パーソナルモビリティを開発・販売するWHILLは9月22〜23日の2日間、電動車椅子「WHILL Model CR」を使ったハッカソンを渋谷のFabCafe MTRLで開催した。
WHILL Model CRは、すでに同社が車椅子として販売している「WHILL Model C(ウィル モデル シー)」の仕様を基本とした研究開発用モデルだ。外部機器から通信方式RS232Cで入力信号を送信することで本体を制御でき、本体の情報(速度、加減速値、エンコーダー情報、加速度センサ値、コントローラー入力情報、バッテリ情報など)を取得できる。自動走行、自動停止、追従走行などのスマートモビリティ技術の開発や、自律ロボット研究のためのプラットフォームとして、2017年12月から販売している。
今回のハッカソンでは、「人とモビリティ」をテーマに、WHILLを題材として、ただ移動のために使う「モビリティ」ではなく、人とのインタラクションで新しい遊びやスポーツなど、新たな体験を生み出せないかアイデアのプロトタイピングを行った。
2日間のプログラムでは、最初に主催者によるオリエンテーションが実施された後、それぞれの参加者が興味のあるプロジェクトに参加。ハッカソンに先立って9月12日に開催されたアイデアソンで選出された5つのアイデアと、ハッカソンで生まれたアイデア1つの合計6チームが結成された。
2日間のハッカソンの終わりには、7チームがプロジェクトのプレゼンテーションとデモを実施し、WHILL Model CRを利用したプロジェクトが披露された。
◇「SHI-RIDER(シライダー)」
自宅など狭い場所でも、映画館ような「4DX」体験をしたいという動機で始まったプロジェクト。ウェブカメラを取り付けたコントローラーを傾けると、その傾きに応じてWHILLが前後進するように制御されている。搭乗者はウェブカメラの映像のみが見えるヘッドマウントディスプレイを装着する。
ウェブカメラが地面に近づくのにあわせてWHILLが加速することで、擬似的にジェットコースターに乗っているような体験ができる。体験した人はみな悲鳴を上げたり、体を硬直させたりして一瞬のスリリングな体験を楽しんでいた。なお、ネーミングはチームリーダー白井さんの名前+スライダーから。
◇「みんぱく WHILLでゆくみんなの博物館」
自動で動くWHILLに乗って、博物館の展示物を巡るツアーを想定したプロジェクト。順路に沿ってWHILLが自動で動き、展示物の前に来ると、連携させたスマートフォンアプリに展示物の説明が表示される。展示の鑑賞が終わるとまた次の展示物まで移動してくれる。
「他の博物館で、一人乗りのモビリティで展示物をめぐるという企画があって、それを実際に試してみると、自分の足で見て回るのとはまた違う面白さがあった。ただ、一人の乗りの乗り物の中には、乗りこなすのが難しかったり、車椅子利用の方は使いにくいようなものもある。WHILLなら誰もが乗れて、博物館や美術館の新しい楽しみ方が発見できると思った」と参加メンバーは説明した。
◇「東京盆踊り2018」
「東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年に、東京で開催される盆踊りにWHILLが居たらおもしろい」というアイデアが元となったプロジェクト。外国からの観光客など、盆踊りを知らない人や、車椅子利用者など、誰でもWHILLに乗って盆踊りに加われる。まずジョイスティックを手動で動かし、盆踊りの動きをさせて値のログをとり、スピードなどを調整するかたちで盆踊りの動きを実現した。
「WHILLを、障害を持った方の乗り物としてとらえるのではなく、誰もが乗って盆踊りを楽しめる一つの乗り物として楽しんでもらえればと思った。いかに盆踊りらしい動きにするか、書いたコードの検証を繰り返した」とチームメンバーは開発のこだわりを語った。
◇「Alexa×WHILL」
アマゾンのAI「Alexa」の開発者ツールを使ってWHILLを制御するもの。「こんにちは」「今日の調子は?」などの問いかけに対し、Alexaが機械音で反応するとともに、Alexaに接続されたWHILLがもじもじとした動きを見せる。
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