総務省は10月2日、次世代のモバイル通信規格「5G」を用いた地域課題解決などのアイデアを募る「5G利活用アイデアコンテスト」の記者説明会を実施。総務大臣政務官の小林史明氏が、コンテストの概要や開催の狙いなどについて説明した。
小林氏はまず、5Gの概要について説明。5Gは現在主流の通信規格「4G」より100倍速いとされる「超高速通信」や、遅延がほとんどない遠隔操作を実現できる「超低遅延」、IoT時代に備え多くの機器を同時接続できる「多数同時接続」の3つの特徴を備えている。ただし、従来の4Gのように、それら3つの要素をすべてのエリアにフルスペックで提供するにはコストがかかることから、場所や特性に応じたエリア設計をしていく形になるとのことだ。
日本における5Gの商用サービスは、東京五輪が開催される2020年からとされている。しかし、米国では2018年から、中国や韓国でも2019年から5Gの商用サービスが開始予定であるなど、提供時期が早まっていることから「日本でもなるべく早くやりたい」と小林氏は話す。そこで2019年に実施されるラグビーのW杯に合わせる形で、5Gに関する何らかのデモを実施したい考えを示すなど、5Gの早期導入に向けた取り組みを積極化している。
総務省では、現在5Gに向けたさまざまな実証実験を、携帯電話事業者などと推し進めている。その狙いについて小林氏は、IoT時代を迎え通信業界の産業構造が大きく変化することを挙げた。
従来の4Gまでの通信規格は移動体通信の分野にとどまっていたが、5GはIoTと密接に結びつくことで、すべての産業がインターネットと融合することになる。それだけに今後は通信だけでなく、さまざまなパートナー企業と連携し、業界を超えたエコシステムを構築する必要があると小林氏は説明する。
5Gに関する実証実験について、2017年は携帯電話事業者主導で実施してきたが、「2018年には日本が抱える社会課題を解決することがビジネスの種になる」(小林氏)として、ICTインフラ地域展開戦略検討会が掲げる8つの課題を意識したテーマを設定し、実証実験を進めてきた。そして今回新たに、5G利活用アイデアコンテストを開催することで、実証実験のテーマを広く公募するに至ったという。
小林氏は「これまでは通信事業者と5Gを実現できるかどうかを実証してきたが、そろそろ5Gを何に使うかという実証実験が必要だ」と話す。社会課題を抱えている人たちから、5Gを使ってどのような問題を解決したいか、オープンな形でアイデアを集めることが大きな目的だという。
そうした考え方は応募条件にも反映されている。アイデアを応募できるのは企業や自治体、大学などだけでなく、個人からも受け付け、年齢制限も特に設けないとのこと。5Gの特長を生かすオリジナルのアイデアであり、地方課題の解決などに役立つものであること、そしてアイデアを検証するための実証方法を提案するといった要件を満たせば、誰でも応募できるのだそうだ。
コンテストでは、10月9日から11月30日までアイデアを募集し、12月に全国各地の総合通信局などで地方選抜を実施した後、2019年1月中に結果を出すとしている。コンテストで賞を獲得し、実証実験に至るアイデアの数に上限はないが、「現実的なところで5〜8個くらいではないか」と小林氏は考えているようだ。
個人が提案したアイデアをどうやって実証するのかという疑問もあるが、小林氏は「システム開発などの座組みをこちらでマッチングする」と話す。具体的には、審査員として加わる携帯電話事業者が、選出して賞を与えたアイデアに対して、共同で実証を進めていく形になるそうだ。
通常の実証実験は、プロダクトを持っているところに座組を組んでもらった上で実施することから、今回のようなオープンにアイデアを公募する形での実証実験は、総務省でも非常に珍しい取り組みになるとのこと。そのため小林氏は、「自由な発想を持った個人や、資本がなくチャレンジができなかったスタートアップ、課題を抱える地方の中小企業など、さまざまな人たちに課題解決のためのアイデアを持ち寄ってほしい」と、コンテストに対する期待を述べた。
なお小林氏は、翌日となる10月3日に実施される、5Gの利用に係る公開ヒアリングについても言及した。5Gには現在、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、そして楽天モバイルネットワークの4社が参入を表明している。5Gでは従来より一層の高速大容量通信を実現するため、帯域幅の空きが広い3.6GHzや28GHzなどといった高い周波数帯の割り当てを予定している。
ただし、その帯域を4社に均等に分けてしまうと幅が狭くなってしまうことから、高速大容量を重視する2社にしか割り当てないという選択肢もあると、小林氏は話す。帯域の割り当ては携帯電話各社の事業戦略に大きく関わってくることから、ヒアリングを進め割り当てについて考えていきたいとしている。
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