ジャパンディスプレイ(JDI)が、BtoCも視野に入れた新たな事業に踏み出した。8月1日に開かれた事業戦略発表会で、ディスプレイを軸に据えた商品のプロトタイプを発表。「納得のいっていない状況」(ジャパンディスプレイ 常務執行役員 CMOの伊藤嘉明氏)と話す現状を、新たなビジネスで切り開く考えだ。
伊藤氏は「設立から6年。年数だけ聞くとベンチャー企業だが、JDIはソニー、日立、パナソニック、東芝、日立、エプソン、三洋電機といった日本が世界に誇るグローバルカンパニーの結集体。システム技術、半導体製造技術、光学技術といったたくさんの技術を各社から引き継いでいる。しかし、本来の力を出し切れていない状態。納得の行く利益を出す企業体質になっていない」と伊藤氏はJDIの今を分析する。
2017年6月には、CEOに東入來信博氏が就任。構造改革と財務体質の改革、カンパニー制の導入など、経営改革を進めてきたという。2017年10月にCMOに就任した伊藤氏は、JDIの全拠点を周り社員と対話しながら、JDIの新たな形を模索してきた。
今回開発したのは、「HUD搭載スマートヘルメット」、鏡の一部が瞬時にディスプレイに変化する「おくれ鏡」、IoTフルハイトドア「FULL HEIGHT MILAOS(フルハイトミラオス)」、3D専用メガネを用いず立体感のある次世代3D動画を視聴可能な5.5型ディスプレイの「ライトフィールドディスプレイ」4つ。「JDI Future Trip Project」と名付け、中小型液晶ディスプレイ世界シェアNo.1のJDIが持つ技術力を駆使した新たなコトづくりとして推進する。
伊藤氏は「これからは見るだけのディスプレイではなく、五感に訴えるものを作る必要がある。これによりディスプレイはインターフェースに変わる」と、JDI Future Trip Projectを表現。従来までのパネルメーカーとしての立ち位置だけでなく、BtoCビジネス、さらには定額課金制ビジネスなども視野に入れる。
車載用ヘッドアップディスプレイを応用し開発したHUD搭載スマートヘルメットは、視界の中に、速度メーターやGPS情報、着信・メールなどの情報を投影することが可能。モータースポーツを始め、サバイバルゲーム、また建設現場、警備など、さまざまな用途が考えられるという。
JDIでは、高透過の透明カラーディスプレイをヘルメットに装着した走行実験を7月に実施。「DANDELION RACING」と連携し、透明ディスプレイを、ヘルメットのシールドに重ねて装着。走行中に確認が必要となる温度、燃費などの車両情報を透明ディスプレイに表示し、レースでの実装を想定したテスト走行を富士スピードウェイで行ったという。
おくれ鏡は、鏡の一部に映像情報を鮮明に表示できるミラー。鏡がディスプレイに切り替わる技術は、JDIのコア技術を適応した液晶スイッチをディスプレイに備えることで実現しており、明るく、コントラスト比の高い映像を、瞬時に表示できることが特徴だ。カメラで撮影した映像を数秒遅れで再生する機能も備え、後姿のスタイリングチェックもできる。
FULL HEIGHT MILAOSは室内ドアの専門メーカーである神谷コーポレーション湘南とのコラボレーションモデル。音声操作で鏡の一部がディスプレイとなり、天気やスケジュール情報が表示されるほか、内蔵カメラで撮影された画像が数秒遅れで鏡に映し出される「遅れ鏡」機能を搭載。IoT家電との連携やAIの搭載といったこれまでのドアにはない機能を追加し、2019年度の一般販売を目指す。
ライトフィールドディスプレイは、NHK メディアテクノロジーとともに17型8Kの高精細液晶ディスプレイとして共同研究開発を進めてきたものの5.5型タイプ。さまざまな方向に向かう光をとらえることで、立体的に感じ、認識する仕組みを採用する。各種IoT機器への搭載を想定しているという。
「私たちは3カ月ちょっとで、これらのコンセプトモデルを用意した。これらを手がけていくのが新生JDI。イノベーションを推進するとき必ず周りからは『そんなことできるわけがない』『どうやってやるんだ』『前例がない』などと言われる。しかしできるできないではなく、やるかやらないか。私たちはやるを選んだ」と伊藤氏は、JDIの方向性を示した。
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