発想とした開発ではなく、スマートライフの提案からスマートな空間設計に至り、施設を駆動する最小限のインフラを構築していく発想のまちづくり。後者はまちづくりを通じて、地域の価値向上につなげていく姿勢である。1960年代は急速な経済発展に伴う公害問題など多くの課題を抱えていたが、パナソニック創業者である松下幸之助氏の発案により、全国各県に工場を1つ以上建設し、地方の雇用増大に努力した経緯がある。また、1977年には大阪府枚方市に「枚方パナタウン」を造成するなど、パナソニックは事業活動を通じて社会や地域の発展に貢献してきた。

 その考えを基本とし、パナソニックは自社のCRE戦略として、「自社遊休地を活用して、3つの貢献を実現する。単なる土地売却ではなく、工場跡地をまちづくりに活かして不動産価値を高める『財務価値』。まちづくりを通じた先端技術の活用や、多くの団体が関わるまちづくりを通じたパートナーを拡大する「事業価値」。暮らしの課題を解決する「地域貢献」。この3つを通じて、事業や地域、社会のイノベーションを実現する」(荒川氏)という。

 その第1弾となったのが、神奈川県藤沢市で2014年11月にグランドオープンし、2022年完成を予定する「Fujisawa SST」だ。商業施設や集会所、健康・福祉・教育施設、詳しくは後述する次世代物流センターなどを備え、現在の進捗度は約8割だという。Fujisawa SSTは「生きるエネルギーが生まれる街」をコンセプトに、二酸化炭素70%削減(1990年比)、生活用水30%削減(2006年一般普及設備比)、再生可能エネルギー利用率30%以上といった環境目標、ライフライン確保を3日間とCCP(災害発生などの非常時から通常状態までの復旧計画)目標を掲げている。

Fujisawa SSTの概要
Fujisawa SSTの概要

 パナソニックを筆頭に各企業や藤沢市、慶應義塾大学といった産官学、そして住人と多業種企業18団体が参画し、100年続くスマートライフの実現を目指してきた。例えば物流面はヤマト運輸と協力し、荷物を1度Next Delivery SQUAREに集約して、リヤカーによる集配を行う。また、配送日時の変更や受け取り方法の選択、不在通知への対応を行うオンデマンド配送サービスをテレビ経由で行うなど、国内初タウン内二次配送の一元化を実現している。その結果、2016年10月1日に施行した改正物流総合効率化法の第1号として認定され、物流業界でも注目を集めた。

 このほかにも学研とは、エアコンのセンサを活用し、部屋の温度や湿度、介護者の生活リズムを可視化することで、サービスの利便性や品質向上を目指す取り組みを進めている。最終的には、神奈川県と連携しながら、地域包括ケアサービスや住民参加型シェアリングサービスのモデル構築を目指すという。さらにNTTドコモとは、戸建て住宅向け宅配ボックスに次世代のLPWA(Low Power Wide Area)通信ユニットを設置し、IoT化することで、配達や集荷をメールなどで通知する実証を行った。取り組みは2018年6月末に終了したが、その後行ったアンケートによれば、9割以上が継続利用を望んだという。

技術革新に伴って、不動産や街の価値は変化した

 第2弾となるTsunashima SSTは横浜市港北区の網島駅と日吉駅の中間の3.8ヘクタールに、商業施設や水素活用拠点、国際学生寮や集合住宅が集まる。本プロジェクトには12団体および横浜市が参画し、「企業や大学、地域・住民との『共創』によって、持続的な街全体の進化と、イノベーションの創出を目指す」(荒川氏)。パナソニックの取り組みとしては、イノベーション創出を狙いとした交流拠点や共創拠点となる「タウンイノベーションセンター」の用意や、慶應義塾大学と共に事業創出を街に実装するプロセスをパッケージ化することを目指している。

Tsunashima SSTの概要
Tsunashima SSTの概要

 Tsunashima SSTもFujisawa SSTと同様にユニークな取り組みを行っており、その一例が大林組のSCIM(Smart City Information Modeling)を使用して、街全体を3Dモデルでコンピュータ上に再現し、街のあらゆる箇所を一元化・可視化するというものだ。屋内外で温度や湿度、PM2.5(微小粒子状物質)や雨滴といった情報を感知する環境センシングと連携し、屋内では人の密集度や湿度分布を検出することで、空調温度の変更や、コミュニケーションの熱による活性化を可視化する。屋外ではプライバシー保護を実装して、通行人の性別や年齢といった属性を可視化する生活品質向上を目指した実証を続けている。

 パナソニックは各スマートシティプロジェクトと通じて、「社会環境の変化や技術革新に伴って、不動産や街の価値は変化しつつある。今後は空間価値に加えて時間価値が求められる。それらを実現するには1社単独ではなく、幅広いプレーヤーとのオープンイノベーションが必要だ」(荒川氏)と述べ、社会潮流を見据えながら、パートナー企業や行政、大学や住民と共に社会や地域の課題解決に貢献していきたいとの目標を掲げた。

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