過剰に宣伝されている面も、大幅に過小評価されている面もあるが、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)など、デジタルな表現を生み出す新しい技術が登場している。
今もなお、目新しさが強調され、期待度や認知度がジェットコースターのように乱高下するハイプサイクルの段階を出てはいないものの、こうした技術はようやく、現実世界での有益性が見え始めたところだ。企業とエンドユーザーを対象とした新世代のハードウェアとソフトウェアアプリケーションも現れるようになってきた。
この先、AR/VR市場は2021年までに1080億ドル(約12兆円)に達するとも言われている。あらためて、その基本を知っておこう。
仮想現実(VR)とは、コンピュータで生成される多感覚の体験を指す広義の用語である。シミュレーションで作り出された周囲の世界を体験し、その世界と相互作用することができる。
Virtual Reality Societyによると、VR技術という主題のルーツは、19世紀の立体視装置までさかのぼるという。没入型(ただし、インタラクティブではない)の映画に関する研究が何十年か続き、1960年代になるとそれが、当時「人工環境」と呼ばれていたものの初期の実験へと引き継がれていく。これが、ユーザーが実際にその環境の中を進んでいくことができる、コンピュータによって作り出された世界の最初の形だった。
1990年代に入ると、VRはポップカルチャーで一躍注目を浴びる。「バーチャル・ウォーズ」(1992年)などの映画や、セガと任天堂から登場した初期のゲーミングヘッドセットがきっかけだった。
現在、市販されているVRヘッドセットには、触覚フィードバック、モーションセンサや位置センサ、現実世界のビジュアルを限りなく忠実に再現する高解像度の3Dグラフィカルディスプレイといった特長が盛り込まれている。Google、Microsoft、Facebookなどの大手企業が、VRに大がかりな投資を続けているところだ。
VRが、完全に仮想的な環境にユーザーを没入させようとするのに対して、拡張現実(AR)はデジタルに作り出した知覚を重ね合わせることで現実世界を強化しようとする。
世界初のヘッドマウント型ARディスプレイは、1968年にハーバード大学で作られているが、ARが商用として初めて使われたのは2008年と新しい。BMWの雑誌広告で、その広告ページをコンピュータカメラの前にかざすと、スクリーンに画像が表示されるという仕組みだった。
それ以来ARは、QRコードを読み取ってARコンテンツを表示するなどの形で、マーケティングに多用されている。スマートフォンやパーソナルコンピュータで使われた初期のARは、消費者を対象に、商品の試着などを実現するものだった。しかし、ARが消費者の間で初めて爆発的に成功したのはゲームの世界であり、その最初が「Pokemon GO」だった。
まだ、導入され始めたばかりの段階ではあるものの、拡張現実は消費者向けや企業向けのさまざまな用途を通じて、日常生活に大きな影響を及ぼすだろうと考えられている。AR技術は、インターネットよりも普及し、重要になるだろうという予測すらある。
複合現実(MR)はARの一種で、物体が現実世界と相互作用しているかのように、グラフィカルに映し出す技術である。よく引き合いに出されるのは、3D映像のクジラが体育館の床から飛び出すというMagic Leapの映像だ。視聴者がARヘッドセットを装着することで実現される。
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