この分野の大手企業には、MicrosoftやAccuVeinなどがある。Microsoftは、手術中の難しい処置を視覚化して医師を支援するARツールとして「HoloLens」を利用する方法を試しており、AccuVeinは、医師や看護師が患者の血管をより簡単に見つけられるように支援する機器を提供している。
VRを使った企業での訓練は、2022年までに60億ドル(約6600億円)以上の市場規模に達する可能性がある。航空機のパイロットは何世代も前からVRシミュレータを使った訓練を受けてきたが、現在では、石油やガス、重工業など、危険性の高い多くの分野の作業者が、現場ではなく、仮想世界で作業のシミュレーションを体験する機会を得ている。こうした分野では、けがや多額の損失を招くミスのリスクが他の業種に比べてはるかに高い。
ARも企業向け訓練、特に技術訓練の分野で大きな注目を集めている。Honeywellは先頃、MicrosoftのHoloLensを使って製造現場の作業者を訓練する複合現実シミュレーションツールを発表した。さまざまな業界において、例えば、出張修理サービスの基本を学んでいる職員が視覚的な補助としてARを利用する、といった用途は想像しやすいだろう。
現場の技術者を訓練し指導する手段としてARを導入している大手企業には、CaterpillarやBPがある。
顧客が、新しい環境にいる様子を思い浮かべられるようにすることが極めて重要である不動産業界は、AR/VRテクノロジの可能性に特に期待を抱いているようだ。
現在では、Matterportのような企業のおかげで、米国内の多くの地域の高級物件をバーチャルツアーで体験することが可能になっている。Sotheby'sはARを利用したホームステージングアプリを提供している。このアプリを使えば、興味のある物件の室内に自分の好きなバーチャル家具を置いてみることができる。
ドライバーの視界に情報を投射するヘッドアップディスプレイ(HUD)は、早くから市場に導入されたARの形態の1つだった。HUDは現在、BMWやVolvo、Chevrolet、Lexusなどのモデルに搭載されている。自動車のOBD-II端子に接続して、速度や燃費などの重要な情報を表示するHUDのアフターマーケットも好調だ。ドライバーはそれらの情報を道路から目を離さずに確認できる。
今後は、高級車だけでなく低価格車にもHUDが搭載されるようになるだろう。二輪車が好きな人にとって喜ばしいことに、このコンセプトはバイク用ヘルメットにも広まっている。
ヘッドセットはまだ大規模な普及には至っていない。つまり、今後数年間はスマートフォンが主要なAR用デバイスになるということだ。
これはスマートフォンメーカーにとっては朗報だろう。スマートフォンのライフサイクルは18カ月から3年近くまでに延びているからだ。ARの普及が進むにつれて、より高性能なスマートフォンを開発し、停滞期に達しつつある業界に新しい命を吹き込む、新たな激しい競争がサプライヤーの間で始まっている。
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