Microsoftが発表した小型の「Surface Go」は、2in1大型モデルの「Surface Pro」を、バッグに放り込んでどこにでも持っていける気軽なコンピュータに作り変えたものだ。だが、サイズと価格、処理性能の違いを見て、購入を検討中の客層はいくつも疑問を抱えていることだろう。特に気になる疑問への答えは次のとおりだ。
Surface Goはプロセッサこそ「Intel Pentium」クラスながら、日常的なPC作業の多くを、そのまま実行できる。だが、毎日、一日中主力で使えるコンピュータという条件は満たしそうにない。処理能力に限界があり、サイズも小さいからだ。大型のSurface Proよりずっと安価で、「iPad」の価格に近い(米国の場合)。しかし、キーボードカバーなどのアクセサリは必需品だが別売のため(しかも、価格は高め)、結局はそれほど節約にはならない。
Surface Goの米国価格は399ドルからと手頃だ(日本では「Office Home & Business 2016」を搭載し、税抜6万4800円から)。だが、別売のキーボードカバーは99~129ドル、「Surfaceペン」は99ドルかかるし、主流のノートPC並みにするためにRAMとストレージを2倍(RAMを4Gバイトから8Gバイト、ストレージを64Gバイトから128Gバイト)にしたければ、さらに150ドルの上乗せとなって、予定よりはるかに高い買い物になってしまう。
とはいえ、期待していたほどのお買い得なSurfaceではないとしても、これほど小型の2in1ハイブリッドWindowsマシンを好きにならずにはいられないだろう。10インチ1800×1200ピクセルのディスプレイにしても、着脱式のキーボードにしても、この小ささは驚くほど便利だ。キーボードは、キーひとつひとつを小型化しながらも、総合的にはタイピングのしやすさを大きく損ねてはいない。
キーボードカバーに内蔵されたタッチパッドが、これだけ小さいデバイスにしては大きいのもうれしい。タッチパッドとカーソルというおなじみのインターフェースは、タッチスクリーンとともに、あるいはタッチスクリーンの代わりとして、シームレスに動作する。この柔軟性こそ、iPadをはじめとするWindows以外のタブレットにはない、決定的な要素だろう。
Surface Goの最大の疑問は、「Windows 10」マシンとしてのパフォーマンスはどうか、ということだった。CPUが、通常のIntel「Core i」シリーズから、ローエンドのPentiumに変わるからだ。Pentiumといえば、今では手頃な価格帯のノートPCでしかお目にかからないプロセッサだ(例えば、ブラックフライデー向けの目玉商品にはよく採用されている)。
処理能力の点では明らかにグレードダウンだが、絶望的というわけではない。今のユーザーがPCでやること、例えばウェブサイトを閲覧する、メディアを再生する、オンラインのツールやサービスを使う、くらいであれば、操作性に大差はない。少なくとも、アプリケーションを一度にたくさん起動したり、ブラウザのタブを20個以上も開きっぱなしにしたりしなければ。
これも、出荷時のOSが「Sモード」のWindows 10である理由のひとつだろう。SモードのWindows 10は、使えるアプリが公式の「Microsoft Store」で提供されるものに制限されているバージョンで、その目的はひとえにセキュリティの向上だということになっている。OSとしては、いささか不可解な存在だが、幸い、フル機能を備えた通常のWindows 10にアップグレードするのは簡単で、手間も追加の費用もかからない。ボタンを数回クリックするだけで、「Chrome」ブラウザでも、Windows版のAmazon「Kindle」アプリでも、Pentiumプロセッサ上で動く限りは何でもインストールできるようになる。
小型で低価格のSurfaceシリーズというアイデアに聞き覚えがあるとしても、不思議ではない。以前にも試みられたことがあるからだ。最も近いのは、名前にProなどが付かないモデルの「Surface 3」だろう。10インチディスプレイとIntelの「Atom」プロセッサを採用して、2015年に発売された。その当時、筆者はSurface 3を「普及価格帯のモデルに落とし込んだ」機種と表現し、常時使うコンピュータとしては力不足と結論している。
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