日本の不動産テックは、ITも不動産も強い競合型やリブセンスのような補完型、データを使ったプラットフォーマーの合成型などがある。たとえば、不動産情報の取得はしばらく複数のサイト利用が続くだろう。しかし、これまでのIT業界が統廃合や主要メディアの入れ替わりがだいたい5年周期で起こっている。不動産情報サイトも同様のことが起こるだろう。また、不動産業者もIT活用がうまいところに消費者が偏る可能性が高い。
さらに産業構造として規制緩和と新しい取引工程による本格的な変化が訪れる可能性がある。たとえば宅配業の話だが、「Uber Eats」による出前革命が起こっている。これまでは、ピザや寿司など限られた食材だけが宅配され、宅配要員も店舗ごとに雇用していたものが、Uberは宅配員のクラウド人材を担保することで、店舗はご飯だけ提供し、配達はUberが行なう仕組みを作り上げた。これまでできなかった宅配がどんな店舗でもできることになり、宅配専門店などは脅威でしかないだろう。不動産テックによって、これまでになかったことができるようになったとき、対応できるかどうかが鍵となる。
消費者が感じる信頼への変化も起こっている。これまで営業マンの情報が頼りだったものが、クチコミ情報のほうが上回り、さらに人工知能による判断、評価へと変化してきている。消費者は信頼できるものにお金を払う。大手だから安心、ブランドがあるから安心なのではなく、透明性が高いサービスが信頼を得るようになるだろう。
もう1つの問題は分断された国内不動産関連データにある。REINSと法務省、国税庁など、不動産に関するデータが分断されているため、データ収集から申請までが非常に面倒。米国では1つのサイトの中で完結しており、この辺りを統合して行かなければ未来はないだろう。
さまざまなテクノロジが生活の中に浸透してきているが、そのほとんどが海外企業によるものだ。世界的に見てもAmazonによって店舗が駆逐され、Airbnbによってヨーロッパでは廃業するホテルがあとを絶たないという。「外資のようなサービスが日本でも蔓延しないようにグローバルでも劣らない役立つ仕組みを作ることが大切。これからは、データを蓄積することが重要であり、それをどう活用していくかが鍵となる。IT教育にも取り組み、後世の不動産業界に残していかなければならない。このような整ったデータ環境の引継ぎは、今から始めておかないと手遅れになる」と芳賀氏は力を込めて不動産テックの推進の重要性を説いた。
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