プレミアムインタビュー

守りに入らない、挑み続ける会社に--LINE出澤剛×舛田淳の“組織論”

LINE

 2011年の東日本大震災をきっかけに生まれたメッセージアプリ「LINE」は、長年にわたり電話とメールが主流だった日本のコミュニケーションスタイルを、わずか数年でガラリと変えた。そして2017年、LINEはAIと音声によって再び人々のコミュニケーションに革命を起こそうとしている。

 同社を率いる代表取締役社長の出澤剛氏、そしてLINEの生みの親でもある取締役 CSMOの舛田淳氏に、コミュニケーションを軸に多角化を続ける「事業」、各サービスの成長にともない急拡大する「組織」について聞いた。また、これまで語られることの少なかった出澤氏の「日常」についても深掘りすることで、LINEのキーマンたちの素顔に迫った。(全3回)。

 第2回のテーマは「組織」。LINE単体の従業員数は、2013年4月の500名から4年間で1438名に急増しているという。それにともない、これまで渋谷ヒカリエを中心に数カ所に点在していたオフィスを、4月にJR新宿ミライナタワーに集約した。また、2017年に入りすべての社員が守るべき6つの行動規範「LINE STYLE」を打ち出している。

“トロイカ体制”でゼロイチに挑戦

――ライブドアの再建や、 3社の経営統合、森川さん(前社長の森川亮氏)とのツートップ体制など、出澤さんは経営者として豊富な経験をお持ちですが、現在の組織作りにどのように生かされていますか。

出澤氏 : 組織には正解がなくて、規模感や置かれている状況によって、やるべきことや正しいことが変わるということを、いろいろな局面で学ぶことができました。たとえば、ライブドアの堀江さん(がトップ)の時代は、他にも強い会社がたくさんいる中で、高い目標をもって拡大していく一方で、成長の歪みみたいなものを中間管理職として感じていました。また、ライブドアの再建の時はやり方をKPI中心にガラッと変えて、社員への情報共有を含めて、みんなで納得感を持ちながら1つのゴールを目指しました。

 そこから(ライブドアの)赤字や危機的な状況を脱して、ゼロイチ(「0」から「1」)で何かを生み出そうとすると、そういうやり方では生まれなくて。その時は、当時ネイバージャパンだった舛田や慎(同社取締役の慎ジュンホ氏)のやり方がすごく刺激的でした。売上げよりもユーザー満足度を上げるためには何ができるのかを徹底的に追求する姿勢にはインスパイアされましたね。森川さんの自由度の高い経営を、ご一緒しながら経験できたことも良かったですね。

 いまのLINEの状況でいうと、やはり非常に高い目標をもって拡大する中で、ひとつの組織としての強さをいま一度確認しないといけないと思っています。スピードをコントロールしながら、組織づくりをしている状況ですね。

「組織としての強さを再確認しないといけない」と出澤氏
「組織としての強さを再確認しないといけない」と出澤氏

――出澤さんにとって、最も辛かった時期はいつですか。

 間違いなく言えるのは、新卒で入った生命保険会社です(笑)。やはり実力の世界で、保険を売って数字をあげれば評価されるし、逆に数字がとれなければ厳しい。そのような状況の中で、新卒でポッと入って、自分より年上のセールスマンやセールスレディを50~60人マネジメントしないといけない経験はとても勉強になりましたし、営業力も鍛えられました。

 逆にライブドアの再建の時はそこまで辛くなくて、いまもLINEで活躍しているメンバーなど人も揃っていましたし、サービスも伸びることが分かっていたので、そこをしっかりやればいけると。マイナスをゼロにするという目標は燃えますし、マネジメントもそれほど大変ではありませんでした。その後のLINEはまた違うスケールの成長だったので、そういう意味では大変でしたが、やはりインターネット業界を志すものとして、世界中の人に使われるサービスを実際に作ることができて、新たな挑戦ができることは非常に面白いですね。

――LINEは現在、出澤さん、舛田さん、慎さんの3名による“トロイカ体制”で経営しているそうですが、それぞれの役割を教えてください。

出澤氏 : 以前は3人体制でやっていたのですが、実は2016年末から役割分担を変えました。私が既存のLINE事業を見ていて、舛田と慎は(クラウドAIプラットフォームの)「Clova」など新しいチャレンジをしています。大変そうですけど、楽しそうですね(笑)。

3名による“トロイカ体制”
3名による“トロイカ体制”(LINEのウェブサイトより)

舛田氏 : そうですね。もともと私も慎も、ゼロイチが得意で新規事業を担当してきたんですが、これが難しくてですね。新規事業だったはずのものが、気づいたら既存事業になっているんですね。それを続けていくと、ほぼすべての事業に関わる状態になってしまうので、それぞれのプロジェクトにどう時間を割くのかというところで、濃淡が出てしまいます。ただ、やはり(会社として)アクセルを踏むべき時にはあっちもこっちもというわけにはいきません。

 そこで、成長の曲線に入っている既存事業は出澤に任せて、私と慎というLINEを生み出したコンビで、もう一度やろうと。それくらい今回のClovaの領域というのは可能性が高いと思っていますし、そこで競う相手は“グローバルモンスター”ですので、我々2人がそこにコミットすると全社に向けて宣言したのは、分かりやすいメッセージなのかなと思います。

――LINEのもう1人の生みの親である慎ジュンホ氏は、なぜ公に姿を現さないのでしょう。

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