Open Handset Alliance(OHA)は、複数のキャリアと端末メーカーを結集するためにGoogleが早い段階で作った組織だが、結果的には検索の最大手であるGoogleがAndroid OSの全てを掌握することになった。もはや、OHAの名前を耳にすることもなくなった。Androidはアップデートを続け、ユーザーインターフェースの改良で一般の消費者にとって使いやすくなってきた。
この10年間には、HTCの浮き沈みもあった。G1の発表とともに、Android端末の重要なベンダーとして登場し、初のWiMax対応スマートフォンや、初の4G LTE対応スマートフォンといった「業界初」を試みてAndroidの機能を積極的に推し進めてきた。標準のAndroidがまだ少しぎこちなかった頃に、Androidの初期の機能を活用して「HTC Sense」ユーザーインターフェースを開発し、期待を集めたこともある。
「Androidの前身に初めて出会ったとき、われわれが目にしたのは、ユーザーが簡単にアプリケーションを見つけられることを重視した、消費者によるカスタマイズの自由度が高いプラットフォームだった。そこに、大きく投資した」。HTCのCEO兼会長を務めるCher Wang氏はこうコメントした。
だが、台湾の小企業だった同社は、サムスンや華為(ファーウェイ)といった携帯大手の競争力に対抗できなかった。引き続きスマートフォンは製造しているが、スマートフォン事業は過去の同社の残影にすぎず、今ではそのリソースの大半を仮想現実(VR)に向けている。HTCの人材の一部は、「Pixel」シリーズを開発するGoogleに10億ドルの買収契約で吸収された。
同じように、サムスンの「Tizen」、Mozillaの「Firefox OS」、あるいは「Ubuntu Touch」といった新しいモバイルOSに対する投資も、みな水泡に帰してしまった。
こうして端末メーカーの栄枯盛衰が続くなか、Androidは生き残っている。
「Androidは、これからもスマートフォン市場で優位に立ち続けるだろう。それは間違いない」。そう語るChou氏は、2015年にHTCを辞し、現在は極秘のスタートアッププロジェクトに取り組んでいるところだ。
しかし、これほど大きい成功を収めると、厳重な詮索と無縁ではいられなくなる。
2018年7月、欧州委員会はGoogleに対して過去最高の50億ドルという制裁金を突きつけた。Androidをめぐる業務上の行為、特に検索エンジンや「Google Play」ストアなどのサービスのプリインストールが理由だ。
テクノロジ業界の巨人となったGoogleは、Androidの開発をめぐってソフトウェア企業Oracleを相手に、長きにわたり法廷でも争いを続けている。Oracleは、AndroidがJava APIを使っているとして2010年にGoogleを訴えた。Oracleは、Sun Microsystemsを買収したときにJavaを獲得しているからだ。損害額としてGoogleが90億ドルを支払うかどうかが争点となっている。
そのGoogle自身も、スマートフォンだけで歩みを止めてはいない。Androidのバリエーションとして、ウェアラブル向けの「Wear OS」や自動車用の「Android Auto」を開発し、「Googleアシスタント」を搭載するスマートスピーカなど、他の分野にも乗り出している。さらに、現在ほとんどは企業向けとして使用されているスマートグラスの「Google Glass」も提供している。
Googleの開発者向け年次カンファレンス「Google I/O」は、人工知能(AI)や拡張現実(AR)など、同社が注力している新しい分野を知ることができ、非常に人気が高い。
一方、スマートフォンに関する大きなイノベーションは過去何年か停滞している。
「スマートフォンについて語ることが少なくなってきているのは、少し寂しい。あの頃は毎年、新しい何かが出てきた。いくらでも語れる話題が常にあったのだ」(Chou氏)
少なくとも、記憶に残る奇抜なスマートフォン発表イベントがあったことは確かだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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