プレミアムインタビュー

「生意気な社員」が会社を変える--アドウェイズ岡村社長の組織論


 アフィリエイト広告から始まり、今やネイティブアド、リワード広告、効果測定ツール、さらには東アジアを中心とした海外向け広告など、幅広い領域でインターネット広告事業を展開するアドウェイズ。同社の代表取締役社長である岡村陽久氏は、中卒や最年少上場社長(当時)といった異色の経歴や、破天荒な人柄がフォーカスされがちだが、事業や組織についてどのような哲学を持っているのだろうか――。

 インタビューを通して、「事業」「組織」「日常」の3つの視点から深堀りすることで、岡村氏の素顔に迫った(全3回)。第2回の「組織編」では、グループで1000名を超える社員に対して岡村氏が伝えているメッセージや評価の基準、また同氏が“母親的”と表現するユニークな社内制度などについて聞いた。

「すげー」が社内の共通言語

――いま岡村さんにお話を聞いている社長室の壁に大きく書かれている「人儲け」という文字が印象的です。

 これはアドウェイズの経営理念なんですが、実は社内ではそんなに話していないんです。どちらかというと経営会議などで使うことが多いですね、「それは人儲けじゃないな」という感じで。売上げも大事だけど、それよりも人が成長する機会を提供することの方が大事だよねという考え方です。一方で社内向けには「なにこれ すげー こんなのはじめて」というスローガンを強く打ち出しています。


――「人儲け」に負けないほど、記憶に残るスローガンですね。いつこのスローガンは生まれたのでしょう。

 2014年ごろですね。社員が20〜30人の少ない人数でやっていたころは、会社の価値観みたいなものって別に言葉に出さなくても何となく伝わったところもあるんですけれど、やはり社員も増えてきてアドウェイズが何を大切にしているのかをきちんと言葉にしないと伝わらないだろうということで、このスローガンを生み出しました。

 急にアドウェイズが「ここを目指すぞ」と言ったって、リアリティがないじゃないですか。なので、たまたま今まで言葉にしなかっただけで、これまでもアドウェイズが大切にしてきて、これからも大切にしていくようなメッセージを考えようということで、役員で合宿をしたり会議をしたりして、100時間くらいかけてキーワードを出し合って、「なにこれ すげー こんなのはじめて」に決まったという感じです。


 「なにこれすげー こんなPR初めて」「なにこれすげー こんなオフィス初めて」「なにこれすげー こんなプロダクト初めて」と言われるような、アドウェイズがずっと目指してきたことが伝わるスローガンにしました。

――岡村さんもご自身のTwitterでよく、「アドウェイズすげー」と言いながら自社の記事をシェアしたりしていますよね。

 そうなんですよ。実は僕以外も結構「すげー」って言葉を使うんですよ。社内での共通言語になっていて、「すげー」って言われたら勝ちみたいなところはありますよね。

炊き出しをする「愛社員課」、子どもが役員の子会社も

――社内制度についても教えてください。「愛社員課」という社内組織があると聞きました。

 これもスローガンを考えた2014年ごろに始めた制度です。社員が増えてきて、僕が「愛社精神が足りないな」と昭和の社長みたいなことを言い始めたら、うちの採用担当から「いや岡村さん、会社から愛されてもいない社員が、なんで会社を愛さないといけないんですか。まずは会社が社員を愛すべきですよ」と言われて、なるほどと思ったんです。


 経営理念である人儲けという言葉は、社員に成長の機会を与えたり、挑戦できるフィールドを作ったりして、立派な人材になってもらおうという、割と“父親的”な考え方なんですね。一方で、お腹が空いているならご飯を食べさせるとか、誕生日をお祝いするといった“母親的”な考え方が足りなくて、やはりこの両方がないとダメだなということで、愛社員課というものを作りました。

 最初にテーマを決めたのですが、社員の「健康」や「家族」を大事にするようなことをやっていこうと考えました。「健康」については、やはりご飯だろうということで、石原軍団のように炊き出しをしています。最初は月1回やっていたんですけれど、やっぱりみんなすごくお腹が減っていて、行列ができるんですよね(笑)。なので、開催ペースを月2回、週1回と増やしていって、いまではゲリラ開催で、だいたい週2回開催しています。

 メニューはカレーや豚汁、牛丼、五目ご飯など、配りやすくてすぐに食べられる、給食で出ると嬉しいものが多いですね。毎回たくさんの量を用意しますが、あっという間になくなります。

週2回のペースでゲリラ開催している炊き出し。岡村氏や愛社員課のメンバーで配っているという
週2回のペースでゲリラ開催している炊き出し。岡村氏や愛社員課のメンバーで配っているという
メニューはカレーや牛丼など食べやすいものが中心だという
メニューはカレーや牛丼など食べやすいものが中心だという

 「家族」については、社員の奥さんや旦那さんの誕生日に何か贈ろうと話し合って、やっぱり米だろうということで、自宅に米を送っています。また、結婚して子どもがいる社員も増えてきたので、育児と仕事を両立できるように、“パパママコンシェルジュ”というものを作りました。

 やはり家族によって全然事情が違います。「うちの会社は子育てしやすいようにこれを始めます」と一律で言っても、人によってはプラスだけど、人によってはプラスじゃないことってたくさんありますよね。なのでアドウェイズでは、時短や託児所手当など7個くらいサポートを用意して、社員ごとに最適なものをパパママコンシェルジュが提案しています。

――愛社員課という名前通り、社員や家族にとって嬉しいサポートが充実していますね。社長や役員が子どもの「アドウェイズベイビー」という子会社もあるそうですね。

 これも社員の家族を大切にしたいという思いから生まれた会社です。社員に何か困っていることがないかとヒアリングすると、やはり旦那さんと奥さんの言うことが全然違うんですよ。社員である旦那さんは何も困っていないと大体言うんですが、実際に奥さんに聞いてみたらめちゃくちゃ困っていたりする。その逆も然りです。

社長や役員が子どもの「アドウェイズベイビー」
社長や役員が子どもの「アドウェイズベイビー」

 アドウェイズとしては、会社の力で少しでも社員の家族の皆さんにも貢献できたらと思っていて、社員側だけの話を聞いても正しいことができないなと思いました。そこで、家族をもう少し巻き込んで企画を立てたり、新しい制度を導入したりできるように、アドウェイズベイビーという会社を設立しました。

 社員の家族の意見を聞きたいけれど、そのためだけにただ来てもらうのはあまり面白くありません。なので、社員の子どもたちにアドウェイズベイビーの役員になってもらうことで来てもらう理由を作って、子ども役員会みたいなものをやりつつ、その横で家族の方から困っていることなどを聞き出して、それを次の制度に役立てています。

アドウェイズベイビーの“子ども役員会”
アドウェイズベイビーの“子ども役員会”

 実際にお話ししてみると、すごく貴重なご意見をいただきますね。たとえば、将来自分の子どもをプログラマーにしたいので小さなうちから技術を勉強させたいと思っている親も多いので、アドウェイズのエンジニアが子どもたち向けにプログラミング教室を開いてみてはどうか、といったご提案をいただいたりしています。そういう、子どもの成長のきっかけを提供できるような取り組みはどんどん実施したいですね。

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