シャープは6月20日午前10時、大阪府堺市の同社本社の多目的ホールにおいて、第124期定時株主総会を開催した。出席した株主は372人となり、前年の798人から大幅に減少した。朝からの雨の影響や、2日前に発生した地震の影響もあったようだ。
また、13時からは、シャープ代表取締役会長兼社長の戴正呉氏などの同社幹部が、株主からの幅広い質問に答える経営説明会を開催。戴社長は「シャープは液晶の会社ではなく、ブランドの会社になる。これが私のビジョンである」としたほか、「次期社長は私が責任を持って選定する」などとした。
株主総会では、議長である戴社長の指名により、常務執行役員の橋本仁宏氏が進行を務めた。冒頭、6月18日午前に大阪北部を震源とした震度6弱の地震の影響について「シャープは、大阪で生まれて、育った企業として、被害を心配している。お見舞いを申し上げる。なかには、テレビが倒れた例もあるようだ。壊れたシャープ製品については、『COCOROサービス』といった名称で、半額程度でサービス対応することを検討している」と述べた。
午前10時20分過ぎから、株主の質問を受け付けた。
「シャープは液晶の会社という印象が強く、AIoTなどについて新たな人材獲得が必要ではないか」との指摘に対して、戴社長は「新たな人材を獲得したい。急いで募集しないといけないと考えている。ノートPC「dynabook」を展開する東芝クライアントソリューションを買収したのも、ITやAIoTへの取り組みの観点からである」とする一方、「シャープは液晶の会社だといわれるが、私はそうとは思わない。2011年頃に町田さん(シャープ元社長の町田勝彦氏)、片山さん(同元社長の片山幹雄氏)に、シャープは液晶の会社か、ブランドの会社かと聞いたが答えられなかった。2015年末に高橋さん(同前社長の高橋興三氏)に同じ質問をしても答えられなかった。私は明確に宣言できる。シャープは、ブランドの会社になる。液晶の会社ではない。これが私のビジョンである。8KエコシステムとAIoTが、ブランドを支えることになる。液晶とエレクトロデバイスは、ブランドを支える武器になる」と回答した。
「12月から8Kの実用放送が開始され、今後、グローバルでも8Kの時代に入ってくる。8Kをやっていくことには自信がある。AIoTも様々な分野で活用されることになる。シャープは、技術を拡大するとともに、グローバル展開を強化していく」と述べた。
また、アドバンスディスプレイシステムの売上高が、当初の計画を前倒しする形で、1兆円を突破したことに関する質問には、「液晶テレビが欧州や中国での販売拡大によって、年間550万台から1000万台に拡大した。また、ディスプレイは、車載やアミューズメントなどのテレビ以外の分野にも取り組んでおり、その成果が出ている」としたほか、「私の経営は、利益優先である。売上高があがっても、利益がでないと株主の期待に応えられない」などと述べた。
さらに株主からは「戴社長には、会長も兼務して、1日でも長くシャープに関わってほしい」という要望もあった。
戴社長は「2020年3月までは、私の責任でやる。次期経営陣の選定と育成も進める。次期社長の選定についても私は責任を取る」とし、「後継者には、一番いい人材を抜擢したいと考えて、探しているところだ」と述べた。
なお、第1号議案の取締役6名選任の件、第2号議案の監査等委員である取締役1名選任の件、第3号議案の取締役の報酬等の額および内容決定の件、第4号議案の監査等委員である取締役の報酬等の額および内容決定の件、第5号議案のストックオプションとして新株予約権を発行する件はすべて可決された。
なお、取締役の報酬額については、事業年度当たり3億円以内から、5億円以内に引き上げた。
株主からは、利益の優先優遇対応につながるのではないかとの指摘や、株主への配当の引き上げを優先すべきであるとの声もあがっていた。
戴社長は、黒字化するまで報酬を受け取らないとしていたが、2017年度の黒字化により、報酬委員会の決定や社外取締役の意見に従い、2018年4月からは、会社の規定に基づいた報酬を得ているという。
「私は報酬をもらわなくてもいいが、会社の経営を正常化しなくてはならないという指摘もあった。もし、2020年3月に私が社長を退き、次期社長が報酬がもらえないということになっては、次の100年の成長ができない。そうしたことを踏まえて、私は報酬を受け取ることにした。今後、報酬額をあげていかなくてはならない」と説明した。
株主総会での質問は5問で、11時1分に終了した。61分間の所要時間は、正式な記録が残っているなかでは、2002年の50分間に次ぐ短さとなった。
一方、13時からスタートした経営説明会には、戴会長兼社長のほか、同社幹部が出席。さらに、広島県福山市の電子デバイス事業本部、広島県広島市の通信事業本部とも結んで、回答できる体制を敷いた。
次期社長が日本人社長になったときに、鴻海(ホンハイ)精密工業とのシナジーが薄れるのではないかとの質問に対しては、「シャープが東証一部に復帰したときも、シャープの独立性をチェックした。独立性があるからこそ復帰できた。もちろん、鴻海が持つ世界一のEMSとしての購買力を活用できるが、シャープも購買力がある。2020年3月以降も、それは変わらない」などと発言。また、アップルの次期iPhoneに、ジャパンディスプレイの製品が採用されたとの報道をもとに、シャープの今後の業績への影響を懸念する質問が出たが、「特定の企業との取引については回答できない」としたものの、「シャープの業績は安定していないといえるのか。そのあたりを見てほしい」と、特定企業からの受注動向の影響を受けにくい体質に移行していることを示した。
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