旺文社は7月4日、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)となる旺文社ベンチャーズを5月に立ち上げ、6月にEdTech(教育×テクノロジ)に特化した10億円規模のファンドを組成したことを発表した。投資期間は5年間で、運用期間は10年間。主にアーリーからミドルステージを対象に、数千万円〜5000万円を出資する。同社によれば、国内出版社によるCVCは初だという。
1931年に創業した教育系の出版社である旺文社は近年、電子辞書など多様なデバイス向けに学習コンテンツを提供したり、参考書をアプリ化するなどしてEdTech事業を推進してきたという。その一方で、EdTech領域でさらなるイノベーションを起こすためには、自社だけでなくスタートアップ企業などとも連携してシナジーを図る必要があると考え、CVCを設立したと旺文社ベンチャーズ代表取締役社長の本多輝行氏は話す。なお、本多氏は過去に旺文社内で、教育に特化したデータ分析などをする教育デジタルソリューションズという企業を立ち上げた経験を持つ。
出版業界や教育業界に起きている変化も、CVC立ち上げの要因の1つだと旺文社ベンチャーズ取締役の粂川秀樹氏は話す。「ご存知の通り出版市場は右肩下がりなため、今後は外部にも仲間を作ってイノベーションを起こしていきたい。また教育業界、特に大学入試については、従来のように知識と技能だけでなく、今後は思考力、判断力、主体性などが問われてくる。そういったところは紙だけでは判断が難しく、ICT化する必要があると考えている」(粂川氏)。
旺文社ベンチャーズでは、主に認知科学、教育用ロボット、AI、VR、ARなどの技術を活用したEdTechや、教育分野におけるAdTechを対象に出資する予定。また、学校現場における学び方や教員の働き方を変えるようなサービスにも出資していきたいという。必ずしも、短期的に事業シナジーが見込めない場合でも、将来性がある企業には積極的に出資するという。
また、単に資金を提供するだけでなく、旺文社や関連・提携企業が長年培ってきた教育分野におけるノウハウ、参考書など豊富な学習コンテンツ、さらには旺文社がもつ学校(小中高大)や塾、書店などとのネットワークなども、出資先のスタートアップに提供したいとしている。「われわれの強みは、資金や経営のアドバイスだけでなく、旺文社のアセットも使えること。今後は他のVCや投資家とも連携していきたい」(旺文社ベンチャーズのプリンシパルである宮内淳氏)。
海外展開も考えており、中国やインド、シンガポールなどのアジア圏、北米などの世界市場に投資領域を広げていくという。具体的には、世界最大級のEdTechスタートアップコンペティション「The Global Edtech Startup Awards(GESA)」の2018年度日本予選を主催しているEduLabと連携するなどして、有望なEdTechスタートアップ企業の発掘に注力するとしている。
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