前編に続き、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)が今後の市場に与える影響をみていく。
10兆ドル(約1100兆円)規模といわれる世界の建設業界は、この100年間、ほぼ同じテクノロジを使用してきた。だがそうした状況は、ARとVRのさまざまなアプリケーションによって変わりつつある。具体的には、プロジェクトマネージャーが作業の進捗状況を追跡できるようにするアプリケーションや、建設業者が建築物の土台を作る前に、工程を把握し時間とコストの浪費と思われる箇所を見つけられるようにするアプリケーションなどがある。
これらはまだ新興のテクノロジだが、この分野で注目すべき企業には、OpenSpaceやSkycatch、DAQRIなどがある。OpenSpaceは、同社が「AIによるタイムマシン」と呼ぶ「Googleストリートビュー」風の機能をプロジェクトマネージャーに提供し、プロジェクトのさまざまな段階での進捗を確認できるようにする。Skycatchは、ドローンを使ってプロジェクトの現場のVRシミュレーションを作成している。DAQRIが製造するスマートヘルメットは、ARアプリケーションを利用して、その現場で必要になる情報を建設作業者の視界にリアルタイムで表示する。
つい最近まで、未来学者たちはVRが教育の様相を一変させると予想していた。だが、教育分野でのVRの導入ペースは多くの人が期待していたよりもはるかに遅く、当分の間、その大きな期待は期待のままで終わりそうだ。
とはいえ、多くのK-12プログラムでは、OculusやHTCのヘッドセットのほか、低価格の「Google Cardboard」についても、さまざまな使い道を見つけている。例えば、バーチャルな遠足、太陽系のツアー、ジュラ紀の探検などを生徒に体験させている。
現在、その大きな期待は、教育分野でのARに傾いている。印刷物にスマートフォンをかざしてコンテンツを呼び出すことができる「RICOH Clickable Paper」技術を活用した教科書や、小学生でもオリジナルのARコンテンツを作ることができる「Metaverse」というプラットフォームが登場している。ARを利用すれば、遠足はいとも簡単にアイテム探しのゲームに変えられる。窮地から脱するために問題を解決させるデジタルな謎解き脱出ゲームもある。生徒たちは、これを快適な教室内で体験することが可能だ。
自閉症患者の学習支援から低下した視力の補助まで、医療の幅広い分野で、VRは効果的なツールとして利用されている。
VRは医療分野の効果的な教育ツールにもなりつつある。例えば、学生がVRで手術を見学したり、バーチャルの死体を解剖したりすることが可能になっている。
医療分野ではARの導入も始まろうとしている。この分野ではまさに、今手元にある情報を使ってその場で重要な判断を下すことが求められるからだ。並外れた器用さを求められる外科手術の技術を向上させるためロボットが導入されたように、医療業界では、課題の多い場面で医療提供者の意思決定能力を高めるため、ヘッドアップディスプレイ(HUD)やウェアラブルの新たな使い道を探っている。
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