――日本では働き方改革を推進しています。WeWorkのような新しいオフィス環境はどんな変化をもたらすと思いますか。
提携しているソフトバンクでは、働き方改革をリードしていきたいと言ってくれました。実際にソフトバンクの一部のチームもWeWork内のオフィスで働いてくれていますが、みなさん生活の質が向上した、満足したと言ってくれています。
私たちは、働く時間と寝ている時間が1日の多くを占めています。その意味からも働く場所の質の向上は、生活をより良くすることにつながっていくと思います。今後もこの働きかけを積極的にやっていきたいと考えています。
――日本には旧態依然としたオフィスが数多くあります。不動産物件としても特殊性の高い市場だと思いますが。日本のオフィス市場をどう見ていますか。
東京、福岡、大阪などの都市部は非常に逼迫していて空室率も非常に低いですね。加えて、WeWorkでは、ワンフロアでかなり広いスペースを必要としていますので、物件の取得は大変です。日本には高層で、細い建物が多く、私たちが求めているようなスペースを確保することは簡単ではないと感じています。
なぜワンフロアのスペースにこだわるのかというと、多層階にオフィスが渡ると、コミュニケーションが生まれにくくなるからです。エレベータ内で乗り合わせることはあっても、それだけでは何をしている人かわからない。それではWeWorkが考えるコミュニケーションが発生しにくいのです。
ただ、今後東京はかなり大きなビルが建設されてきますから、そういった場所を多くの働く人に提供することで、新しいビジネスが生み出せる環境づくりをしていきたいと思っています。快適なオフィス環境を提供することがWeWorkの使命ですし、短期間でも企業が成長できるような環境づくりをするのが私たちの責任だと考えています。
アントレプレナーやスタートアップの数が増えるのは非常に良いことです。さらにそうした人たちが大手企業と近い場所にいることで、オープンイノベーションやコラボレーションが生まれていく。それは日本経済にとって大変健全な成長につながります。
スタートアップやオープンイノベーションの成長が促進されれば、海外からの関心も高まりますし、新たな参入や投資機会にも恵まれます。
――新しいビルの建設が進む一方で、日本には狭くて細いビルがたくさんあります。これらのビルは建設から30~40年が経ち、これからどうするかは課題の1つです。建て替えて大きなビルを作ることも一つの答えですが、それはなかなか難しい。現状のまま何かWeWorkとコラボレーションできるような仕組みはないでしょうか。
その課題はよくわかります。WeWorkが入っているGinza Sixも、古いビルが建て替わりました。なかなか難しい問題ですが、仕事をするスペースだけが欲しいユーザーもいますから、そういう方に場所を提供したり、またそれらのビルのオーナー同士をつないで、資金調達できるファンドのような仕組みを考えてもいいかもしれません。WeWorkがそこにオペレーターとして入ることもできると思っています。
ユーザーの数がすごく伸びているなかで、ビルオーナーの方々とパートナーシップを結んでいく重要性も感じています。
――WeWorkでは、オフィスの中でコミュニケーションが取れるとともに、ネットワークを使った仕組みも整えられていますね。
ええ。ユーザー同士がオフィスという場でつながるのと同時に、ネットワーク上でつながれるようにアプリを提供しています。このアプリを使えば、現在25万人にいるWeWorkのユーザーとつながることが可能です。例えば、WeWorkのオフィスを使っている繊維メーカーはないか探すこともできますし、希望すればサンプルの送付もできます。
ローカルだけでなく、グローバルに各国のWeWorkメンバーともつながれるのも、私たちならではの仕組みだと思っています。
――今後の展開を教えて下さい。
8月に神宮前にオフィスを構えます。ここは、東京の起業家たちの中心になってほしいという思いから、少し特別な場所にしていきたいと思っています。地上階にはカフェスペースも用意しますし、イベントスペースも備えます。東京における起業家を結びつけるようなハブの役割を果たす場所として、完成を非常に楽しみにしています。
森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方拠点JリートのIPOに参画。再生エネ業界においては、太陽光パネルメーカーCFOや三菱商事合弁の太陽光発電運用会社の代表取締役社長CEOを歴任。政治学修士、経営学修士、コロンビア大学とニューヨーク大学にて客員研究員。
IT業界の経験に裏打ちされた視点と、経営の視点の両面から、ITやテクロノジーを軸とした事業戦略立案や新規ビジネス開発、アライアンス支援を得意とする。近年は特にX-Tech(不動産テック)やロボット、AIなど最新テクノロジー分野を中心に手掛ける。経営学修士(専門職)。
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