川邊社長「もうひとつヤフーを作る意気込み」--「PayPay」でQR決済トップを目指す

 ヤフーは7月27日、2018年度第1四半期の決算を発表した。売上収益は2318億円(前年同四半期比9.0%増)、営業利益は475億円(同8.9%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益が326億円(同9.0%減)となった。

川邊健太郎
ヤフー代表取締役社長の川邊健太郎氏

 メディア事業では、売上収益が721億円(前年同四半期比6.0%増)、営業利益は367億円(同2.5%増)。特に、広告関連の売上収益が好調(同8.4%増加)で、検索連動型広告が13.8%増と5年ぶりに二桁成長したという。要因として、広告の表示デザインの変更、商品やサービス特性に合う小見出しなどのカテゴリ補足オプションが寄与したという。スマートフォン動画広告も増加(同3倍)。また、7月21日からはヤフージャパンアプリのトップにも動画広告の配信を開始した。

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決算ハイライト
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ヤフーでは、将来への投資として300億円を投資していくと発表している。今回はメディア事業で5億円、ECで6億円を投資している

 ヤフー代表取締役社長の川邊健太郎氏は、これまでの主要KPIだったデイリーユニークブラウザ数に代わり、川邊氏が掲げる「データドリブンカンパニー」を反映するメディア事業の新たなKPIとして、月間ログインID数を設定。2018年6月時点で4433万IDと前年同月比12%増を達成したという。また、ユーザーの滞在時間の最大化するため、動画コンテンツに注力。Yahoo!ニュースでもテキストに加えて動画でのニュース配信をスタートしており、6月18日の大阪府北部地震発生時のニュースのライブ配信では、通常時の3倍を超える視聴回数を達成した。

 コマース事業では、売上収益が1584億円(同12.5%増)、営業利益が154億円(同41.1%減)。ショッピング広告による売上収益は増加したものの、ポイントなど販管費などの増加が響いた。特に、アスクル関連では売上収益961億円(同15.7%増)、営業利益マイナス12億円(同129.7%減)となっており、物流センタ火災による保険金受取額の剥落、アスクルの一時的な戦略費用の投下などが影響している。

 一方、コマース事業の取扱高では、物販全体で4699億円(同10.3%増)。「ヤフオク!」が2176億円と微増したほか、「Yahoo!ショッピング」「LOHACO」などのショッピング事業は1752億円と前年同四半期比で25.3%増加した。

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セグメント別の業績

「PayPay」でモバイルペイメント取扱高No.1を目指す

 ヤフーでは、ソフトバンクとのジョイントベンチャー(出資比率は半々)として「PayPay」を設立。ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資するインドの決済サービスPaytm Inc.の技術提供を受け、国内でモバイルペイメントサービスを提供する。川邊氏は「モバイルペイメントで取扱高No.1を目指す。もうひとつヤフーを作る意気込みで挑む」とし、「(決済分野で)ユーザーエクスペリエンスが突出した会社は世界でも数社しかない。そのうちのひとつであるPaytmの技術とUXノウハウがNo.1を目指すベースになる」と述べた。

 また、No.1を達成するためのその他の要因として、ソフトバンクが持つ営業網の強さに加え、決済手数料を3年間無料とし、店舗側の導入を推し進めること、すでに4000万以上の口座数を誇る「Yahoo!ウォレット」とソフトバンク両方のユーザー基盤を活用できること、さらにユーザーニーズに合わせた形で提供すべく、ヤフーやソフトバンクが提供する100以上のサービスのペイメント手段として使い道(例えばヤフオク!ドーム内での決済手段としてなど)を増やすことを挙げた。

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「PayPay」の立て付け

 Paytmは、利用者3億人、加盟店数800万店を誇るスマートフォン決済のリーディング企業で、ニューデリー、トロントのほか東京にも開発拠点を設置する。また、ソフトバンク・ビジョン・ファンド以外にも、アリババ・グループ、アント・フィナンシャルからの出資を受けているという。まず、加盟店獲得、利用者の拡大といった取扱高の最大化を進め、広告、EC、クレジットカードなど既存事業を活性化。また、O2Oのほか、決済での資金の流れををベースとした金融サービスなど新規事業の立ち上げを通じて収益化を図るとしている。

 ヤフーではモバイルウォレット「Yahoo!ウォレット」を展開しており、請求書のコード支払いやオフライン決済など取り組みを進めていた。今回のPayPay設立を受け、オンラインのウォレットサービスはYahoo!ウォレットを継続し、オフライン決済ではPayPayに切り替える。先述のコード支払いも順次PayPayに移行する。川邊氏は「当初はYahoo!ウォレットを発展させる形でモバイルペイメントを開発していたが、この業界はノウハウが一番大事。特に、スマートフォン時代になってからはユーザーと協力しながらUXを改善することが重要となる。すでに決定的な力の差がついてしまっており、先行するPaytmのノウハウを生かしたかった」と述べた。

 なお、PayPayというネーミングについては、SNSなどを中心に大手決済サービスPayPalとの類似性を指摘する声も多くある。同社広報部に、ネーミングの類似性などについて社内で議論はなかったのかという質問に対し、「議論があったかはお答えできない」としつつ、「分かりやすいサービス名を端的に表すため、PayPayに決定した」としている。

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No.1を目指すための取り組み

ソフトバンク・ビジョン・ファンド出資企業の国内導入を強化

 ヤフーでは、Rettyと戦略的パートナーシップを結び、お店の検索から予約・決済までのユーザー課題を解決を目指す。また、「クラシル」を運営するdelyの連結子会社化に関しては、「ヤフージャパンはデイリーユースにこだわる会社なので相性が良い」とし、レシピの検索から具材のEC購入までつながりを持ったサービスを構築したいとした。さらに、今回のPayPay設立と同様、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資する企業から、日本との相性が良さそうな企業をソフトバンクと連携しながら展開したいと述べた。

 そのほか、企業価値向上として自社株買いを実行している。これについて川邊氏は「ECやモバイルペイメントなどソフトバンクとの連携がうまくっている。ソフトバンクが株主になることでシナジーを強めたい」としたほか、「これまでのヤフーはソフトバンクとAltaba(旧米ヤフー)とのジョイントベンチャーにもとづいて運営されてきた。正直、経営の自由度を制約することもあり、それを一旦取り払いたかった」としている。

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ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先企業との連携を深める

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