Googleは「邪悪になるな("Don't be Evil")」というモットーを2018年に入って廃止していた--このフレーズは、2004年の新規株式公開(IPO)前に、同社が米証券取引委員会(SEC)に提出した申請書類のなかでも極めて重要な位置付けのものだった。というのも、「Don't be Evil」は同社創業者らが株主に書いた書簡に記されており、この書簡は数百ページにおよぶSECへの申請書類のなかで最初に目にするものだったからである。
書簡は将来同社に入社する潜在的な従業員に向けて書かれた側面もあり、Googleの創業者であるLarry Page氏とSergey Brin氏にとって、正しいことをする勢力というGoogleのイメージを打ち出すことは重要だった。
創業者2人には、株主は問題にならないことがわかっていた--2人は、ソフトウェア・エンジニアらが、IPOを取り巻く、人々のむき出しの欲望をまざまざと見せつけられて興ざめしてしまわないように、そして彼らがオンライン広告企業で働くことにわくわくするように、確実を期さなければならなかった。
Googleは「ダッチ・オークション」方式で上場し、ある程度の成功を収めた--ウォールストリートの金融機関は膨大な額の利益を手にした。そして、Googleはこの書簡の冒頭で、グローバルな社会的使命を記していた。同社はGoogle Foundationを設立すると約束したが、この財団は世界の最も差し迫った問題を解決することでGoogle本体をしのぐものになるとされていた。この書簡はうまく効果を上げた。
Googleはトップクラスのエンジニアとビジネス・リーダーを集めることに成功した。だが、同社はかつて多くの人々の心に訴えかけた創業時の原則から大きくかけ離れた存在になってしまったのだろうか?
Googleの経営陣は今後、従業員の代表たちと執行に関わる権限を共有することになるのか?
(経営側が譲歩でもしない限り)そんなことが実際に起こる可能性はほとんどない。Googleの創業者らは権力を独り占めしているからだ。
2004年のIPO申請書類のなかには、同社がIPOに際して定めた株式のデュアルクラス・ストラクチャーに関する説明がある。この仕組みでは、2人の創業者や他のインサイダーらが保有する株式に、一般株式の10倍の議決権が付与されている。つまり、少数の経営幹部が同社のあらゆる側面をコントロールしているのだ。
Googleは将来社内に不満分子が出てきた場合、彼らをコントロールし、排除して、彼らの主張が広まらないようにしようとするだろう。同社は広告事業の売り上げにほぼ全面的に依存しているが、そうした状態から抜け出すために事業の多角化を進めなくてはならない。こうした中で、政府機関との大型契約を獲得することの意味は大きい。
しかし、こうした取引を従業員の心に訴えるものに仕立てあげ、なおかつ顧客に対しては自社の従業員が自らの意に沿わないプロジェクトの進行を妨げることはないと保証することなど、どうすればできるのか?
シリコンバレーが今後テクノロジ関連の労働者によるさらなる抵抗を経験するのは間違いない。GoogleやSalesforce以外の企業でも似たようなことが起こるだろう。これはProject MavenでGoogle従業員が勝利を収めたことの影響だけでなく、より大きな潮流が存在するためでもある。
勤務先の経営陣に対し、社会的に重要な問題について立場を明確にすることを求める声が従業員の間で高まっていることが、2018年実施されたいくつかの研究で明らかになっている。
そしてCEOたちが立場を明確にしなければ、従業員たちがCEOに(賛成と反対のどちらかを)選ぶように迫ってくることもあり得ることを、GoogleやSalesforceの事例が示している。テクノロジ分野の労働者の力はシリコンバレーでティッピング・ポイントに達した。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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