AI教材を開発するatama plusは3月26日、DCMベンチャーズから1月に約5億円の資金を調達したことを発表した。今後は開発体制を強化するべく、積極的にエンジニアを採用していくという。
同社が提供する「atama+」は、生徒一人ひとりの学習状況をAIによって分析し、個々の専用レッスンを提供するサービス。同社が用意したタブレット教材を解く生徒の理解度やミスの傾向、学習履歴、集中度などをリアルタイムで診断し、最適なルートのカリキュラムを自動で作成する。
一般的に、生徒が学習においてつまずくと、先生はその箇所について説明し、例題を出し、何度も演習をして正答率を上げていく。一方で、atama+ではつまずいた原因をAIが特定して、必要な箇所を必要な量だけ学習させるという。たとえば、生徒が数学の問題でつまずいた場合に、問題を解くために必要な「平方根」は100%理解しているけれど、「三平方の定理」は60%しか理解していなければ、三平方の定理を集中的に学ばせるといった具合だ。
気になる学習効果だが、atama+で数IAを学習した神奈川県在住の高校2年生の生徒は、19時間45分の学習でセンター試験模試の点数が43点から83点に向上。また、兵庫県在住の高校1年生の生徒は、23時間50分の学習で37点から78点と2倍近く成績が上がったという。さらに2018年センター試験本番も、冬期講習を約2週間受けた生徒の得点の伸び率が平均で5割に達したそうだ。通常よりも短い学習時間で、より高い効果が得られると同社では説明する。
atama plusのCEOである稲田大輔氏は、東京大学大学院の情報理工学系研究科を修了後、三井物産に入社してベネッセとともにブラジルに合弁会社を設立した。その際に、日本の学校のように黒板に向かってただ暗記するのではなく、グループに分かれてディスカッションをする生徒たちの姿をみて、日本の教育のあり方を変えたいと考え、同社を設立したのだという。
「海外の生徒は、基礎学力とともに社会で生きる力も学んでいるが、日本では基礎学力ばかりに力を割いてしまう。atama+によって学習を効率化し、基礎学力を学ぶ時間を減らすことができれば、社会で生きる力も学べるようになる」(稲田氏)。
しかし、先生の仕事をすべてAIに代替させるわけではないと稲田氏は話す。先生には、(1)教科を教える「ティーチング」と、(2)生徒を褒めたりアドバイスしたりする「コーチング」という大きく2つの役割があるが、同社ではティーチングをAIによって代替することで、先生がコーチングに集中できる環境を作ろうとしている。
そのため、コーチングのサポートアプリも用意しており、たとえば「マコト君がそろそろ正解するので褒める準備をしてください」「回答に2倍近く時間がかかっているので様子をみてください」といった通知が先生のスマートフォンに届くという。これにより、コーチングの経験が浅い先生でも十分に生徒をサポートできるようになるとしている。
atama+は、2017年7月末にローンチし、主に塾向けにサービスを提供している。これまでにZ会や学研、駿台予備学校などの一部に導入されているという。また、予備校のトップ講師などの協力を得て、高校数学と高校英文法、中学数学の教材を開発しており、現在は高校の物理・化学を準備しているとのこと。直近では、調達した資金によって開発体制を強化するため、エンジニアの採用に注力するとしている。
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